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青年教師のための お助け「玉手箱」 5

「職場の人間関係」実践「玉手箱」


統廃合──ああ、もったいない、もったいない         〜小さな学校の、大きな可能性〜

― 京田辺市立普賢寺小学校  府金 隆清 ―


(2008年4月10日)


  統廃合が強引に進められている地域の、ある学校の閉校式でのこと。教委の関係者が「人数が少なくなると、活力がなくなる。子ども達に力をつけるために今回の統廃合を進めた」という趣旨の挨拶をしたそうです。単学級になったら学校は「小さ過ぎる」のでしょうか?それより、なにより「小さい学校は子どもの育ちの上でハンディがある」のでしょうか?

 わたしは、児童数七十六人の本校での経験を通じて、まことしやかに喧伝されてきた「学校は大きくないとだめ」という“日本の常識”がいかにまがい物かということを実感してきました。学習の面でも、集団活動の面でも、何よりそのベースとなる学校の空気という点でも、「子ども」「教職員」「保護者・地域」の近く、濃く、親しい関係が醸し出し、生み出す力は想像以上のものです。小さいことはハンディどころか、得がたい強みであり、子どもの育ちの上では必須条件とさえ思えます。

 集団活動の面でいえば、小さいからこそ「全ての子どもに、豊富な出番がつくれる」という“強み”があります。「その中でこそ自信と自覚を育てられるし、大きな集団でも力が発揮できる素地を作れる。そして、その自信と自覚の記憶は一生の財産となる」と考えて、わたしは、学校づくり、集団づくりにかかわっています。それは、保護者の中にもある「少人数の学級、学校の中では力が発揮できても大勢の中では萎縮してしまったり、引っ込んでしまう=小さい学校の弱点」という懸念、また、そうなってほしくないという期待に応えられる学校づくりにも重なることだと思っています。

 実際本校の児童、特に六年生はいやというほど出番があります。学級=学年はもちろん、異年齢のたてわり集団の中で、さらに少人数とはいえ全校児童の中で、そして保護者や地域の人たちの注視の中での出番も少なくありません。これでもかというほどの役回りもあります。やっていく中で見つけ、わかってくることがあります。子ども達は負担と思わず、ステップにしています。覚悟をして待っています。そして力をつけていきます。

 一方で、六年生になるまでにも、多様な組み合わせの異年齢ユニットの活動が展開できます。異なる立場で、リードしたり、リードされたり、先輩の姿を見たりという経験を積む中で、「六年生になったら」という最高学年像を徐々に暖めていきながら引き継いでいく大事なステップになっています。いずれも、小さい学校でないと簡単にはできない大きな教育力を持つ実践というべきでしょう。

 児童数減は寂しいことですが、過大規模の弊害を脱して「子ども」「教職員」「保護者・地域」が近づける絶好のチャンスでもあります。それなのに統廃合??みんなが幸せになれる、地域に支えられた小さな学校を手放すなんて、ああ、もったいない、もったいない。

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