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京都教育センター年報 第19号(2006年度)
第三部 京都教育センター 学力・教育課程研究会

2006年度研究会活動の経過と概要
2007年度研究活動の方針


               小野 英喜(学力・教育課程研究会)


1.活動のまとめ

(A) 今年度の活動方針として、「ア)観点別評価についてその実態と問題点を調査し、課題と改善の展望を明らかにする、イ)子どもの学力の変化を各種の調査で明らかにし、基礎学力としてどのような内容と 方法を保障するかを提言する。ウ)『総合的な学習の時間』や高校の『情報』など新しく導入された『教科』の実施状況と問題点を明らかにして、教育課程の課題を検討する。」を設定していたが、教育基本法の改悪の問題が怒り、その取り組みもあり、また体制が整わず実現できなかった。

(B) 例会は、教育センターの企画を主催する形で6月11日の「公開研究会・中央教育審議会答申を読む」は、国語部会と共同で、11月25日「公開研究会・フィンランドの教育」は、発達研究会と共同して、2回を実施できたが、独自の例会や研究会は企画できなかった。

(C)「部会委員の拡充と恒常的参加の体制作り」については、新しい方たちの参加も得て充実する方向に進んでいるが、目標からの到達点は十分とはいえない。この中で、部会のニュースの「京都教育センター学力・教育課程研究部会だより」の発行は、3回にとどまり、来年度こそ定期発行がもとめられる。

(D) 第37回京都教育センター研究集会の第3分科会「今日の学力問題と取り組みの展望」を担当して研究会を成功させたることができた。


2. 「公開研究会・中央教育審議会答申を読む」を開催して

 教育センターが今年度継続的に開いている「公開研究会」の一環として、教育基本法の改悪の企みが実行に移されようとしていた6月11日に、「中央教育審議会答申を読む」と題して、植田健男・名古屋大学教授の講演による学習会を開催した。後半は、国語研究会の実践報告があった。 この講演中で、植田先生は、教育改革の重要な問題点をいくつか指摘された。

 それは、
   @ 現在の教育改革は、「教育課程の空洞化・貧困化」が問題の根底にあること。
   A 学校現場の困難さは、本来の意味での教育課程の再生をしないと展望が出てこない、
   B それを進める上で、教育基本法が最も大切になるが、現行(旧)の教育基本法は権力を抑制するためのものであった。しかし、改悪法案は、国民に義務を命じるものになっていて、教育基本法が持っている趣旨の本質的な転換をねらっている。 さらに、現行(旧)が、人間としての自立を求めた条文であるのに対して、改案法案は体制に従順な人間、政権党が作った法に従う人間を育てようとしている。
   C 財界主導の教育改革は、公教育の切り下げと削減を求めており、日本の財界の生き残りを求めて財政支出を経済界に振り向けるための公教育のスリム化論がよりいっそう強固に進められているのが今日の教育改革であり政府文部科学省の政策である。
   D それは、子どもを「エリート」「高度専門技術者」「柔軟活用型」の3つに分化させ、前の二つは、子どもの3割程度にしてここにはお金をかけて養成するが、7割を占める「柔軟活用型」にはお金をかけないという計画である。
   E 子どもには学力テストなどで競争の激化を行い、教師には教員免許の更新性と評価と職階制の拡大で競争と管理統制を行う。
   F 2005年10月に出された中央教育審議会の答申「新しい時代の義務教育を創造する」は、これからの学校教育をどのようにするかということが明らかになっている。これを学習して、本来の学校教育の在り方を共通に理解する必要がある。


3.第37回京都教育センター研究集会の第3分科会

 第3分科会・「学力・教育課程研究会」は、「今日の学力問題と取り組みの展望」をテーマにして、この数年間取り組んできた学力問題を深めた。今回は、「基調報告・学習指導要領の改訂は」(鋒山泰弘)を受けた後、「小学校における算数の実践」(山田)と「中学校の社会科実践」(辻)から実践報告の発表をしていただいた。本分科会は、参加者が少なく、意見の交流の広がりは欠いたが、個々の実践をめぐって学力保障の観点から、取り組みを発展させる方向での議論が深まった。


4.今後の方針と部会の研究計画

(A) 部会の研究活動  部会の研究活動は、昨年度に引き続き、次のテーマで研究活動を進める。

    ア)観点別評価についてその実態と問題点を調査し、課題と改善の展望を明らかにする、
   イ)今春、文部科学省が実施する全国学力テストの問題点を明らかにしつつ、子どもの学力の変化を各種の調査結果を収集し基礎学力の内容を確認してそれらをすべての子どもに保障すると方法・教育実践を提言する。
   ウ)『総合的な学習の時間』や高校の『情報』など新しく導入された『教科』の実施状況と問題点を明らかにして、「世界史未履修問題」に象徴的に表れた教育課程の課題を検討する。

(B) 学期に一回の例会を計画する。各種民間研究会と合同して、『学力・教育課程研究大会』を開催すると共に、例会への参加を府下の教職員と研究者・父母などに広く参加を呼びかける。

(C) 部会委員の拡充と恒常的参加の体制作りを進めるために、「委員の拡充によって部会の研究体制づくり」と、部会のニュース『学力・教育課程研究部会便り』の発行を続ける。学力・教育課程問題についての「資料配布」についても、会員の皆さんからの情報提供を受けて積極的に進めて生きたいと願っている。

(D) 研究会の体制

  【代表】藤原義隆、
  【事務局員】 藤原義隆、中須賀ツギ子、淵田悌二、小野英喜、
  【部会委員】 略
 「京都教育センター年報(19号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(19号)」冊子をごらんください。
2007年3月
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