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第8分科会

国語教育の現状と課題を考える
〜子どもたちの「ことばの力」をのばす教育として豊かな実践を進めていくことをめざして〜

         浅尾 紘也(教科教育研究会・国語部会)



提起
@「国語教育、どうなる、どうする!」 得丸浩一(京都綴方の会)
A「今、私たちは何を論議しなければならないか」浅尾紘也(国語部会事務局)
B「京都の国語教育・三分野説」浅尾紘也(国語部会事務局)
C「国語教育の現状を乗り越える実践をどう進めていくか」西條昭男(京都綴方の会)
              【教科教育研究会・国語部会】【運営担当】田中一郎・浅尾紘也



国語教育を現状と課題を考える

子どもたちの「ことばの力」をのばす教育として豊かな実践を進めていくことをめざして

              浅尾紘也(教科教育研究会国語部会事務局)

1.はじめに

 私たちが国語教育の現状について危機感をもち、その克服のためにさまざまな課題が指摘されはじめてからもうすでにかなりの時間が経つ。

  しかしその状況は、教育基本法の改悪や、「教育再生」の名の下に問題の根本を教育政策にあるのではなく、教師と教育現場におしつけて責任逃れをしようとする動きで、変わらず、さらに全国一斉学力テストの強行実施、指導要領改訂の審議などで明らかになってきたように、問題がさらに大きなものとなってきたと思われる。

  このような状況の中で、国語教育を「子どもたちの『ことばの力』をのばす教育」として、今、何を論議していかなければならないのか、そして何に取り組んでいかなければならないのかを、みんなで明らかにしていくことを最大のテーマとして、11月25日の国語部会公開研(詳細については、通信23号の「報告」参照)に続いて、センター冬季研の国語分科会に取り組んだ。

2.提起と討議で、何が論議されたか

   午前中は、国語教育をめぐる問題をどうとらえるかという視点から、二つの提起があった。まず、「国語教育、どうなる、どうする!」と題する得丸提起は、「改訂指導要領」の審議の中で、指導要領・国語科は、どのように変えられようとしているのかを具体的に提起した。

 それは、04文化審議会答申で示された「情緒力」と「国語力」で、改訂指導要領国語科が、「能力」で言語技術を、「態度」で「言語文化」での国を愛する態度の涵養をめざすものであり、とりわけこれまでの三領域・一事項編成を、「言語文化」を加えた三領域・二事項としたことにも、それがかなりの重点をおいたものであることは明らかであり、この動きをしっかりと見、考えていくことの大切さを提起した。

  これは、これまでの過程の中で、「国語は文化の基盤であり、中核である」「各国の文化と伝統の中心は、それぞれの国語であり、その意味で国際化の時代に極めて重要なのが国語力である」などの文言で、まさに「『国語』が狙われている」状況は、ますます強まってきている。その経過から考えても、「本格的な導入」が予想される「改訂学習指導要領」は、注視しなければならない。 そして、その具体化として、音読・暗唱などの方法、PISA型読解力を意識した技能の強調、ローマ字の低学年からの指導、敬語の強調などが、「案」として具体的に出てきていると提起した。

  続いて、「今、私たちは、何を論議しなければならないのか」と題する浅尾提起は、これまでの論議もふまえて、@「学力」問題をどう考えるかを深めること、A「指導要領」をどうとらえ、どう考えるかを深めること、B「全国学力テスト」で具体的になった「PISA型読解力」についてどう考えるかを深めること、C現場に出てきているそれらの「先取り」状況について論議を深めること、 D国語指導の現状を乗り越えるための、私たちの考える国語教育の構造と内容について深めること、Eそれを、教師だけの問題としてではなく、広く父母や子どもたちにも提起し、論議を深めていくこと、などについて提起した。

 論議の中では、二つの提起で示されたことについて、現場での具体的な状況や、さまざまな場などで感じられる先取りの状況などが出された。そして、前日の記念講演でも佐貫氏が提起した、「生きる力」や「学力低下」、「学力」などについて、もっとしっかりと論議すること、そしてその本質を見抜いていくことの大切さ、そして、それらを背景として、公立の学校が学習塾などの教育産業とつながり、「補習」などという名目で参加者を募るということまで進んできている中で、私たちの考える「学力」を提示していくこと、今後出てくる「改訂指導要領」やそれに基づく「教科書」などの具体的な検討・分析を進めていかねばならないことなどがだされた。

 午後には、より実践的な提起として、「京都の国語教育・三分野説〜「ことばの力」をのばす実践で、子どもたちの人間的な成長をめざす国語教育を〜」と題する浅尾提起で、「京都の国語教育・三分野説」が、教研集会やサークル活動の積み上げと論議の中で、どのように提起され、どのような構造と内容を提起しているのか、言語教育(言語についての学習・説明文教育)・文学教育・作文教育の各分野について、提起された。

  また、「国語教育の現状をのりこえる実践をどう進めていくか」と題する西條提起では、教科書の実態、京都市の官制研究の動きや「指導計画書」の実態、校内研などの具体的な状況、そして文学教育の実践など、幅広く、内容豊かなものが提起された。

 論議の中では、教育現場で、「PISA型読解力」対応と称して、文学教育の指導過程の中に、その「情報取り出し」「解釈」「熟考・評価」という項目がそのまま取り入れられ、それで指導することまでが出てきていること、「全教科の中で『国語力』を」と称して、研究授業の中でそれを指導案の項目として明記することが指示されることなど、全く形式的な「対応」が具体的に進められてきていることも明らかにされた。それは、指導主事や特別訪問指導員などが、「絵・写真・グラフ・表」なども読ませる、「司会」をさせる、○○字以内で書くという学習をさせるなどなど、あの「全国一斉学力テスト」のB問題の「対応」のためとしか思えない「指導」などにつながっていく。

  そのなかで、
・文学、説明文教育では、「ことば」に即して、ていねいに文章を読む。
・作文教育では、作文の時間をとる。生活作文、詩を書く。日記を書く。 ことが大切であることが、さらに、
・研究で、集団で自由な論議をする。とりわけ、若い教師達には、自由活発な意見や提案を促す。
・教材(教科書)は、集団でていねいに論議をする。 など、西條提起で示されたことが確認されていった。

 しかし、現場の実践状況は、それが極めてできにくいものとなっている。また、とりわけ若い教師達のおかれている状況は、厳しい。そのなかで、展望を持つことのできるとりくみを進めていくことが、今、必要となっている。

 論議を進める中で、
・上からおしつけられてくるものを、現場の状況をとおして考え、それにど対していくのかを集団的に考えていくこと。
・国語教育がどうなるのかを、より具体的に示すこととなる「改訂学習指導要領・国語科」の内容について、具体的に分析・検討し、それについての批判をしていくこと。
・その指導要領にもとづいて出されてくる、新国語教科書の教材編成などについて、具体的に検討し、自主的な教材編成の視点もふくめて論議を進めていくこと。
・さらに、私たちの考える国語教育について、理論的にも深め、それをより広く提起していく力をつけていくこと。

 などが、今後の課題となることが確認されていった。


3.さらに豊かなセンター国語部会の活動を

   センター国語部会は、このような論議をふまえて、これからも、国語教育全体を巡る論議をどう進めていくか、何が課題となるかなどについて、提起・発信し、その論議の場をもっていくことを中心に、研究会の開催と通信発行などにとりくんでいきたいと考えている。

 そして、府下各地域でとりくまれている研究活動や教研集会での、国語教育実践の論議が深まるために協力・共同していくこと、それを集約し広めていくことなども活動として強めていきたい。  この分科会での論議をとおして共通認識され、それにもとづくとりくみを進めていくためには、より豊かで幅広いとりくみを国語部会として進めていくことが求められている。

2008年3月
京都教育センター
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