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青年教師のための お助け「玉手箱」 3

「教師と子ども」実践「玉手箱」
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「励ましとやさしさを」

      京都市立松ヶ崎小学校 安達 淳子

(2008年3月10日)



 今ほど私達の仕事がむずかしいときはありません。実践をベースに学級づくりができ、子ども達がどんどん伸びていった若い頃の実践では、親も教師も子どもを伸ばそうと一生懸命でした。今でも、悩みながら実践しているのですが・・・・。

 上からの学力っていったい何でしょうか。点数で計れる学力はいったいどこへ向かうのでしょうか。競争することでしか私達の仕事は計れないのでしょうか。子ども達にとって、学校は一日のうちで一番長い大切な時間です。できるだけ子ども達どうしがかかわり合う時間をたくさん持ちたいものです。

 四月、新しい学年を担任すると、初めに『さくらのさくひ』という絵本を読むことにしています。この本は、もう年老いた桜の木が花を咲かせなくなり、地下のもぐらが、友だちである桜の木の根に水を運ぶのですが、手で運ぶことができなくて、「ぼくは君の友だちだったよね。」と言って涙を流し力尽きてしまうのです。でも、その涙のおかげで桜の花を咲かせることができるのです。私はこの本が大好きです。今は、四年生を担任していて『ごんぎつね』を学習しています。ごんはいたずらばかりしています。でも、ひとりぼっちになった兵十をみて、次の日もまた次の日もつぐないをするのですが、最後に兵十に撃たれるのです。その時、兵十はごんのやさしさに気付くという物語を読み合っています。最後まで読んだ時、何人かの子ども達のすすり泣きが聞こえてきます。その声を聞くと私まで悲しくなります。相手を思いやる気持ちは簡単ではないけれど大切にしたいと思いながら学級づくりをしています。

 学級づくりは、日々の学習の中で「自分を出すこと」であり、クラスのみんなが「自分を出し合う」ことです。さらに、書くことは「考えること」であり、「考え合う」ことです。書くことでさらに学習が深められていきます。書くことの一つに、細々と続けている一枚文集があります。日記や作文や詩を書いてくる子の生活に心を痛め、その子どもたちに後ろを向くことができずに悩んでいる自分がいます。でも、それが、今の私を支えてくれています。言い換えれば、何度も負けそうになる自分を子どもたちの綴り方によって励ましてもらえているのだと思います。

 また、親が誰にも言えずに心を痛めていることが表に出せるような、「わが子が大切にされている」という実感がなければ、親のかたくなさは溶けないのではないでしょうか。

 お母さんやお父さんと語り合いながら、時間はかかるけれど、私達は子ども達に励ましとやさしさを送り届けたいものです。

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