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第7分科会

高校生・若者から見て、いまの学校・社会は何色か?

         磯崎 三郎(高校問題研究会)



 京都教育センター高校問題研究会では、この数年間にセンター研究集会高校分科会や研究会独自の研究会に取り組み、高校生や卒業生・保護者・教員などの発言から、@京都府教委・市教委がすすめる「特色ある学校づくり」が高校間の学力格差を広げ、教育困難を深刻にしていること、A京都の公立・私立の高校生は、授業や生活指導、高校入試制度、日本の教育全体の問題などに強い関心を持ち、不満の多いことについて各校で生徒の要求をまとめて実現しようとしていること、が明らかになった。

 近年、高校・大学新卒の就職が困難な状態に置かれていることが話題になっている。それは、企業が収益を増やしているのに新卒を雇用するよりも派遣・契約社員やパートなど流動的雇用に重点を置いているからである。

 今年度本分科会では、現在の日本で若者の働く環境がどうなっているのか、高校生・大学生自身はどう考えているのか、学校生活や勉強・社会・政治についてどう考えているのか、などについて高校生・大学生から発言してもらい、高校生にどのような力をつけることが求められているのか、学校の果たす役割は何なのか、などについて参加者をふくめて討論を行った。これからの京都の高校での教育のあり方を考える契機になればと考える。


《発表・発言した人》

高校生等
・A さん(京都府立高校、2年生)
・B さん(京都私立高校、3年生)
・C さん(京都私立学校、1年生) 大学生
・D さん(京都市立高校卒業、現在大学4回生)
・E さん(他府県高校卒業、現在大学3回生)
・F さん(他府県高校卒業、現在大学3回生)  

教員
・原田 久 さん(須知高校) 「涙の卒業式から2年半、卒業生たちは 今 ― 就職した16名の生徒を追いかけて ― 」      
・竹脇 隆 さん(朱雀高校) 「朱雀高校の『学習・生活・進路に関する意識調査』の結果報告」
・磯崎 三郎 さん(城陽高校)「城南高校の『学習・生活・意識調査』の結果報告」

《司会》 佐野幸良(京都府立高教組役員)、島田茂生(南丹高校教員)


《進行担当》磯崎三郎(城陽高校)

参加者は25名(内訳は大学生3人、高校生3人、保護者(元を含む)4人、大学教員1人、高校教員7人、小学校教員1人、元教員5人、府立高教組役員1人)。


《開会あいさつ》(中村誠一:京都教育センター高校問題研究会代表)

・高校生・若者はいまの社会をどう見ているか、社会がどう見えているか。そこに私たちの教育活動・教育運動を進めていくヒントがあるのではないか。そのような意味で今回のテーマを設定したので、参加者の皆さんで深めていただきたい。

《進行担当より》(磯崎三郎:京都教育センター高校問題研究会事務局長・城南高校)

・この分科会では、この10年近く、高校生・大学生・保護者・教員に学校での授業・生活指導・高校制度などについて意見を出してもらい、話し合っている。
・分科会の討論の進め方について説明。

《討論の進め方と討論の柱》

@発表される**高校卒業生の就職後の状況や**・**高校生の学校・勉強についての意識について報告を受け、参加者から発言を求める。

A参加する高校生・大学生から今の高校・大学について感じていること、今の社会・就職・政治などについての意見を出してもらい、参加者から発言を求める。

B参加者がわからないこと(高校の学科・授業形式の違いなど)があれば質問してもらい、説明を求めるようにする。

C発表する高校生・大学生・教職員以外の参加者からも適宜質問・意見を求め、討論が全体に広がるようにする。

※資料 (略)

討論の柱

@いま若者が働く環境はどうなっているか?
 ・高校を卒業して就職した生徒の実情から ・高校生・大学生や参加者は働く環境についてどう考えているか?
 ・高校・大学新卒の全国的な就職状況はどうなっているか?
 ・大学生は就職活動をどう進めているか?

A今の高校生・大学生の学校生活・授業や社会への意識はどうなっているか?
 ・二つの高校からの意識調査結果をもとに ・大学生の意識調査の結果も参考に

B高校生・大学生は学校生活をどう考えているか?
 ・授業や行事、生活指導、クラブ活動など ・勉強する意味は何か、勉強することは役に立つと思うか?
 ・大学の学費はどうか、高校生・大学生はどう感じているか?
 ・高校・大学生活で困っていること、話題になっていることは何か?

C高校生・大学生はいまの社会や政治をどう考えているか?   
 ・それぞれが社会・政治について感じていること、就職について考えていることなどを交流       

D高校時代にもっとこういうことをしたい・したかった(して欲しかった)
 ・高校教育に期待することは何か  

E高校生にどのような力をつけることが求められるか
 ・学校としてできることは何か

 ・はじめに参加者全員の自己紹介(所属・名前)(略)


【第1部】 いま若者が働く環境は?若者の社会への意識は?

     卒業生たちは今 ― 就職した16名の生徒を追いかけて ―
       (須知高校:原田 久 さん)


     朱雀高校の「学習・進路・生活に関する意識調査」の結果報告
       (朱雀高校:竹脇 隆 さん)

     城南高校の「学習・生活・意識調査」  (2002年9月実施) の結果報告
       (城陽高校:磯崎 三郎 さん)

     滋賀県の3大学の「高校生活についてのアンケート」 (2007年) の結果報告
        (城陽高校:磯崎 三郎 さん)

(略:くわしくは年報20号に記載しています)


討論

大学生から見た高校生活は?

◎大学生Dさん(京都市立高校卒):高校時代、クラブは茶道部。クラスでのやりとりが思い出に残る。今でも月1回会っている。高校は自由で、生徒に考えさせる指導。自分たちで考えて動き、担任は見守る感じ。多くの人が大学で経験することをすでに高校時代からやっていた。

◎大学生Eさん(長野県の県立高校卒):高校で信頼できる教師はあまりいなかったが、高校生活は充実していた。部活動は自主性があった。

◎大学生Fさん(大分県の私立高校卒):選択するコースがたくさんあり、進学コースでも学力ランクで小分けされていた。自分は特進クラスだった。クラブ(吹奏楽)との両立がたいへんで途中でやめた。文化祭は、1年生は最初からクラスの出し物は決まっており、共同作品を製作した。2年は生徒が自由に考えられた。3年生は文化祭はなく模擬試験。行事にはあまり思い出がない。与えられたものをこなすという感じだった。

◎大学生Dさん:高校生の時は、学校に行けば勉強はするものと思っていたから、役に立つかどうかなど考えなかった。大学に行ってから、役に立つなあという実感がもてた。

◎大学生Eさん:高校の時は、数学の関数や世界史の年号など社会で役に立つとは思っていなかった。後になると役に立つと気づくのではないか。

◎大学生Fさん:高校の自分のクラスは毎日の小テストを受からないと帰してもらえなかった。勉強はやらねばならない、与えられたものはこなすという感じ。

◎倉原悠一さん(京都教育センター):京都で制服のない自由な高校は限られた学校。高校時代に大学生が味わうような自由を味わってきたことは、その後に何か生きているか。。 ◎大学生Dさん:高校時代は自由に過ごしていたが、ハメを外していたわけではなく、自分なりに線を決めていた。大学に入ってすんなり生活になじめた。

◎磯崎三郎さん(進行担当):今、高校の勉強が役立っていると思っているのはどのような点か?

◎大学生Dさん:何の教科というわけではなく、考えること、勉強のしかた・姿勢を大学で応用できている。

◎原田久さん(須知高校):先生へのアンケートで聞いてみると、どの先生もできるだけ生徒の身近なことに結びつける授業の工夫をしている。例えば、世界史を教えるのではなく、世界史で教える。世界史を通していろいろなことを考えようと言っている。しかし、言葉が通じなくなっている。わかる授業になるよう工夫しているが、言葉で伝えようとしても難しい。ビデオでも寝てしまう。物(教材)を持ち込む工夫もしている。「わかりやすい」とはどういうことか分析する必要がある。世界史のテストの平均が低いので、生徒のやる気を出させるため事前にテストで点数をとれるように手を打つと点数が上がるが、その手法を見抜いて勉強のやる気を起こさない生徒も出てくる。レベルを落とすことが「わかりやすい」ことなのか、など兼ね合いを考える必要がある。


【第2部】 高校生・大学生は、学校生活や今の社会・政治をどう考えているか?

授業・行事など学校生活は?(高校生に聞く)

◎高校生Aさん(府立高校2年生):最近は、授業についていくのに必死。基礎ができていないのでついていけないことが多い。友達といるのは楽しい。2学期の最初に行事が全て終了。残りは球技大会だけでそれを楽しみにしている。休み時間が一番好き。友達としゃべる。先生にどうやって話しかけたらいいか、わからない。

◎高校生Bさん(私立高校3年):75分授業が4時間。何で75分なのかと思った。授業が長いので寝ている人もいる。見た目はきれいだが運動場は狭い。住宅地の中に立っている。修学旅行は北海道。球技大会は、男女別ドッジボール、バスケット。文化祭、3年は模擬店。クラスで出し物。軽音楽部、有志。滋賀、園部、亀岡から通学している人もいる。

◎私立学校生Cさん:はじめは家から近い公立高校に入学した。中学時代も不登校。合格した時は普通の高校生活をしようと思っていたがやめてしまった。吹奏楽部に入ったが、朝練、昼練、放課後の練習がいっぱい。なぜこれだけやらなければならないのだろう。クラブだけが居場所。教室はこわかった。朝練にでて、1限目保健室、2限目病院の待合室、コンビニ、マンガ、昼練のような生活。学校で授業に出ずに部活だけ出ていることに引け目があった。部活も遅刻すると入りにくい。仲の良かった友達もクラブを辞めてしまった。クラブを辞めると先輩からいろいろ言われる。自分も辞めるとこれほど責められるのかと思うとすごくこわかった。カウンセリング室に閉じこもったりした。先生ともやり合った。長崎の原水禁大会に行って京都から離れられ落ちついた。今は高卒認定試験のために勉強している。

高校・大学への進路・将来の夢は?

◎大学生Dさん:高校を選んだ理由は、学校説明会の生徒の様子が生き生きしていたから。英語を専門的に学ぶというより道具として学ぶ。人の気持ち、心理学に興味があり、心理学ができる総合大学として立命館大の心理学科を選んだ。教職課程もとった。臨床心理士になりたいと思っていたが、人が知ること、学ぶこと、教養を身につけて人生豊かになることに関心をもち、伝統文化に関する出版社に内定となった。自分に影響を与えたものは、クラスの友達。自分の意見や夢を持っている友達に刺激を受けて切磋琢磨した。

◎大学生Eさん:小さい頃から親の顔色を見て大きくなった。姉はいつも怒られていて、自分は親のアドバイスに沿って高校・大学を選択した。教職課程をとったのは、自分が覚えたことを伝えたいから。あなたは何をしてきたか、どうしたいかと就職活動の場面で問われると厳しい。これまで自分で考えるということをしてこなかった。

◎大学生Fさん:高校に入る時に、公立不合格、私学受験。檻の中という感じの高校生活だった。大学のことはほとんど意識していなかったが、周りに影響されて立命館大学経営学部へ。与えられたものをこなす日々でアルバイトもせず部屋で一人でいたが、部活の中でもう少し楽しんだほうがいいと言われ、アルバイトを始めた。小学生の先生になりたいと思っていた。今は教職一本。

◎高校生Aさん:京都教育大学に行きたい。小さい頃から小学校の先生になりたいと思っていた。「どうすんの」と言う先生の指導をプレッシャーに感じている人もいる。先生にどう相談したらいいかわからない。

◎高校生Bさん:初めは進学希望だったが家庭事情で就職希望に。3年でこれから就職試験。探し始めるのが遅く、ガイダンスも行っていない。学校就職の求人で販売か製造にしたい。

◎私立学校生Cさん:来年8月高卒認定試験を受験し、その後大学へ行きたい。自由な時間がほしい。具体的な大学の学部は決まっていない。

学校の勉強について

◎高校生Aさん:数学については、負けず嫌いなので、他の人がわかるのに自分がわからないとがんばるが、みんなができていないとやる気が起こらない。英語は、留学生が来た時はがんばる。やる気になったらやれるが波がある。

◎高校生Bさん:勉強は好きではないが、保育系へ行きたい。理数系科目は嫌いでとっていない。英語も何で勉強するのかと思う。

◎私立学校生Cさん:勉強は好きで、知ることが楽しい。しかし、そのことと学校の授業は違っている。勉強は好きだが、学校の授業は退屈でつまらない。

どんな授業がよいか?先生に望むことは?

◎大学生Dさん:大学にはクラスがない。先生は面倒は見てくれるが、自分から先生に向かっていかないとダメ。6月に教育実習をした。自分が一生懸命やってもいろんな生徒がいる。英語より数学、それよりも部活という生徒がいる。先生には生徒が向き合うまで待ってくれるゆとりを持ってほしい。

◎大学生Eさん:大学では社会の知らなかった一面を知ることができるという勉強の楽しみがある。大学でも、何で働くのかということがわからない。社会が複雑になりすぎている。大学の就活でもう一度「働く」ということを意識した。大学までに「働く」ということについての学びが必要。もともと先生には話しに行かなかったが、問題ない生徒と思ったら先生は話してくれない。先生はいろんな生徒と話しているだろうが、先生には生徒のことをよく覚えておいてほしい。生徒は先生との話を覚えている。

◎大学生Fさん:高校時代は先生とあまり話さなかった。一人暮らしをしているので、大学では先生が父親代わりで、ゼミで楽しい日々を送っている。高校時代も自由がほしかった。一方的に授業を進めるのでなく、一緒に授業を作っていく経験がしたかった。

◎高校生Aさん:一方的に授業を進めるのはやめてほしい。ただ聴いているだけは眠くなる。理数系の科目はこんなんできて当然という調子で進めないでほしい。担任も、進路の話で「これくらいは大丈夫」と言われてもプレッシャーになる。

◎高校生Bさん:ずっとしゃべっていられると眠い。雑談も入れてほしい。75分授業はやめてほしい。

◎私立学校生Cさん:図書館は好きだった。でも授業を休んでいくことは許されなかった。

アルバイトの経験について

◎大学生Dさん:高校生の時はしていない。大学に入ってからバイトを始めた。映画館、ホール、郵便局。自分で働いたお金でできることを試したかった。人と関わる中で学びたいと思って接客のアルバイトをした。親からも自立したかった。

◎大学生Eさん:アルバイトは高校は禁止。年賀状の配達だけ許可されたのでやった。大学は派遣のバイト。レストラン3ヶ月、ダイキンエアコン1ヶ月、ペットショップ3日間。今は家庭教師。働くことをプラスに考えればもっとバイトが長続きしたかもしれない。

◎大学生Fさん:高校時代は禁止。1回生の12月に派遣のバイト(電気屋のチラシ配り)。家庭教師、喫茶店、デパート販売員。いろんな世代の人と接すると社会勉強になる。

◎高校生Aさん:バイトはしていない。親は、高校生の時は自分のやりたいことをしたらいいと言っている。高校生の時にしかできないことをする。

◎高校生Bさん:していないが、やりたいと思っている。

◎私立学校生Cさん:夏休みに派遣の登録をし、料亭のお運びの仕事。年末は年賀状、おせち料理を詰める仕事。

大学の学費について

◎大学生Dさん:高い。親には感謝している。自分でやれることはやる。学費以外は自分でまかなう(奨学金も活用)。

◎大学生Eさん:高い。家族で3人が働いている。みんなから支援をもらっているので負い目を感じる。お金のない人も大学で学べるようにしてほしい。

◎大学生Fさん:高い。姉(やはり関西の大学生)も私も奨学金をもらっている。4回生は授業の余裕ができるので、その時間はアルバイト。中国人の留学生も相当している。留学生は大変。

◎高校生Aさん:親には私立は行かさんと言われている。とりあえず国公立に行ってくれと言われている。

◎高校生Bさん:保育専門学校もお金がかかる。

◎私立学校生Cさん:親は私立でもいいと行っている。がんばって国公立に受かりたい。

大学生から見て今の学校・社会は何色か?

◎大学生Fさん:「灰色」。自分の中では頑張ろうと思っているが。大学生活は楽しい。勉強も教職課程が楽しい。就職活動を一生懸命している人と授業にでないでバイトばっかりの人に二極化している。

◎大学生Eさん:社会の色は混ざっている。きれいな色ではない。手を突っ込んでみないと何がでてくるかわからない。高校・大学は同じ色だが、高校が一番うすく、大学で少し濃くなっている。塾の先生からは、未来は輝いていると言われたが、全然輝いていない。目標を持っている人と持っていない人との差が大きい。年収を意識している人、社会に貢献したいと考えている人、遊びのことを考えている人などいろいろである。。

◎大学生Dさん:高校ではいろんな色が交じっている中で自分色を見つけていった。社会は色がない。色がわからない。灰色とも思わないが、自分の選択にかかっている。やってみて色が付いてくる。



◎保護者(2人のお子さんが府立高校):子どもは府立高校3年生。入試制度が複雑。受験料も高い。U類に入って国公立をめざすのは大変。20%枠で入ろうとしても特活(特別活動)に出せるものがないなど、苦労した。基礎学力が中学校まで十分ついていなかった。高校の授業は速い。自信をなくした。沖縄研修旅行がきっかけで2年生の終わりに社研に入っていろいろな活動、人とのつながりができて、学校へ行くのが楽しくなってきたようだ。学力的にはしんどい。学校で居場所が見つかったことで救われた。元気に学校へ行ってくれればそれでいい。応援してくれる先生や生徒がいてくれることがありがたい。高三で受験しているが、AO入試など複雑。受験機会が多く、すでに10万円かかっている。

◎私立高校校長: 生徒は、自分に関係がないと思うと入っていかない。大学生の生き生きした姿を見て、高校時代からそうなれたらと思う。学校説明会で在校生がしゃべるのが効果があり、メインにしている。好きな教科は何という質問に在校生は「修学旅行」と答えて中学生や保護者は笑ったが、総合授業としての修学旅行の話しを生徒がすると大変興味深く受け入れられた。男子はものを言わないが内面にいろいろかかえている。授業を変えていかないといけない。社会的ルールを提起し教えないといけない。

◎原田さん:生徒には、何でも言われるまま受け入れるのでなく「疑いなさい」と強調している。

◎倉原さん:京都の会社でも、労務管理ではなく若手の力をいかに引き出すか苦労している会社がある。学校という職場を見た時、責任を負わされてばかりで汲々としている。夢、希望を持ちながら教員がやめていかない職場を作らねばならない。学校が輝くためには教員が輝いていないといけない。

◎臼井照代さん(京都教育センター):高校教員時代に話したことを忘れていても生徒は覚えている。教師の言葉には重みがある。



《討論のまとめと閉会あいさつ》(磯崎三郎:教育センター高校問題研究会事務局長・城陽高校)

・分科会参加者は25名。忙しい中参加し、発言してくれた大学生・高校生のみなさんに感謝したい。
・本日の分科会で出された主な論点、成果、大事だと思った点をまとめておきたい。
@就職した卒業生と追跡して相談に乗り指導されている原田先生の活動は大切な活動である。それに関わって、高卒就職者の困難な就労状態をどうするか。働く環境をよくする活動は一人では困難であるが、全体で取り組んでいかねばならない。また、労働組合や労働に関する権利の知識など働く上で対応できる力を高校時代につけなければならない。基礎的な学力や常識など働くのに必要な力もつけることが求められる。
A授業が理解できた時生徒のやる気が出る。わかる授業は一方的に話すだけでなく、教員の労力・工夫、生徒の参加が必要。しかし、努力して点数がとれてやる気を起こさせる指導と、レベルを下げたり安易な手段で点数をとらせたりすることと違うことも指摘された。
B学校行事が充実している学校では学校生活への満足度が高い。今の京都の公立校校の多くでは行事を削減する傾向がある。京都市内・乙訓地域で通学圏が4から2に変更される。入試選抜制度が改編され輪切りが進んで学校間格差が拡大すると、入学当初から学校に不満足な生徒が増える恐れがある。。
C高校で「働くことの意味」や「将来の夢、目標」をしっかり考える機会を設ける必要がある。
D社会をどう見るか。憲法改悪の動きなど、今の日本が戦前に戻されそうになっている。学生から見て社会は「灰色」で暗いという感想が出たが、輝く未来が見えてくるように行動していきたいものである。

・本日の分科会の感想・意見提出のお願い  ・高校問題研究会の活動の紹介と入会の案内


【分科会運営委員会のまとめ】

  分科会では、「高校生・若者から見て、いまの学校・社会は何色か?」のテーマで、大学生・高校生・高校教員が、高卒就職者の実態や高校生・大学生の学校・社会への意識について報告し、学校生活や社会への意見を発表した。また、将来の進路や学校の授業・先生のあり方についても意見を交流した。報告と討論で明らかになった点や課題を以下にまとめておきたい。

(1)今年度の分科会では、若者が働く環境や若者から見た学校・社会について、大学生・高校生・高校教員から報告・発言し、とくに大学生・高校生が積極的に発言したことが成果である。

(2)高卒の就職者の労働環境・実態が原田レポートで詳しく報告されたが、卒業後の状況を把握して相談に乗り指導していることは、貴重な活動である。 多くの学校で卒業後の就労状況を調査・把握するとともに、劣悪な労働環境を正しく変えていく働きかけをすることが必要である。また、高校在学中に、働くことの意味、自分の職業希望をしっかり考える手だてや、働く権利などの学習働く上での基礎学力をつけるとりくみが求められる。

(3)生徒は授業が理解できたときにやる気が出ることが、高校生意識調査結果の報告で出され、討論でも話題になった。「わかりやすい授業」や、生徒の頑張る意欲を引き出して学力をつけるとりくみをどのように進めるか、各校で個人任せではなく学校全体での検討が望まれる。

(4)分科会参加者について。現場の高校教員の参加が報告者・運営委員を除くと少ない現状をどう打開するかが、引きつづく課題である。

 来年度以降の分科会についても、その時々の高校教育の焦点になるテーマを決め、高校生・大学生・保護者の参加とより多くの現職教員の参加を目ざし、運営していきたい。

      
2008年3月
京都教育センター
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