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青年教師のための お助け「玉手箱」 4

「生活指導」実践「玉手箱」


希望する高校を選べる「自由」
      →希望しない高校を選ばされる「不自由」
――「実験場」の山城から市内・乙訓通学圏の「改革」批判――


            宇治久世教組・木幡中分会 中野 謙二

(2007年7月10日)


 今、京都府・市教委による「京都市・乙訓地域公立高校入試選抜に係る懇談会」が異例の頻度で開催され、六月末に出された「まとめ」をもとに「規則を改正」し、来夏に新制度要項を発表し、〇九年度入試から実施しようとしています。

 その内容は総合選抜制度を部分的に残すなどの「歯止め」がみられるものの、多くは三年前から山城地域で「実験した」制度を下敷きにしています。

 私は一昨年までの三年間、宇治市の中学校で三年生を担任し、〇四年度より府教委のトップダウンで変更された山城地域での「新制度」下で大変な苦労を強いられました。「百害あって一利なし」と言ってもいい「山城方式」を市内・乙訓地域に持ち込もうとしている今、実験場となった山城通学圏でのリアルな実態を限られた紙面で伝え、「山城の二の舞を許さない」声が各所で上がることを願います。(詳しくは山城地方の高校統廃合問題を考える会の「黒書」を参照して下さい)

 「三原則つぶし」の名の下に八五年から強行された「京都方式」(九通学圏での類型制度)は多くの矛盾と困難を拡大しながらも、今や全国で唯一残るT類での総合選抜制度を残し、ささやかながらも混迷の歯止めになっていました。

 ところが、四年前の〇四年度入試から山城地域で強行された「新方式」は@山城北・南の二通学圏を一つに統合 A総合選抜から単独選抜へ B三段階(前・中・後期)入試で受験機会を複数化 CT・U類の一括募集 D内申点を全学年から採る。というのが主な内容。  「希望する高校を選べるバラ色のプラン」(四十一中学校から十二高校の志願が可能)というのが「売り」で、生徒も保護者も私たち教師もその新方式に「バラ色」を垣間見た。しかし、三年間その入試最前線で携わってきて、「バラ色」はトゲのある「灰色」であったというのが今の実感です。

 その問題点は、@単独選抜により予測しがたいバクチのような志望校選択(併願増) A中期(一般)入試では毎年二〇〇〜三〇〇名の不合格者が出る(市内の2倍超) B通学圏の拡大で遠距離通学となり地元の高校は存在しない C高校間格差が増大し、生指上「問題なし校」の一方で一年間で中退者一クラス分を生み出す高校が発生。そして、この進学状況が中学校の評価・格差に。単独選抜ではなく、「総合選抜制」が維持できていればこんな学校間格差はおそらく生まれなかったでしょう。

 中三生の多くは「専門学科より普通科」「遠い高校よりも近くの高校」「いい(悪い)高校より普通の高校」を望んでいます。その思いを大切にして「学ぶよろこび」と「生きる力」を見通せる進路実現をはかるのが私たち中学校教師の願いです。塾などがつくる偏差値をもとに振り分けざるをえない「指導」はもううんざりです。「選べる自由」は実のところ「選ばされる不自由」につながることを、すでに「実験場」となった山城地域から告発し、市内・乙訓の中学校の先生に知ってもらいたいと切に思っています。
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