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京都教育センター年報 第19号(2006年度)

揺れない羅針盤をもちましょう!

        
京都教育センター代表 野中一也


 06年度の京都教育センターの活動は、残酷な侵略戦争の痛切な反省に基づいて生まれた教育基本法を「改悪」する支配層の動向に広範な市民とともに抵抗し、民主教育の前進をはかる取り組みに集中したと言えると思います。

 今、東京都の「教育改革」は、「戒厳令下の教育現場jと言われるまでになっています。小泉・安倍内聞の教育政策の先取りが東京都の教育改革と言われるものです。支配層は、下からの広範な反対運動にもかかわらず、06年12月に「改悪」教育基本法を成立させました。教育基本法を「改悪」するために「やらせ」タウンミーティングまでして世論を「偽装」しました。安倍首相の直属機関である「教育再生会議」は、1月24日に教育のこころを喪失した「7つの提案」を第一次報告案として発表しました。「ゆとり教育」の見直し、学力向上、規範意識の押しつけ、出席停止制度の活用、高校での奉仕活動の必修化、などの無機質の提案です。

 深刻な教育問題を解決する方向に逆行するもので、ますます管理教育の強化を図るものです。この先に見える教育の未来像は、石原慎太郎東京都知事が強行しているファッショ的教育実態だと思ってよいでしょう。

 いまや東京都だけではなく大なり小なり全国的に教育の本質である「教育の自由」が奪われつつあり、現場教職員は窒息するほどの苦悩を強いられています。京都府も同様です。定年がくるのが待ち遠しいという教職員も少なくありません。東京都の教職員の方々は「内心の自由」をよりどころにして卑劣な権力的攻撃に抗しています。私達は苦しい「今」を乗り越える展望をもって前進していこうではありませんか。

 「教育の自由」を抹消しようという政策は長続きするはずはなく、必ず破綻していくでしょう。06年9月、東京地裁は「国歌斉唱義務不存在訴訟」で画期的な判決をだしました。私達に大きな励みを与えてくれました。教育の道理に反する教育行政の破綻の必然性を確信もって追求し、展望を模索していきましょう。

 内心に土足で踏み込まれる苦悩をばねにすることも大切だと思います。「子どもはランドセルとともに喜びも悲しみもはこんでくる=岩辺泰史氏)といった教育観に共感しあったり、子どもと喜びと悲しみをともに「分かち合い」「共感し合い」ができれば、内からのエネルギーが沸いてくると思います。そして「教育とは何か」「学校とは何か」「子どもとは何か」と言った原理・原則を追求して、動揺しない「羅針盤」(憲法の精神)を模索しようではありませんか。未来を担う子ども達に希望を語りつづけていきましょう。

 今年度も皆さんとご一緒に京都の教育の展望を模索していきたいと思っています。年報の活用を期待しています。


教育基本法改悪反対のたたかいを力にいっそうの前進を

         京都教職員組合執行委員長 藤本 雅英


2006年は、教育基本法が、国民多数の「拙速な『改正』は反対」の声を踏みにじり、政府与党自民・公明の「数の力」によって改悪強行されるという歴史的暴挙に直面する年でした。しかし、一方で教育基本法改悪を許さないたたかいは、戦後教育史、教育運動史上特筆すべき重要な到達点を築いた歴史的な国民的運動が広がった年でもありました。京都府内各地の運動の広がりを見ても、教育基本法の具体化を許さないたたかい、教育を国民の手に取り戻し、ともに作り上げていくとりくみを前進させる展望を切り開くものであることを実感できるものでした。

  改悪教育基本法は、国が子どもたちや国民の内心の自由を侵害すること、また時の政府による歯止めのない教育介入の仕組み作りであることなど、まさに憲法に違反するものであることが国会内外のたたかいを通して明らかにされました。同時に、その具体化は憲法の制約から逃れられないことも浮き彫りにしました。政府自身が内心の自由について「子どもの愛国心を評価することは適切ではない」、「日の丸・君が代」の強制について「批判する子どもの思想・良心の自由も保障しなければならない」と述べざるをえませんでした。教育の自由に関しても「国家権力による教育内容への介入は出来るだけ抑制的でなければならない」と言明するなど憲法が、改悪教育基本法から子どもと教育を守る大きな力であることをあらためて鮮明にしました。

 教育基本法改悪反対の共同の広がりは、これからの憲法に依拠したたたかいと子ども・父母、府民・国民の教育への切実な願いを実現する運動前進の確かな礎を築きました。「教育とは何か」、「子ども、学校はどうなっているのか」「これからどうなるのか、どうすればいいのか」など京都でも府民的な関心が高まり、真剣な話し合いが職場、各地域をはじめ様々なところで広がりました。それは、府・市教委が改悪教育基本法の具体化を進めようとしても、それが「子どもと学校にとってどうなのか」を基本に運動を進めるならば、父母・府民、教職員の切実な教育要求を前進させることができる確信を深めるものでした。

 たたかいの到達点、そこでの確信を生かすかどうかは、まさにこれからの運動にかかっています。 国が悪法を作り、教育の現場を統制・支配しようとしても子どもと教職員の思想・信条を縛ることは出来るものではなく、子どもと教育を守る府民・国民的な共同を断ち切ることは出来ないものです。そのことを示したこの間発揮されたエネルギーや大きな共同を力に、さらに職場・地域から運動の前進に力を尽くす決意を新たにしています。

 京都教育センターの教育基本法改悪反対の教職員、父母・府民へのメッセージの発信など積極的なとりくみには、私たちも大きく励まされました。「教育改革」を打ち破り、教職員が誇りを持って立ち向かえる力を培うとりくみも急務であり、その点での教育センターへの熱い期待も大です。ともに前進するためにいっそう努力を強めたいと思います。
2007年3月
京都教育センター
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