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青年教師のための お助け「玉手箱」 3

「教師と子ども」実践「玉手箱」
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やらされている合唱から自分たちの合唱へ

      福知山市立 日新中学校 梶原秀明

(2008年5月10日)



 昨年度、中学校二年生担任時の実践である。

 何年か前までは合唱コンクールの取り組みというと、創意工夫を生かしたバラエティーに富んだものだった。私自身も校舎の屋上に上がって夕陽を見ながら歌わせたり、パートごとにグランドの端から歌って声が届くかを競ったり、朝練習しているバレー部を前にして体育館のステージで早朝練習に取り組んだり等々・・。

 それが今や時間枠や場所がきっちりと指定され、はずれることが許されず、担任教師の裁量や子どもたちの自由な発想が生かされにくいものになってきている。そうした中でのここ数年の、あまりの子どもたちの受け身な取り組み姿勢に嫌気がさしてきていた。音楽の授業での初めての合唱曲の練習では、女子はほとんど声が出ない状態だったという教師の報告だった。

 なんとか、合唱を子どもたちのものにしようと考え、早朝練習と昼休み練習は、欠席届を指揮者に提出すれば自由参加にするという提案を合唱実行委員会に提起した。(ただし、毎日放課後の三十分練習はどのクラスも指定された場所で取り組まなければならない。)実行委員会で承認され、学級でも承認された。こんな取り組みは子どもたちのとって初めてである。はじめは戸惑い気味に参加する子どもも多かったが次第に参加者が減ってきた。届けさえ出ていれば、私も何も言わない。

 ついにある日の早朝練習では参加者が三人までに減った。私もさすがに顔が引きつったが、平静を装って一緒に歌った。教室を出ると、廊下で練習に参加せずにおしゃべりしていた女子が気まずそうに私を見ていたが、私は一言「おはよう」とあいさつをしただけで通り過ぎた。

 ところがこのころから放課後練習で女子の声が出始めた。そしてこの日を底に参加者が増え始めた。朝練習の最終日前日は全員参加を提起。ほぼ全員参加の中で合唱練習が始まった。いよいよ合唱コンクール本番、私が担任する二年四組は自由曲「この地球のどこかで」を見事なハーモニーで歌い、最優秀賞を獲得することができた。同じ縦割りブロックで合同練習を繰り返してきた三年生の担任の教師が、三年生のリーダーが「二年四組は合唱の伸び率でもナンバーワンだ。」と言っていたと伝えてくれた。

 この取り組みの後から、どちらかというと陰湿な雰囲気のあった女子のムードが明るくなった。三月末には、よく私に反発していた女子が「二─四大好き」とプリントしたクラスの女子数人が写ったプリクラを私にプレゼントしてくれた。そのプリクラは今、私の学校のパソコンに貼ってある。

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