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青年教師のための お助け「玉手箱」 3

「教師と子ども」実践「玉手箱」


『他人の成長を自分の喜びに』できる子ども・学級にしたい

      南丹市立八木小学校  三上 泉


(2006年12月10日)


(1)「唯物論と弁証法」を実践に生かすこと

 私は、青年教研などで若い人たちに、唯物論と弁証法にもとづく教育実践〜「観念にとらわれず、事実をありのままに見つめる」「物事はすべて変化・発展することを前提に実践を組み立てる」ことを勧めています。若い世代はこんな言葉は初めて聞くという人ばかり。この理論を知っている人でも、自分の実践に意識してとことん生かしている人が少なくなっているのではないでしょうか。

 一九八六年中学校の体育教諭として採用され、五年間中学校で勤めたあと、小学校に異動し五年間、そして、一九九六年から七年間、教職員組合の専従役員として現場を離れて、二〇〇三年に再び現任校に戻ってきました。

 私は、ある人から教わった言葉を自分なりにアレンジして、子どもたちにこう語っています。 「自分よりもうまくできる人もいれば、そうでない人もいる。でも、それはすべて自分が歩む道筋の中のどこかの姿だ。自分よりうまくできる人は自分の『未来の姿』であり、自分もやがてたどり着く姿だ。だからコツややり方をよく見て取り入れたり、アドバイスをもらったりしよう。また、自分よりうまくない人は自分の『過去の姿』であり、自分もかつて通ってきた道にいる人だ。だから自分がどうやって乗り越えたか、どうすればうまくなるかを積極的にアドバイスしよう。人に教えられるようになることで、自分の技もよりよいものになるはずだから。」


(2)「ムリムリ!」から始まり「できた!」 まで
──学級みんなで支えあい磨きあった「跳び箱運動」の授業


 いま、担任している学級は、発達上の課題を持つ子や、障害児学級から体育の時間に学習に来る子、体格・体力、健康上の理由から配慮の必要な子がたくさんいます。

 でも、この子らも必ず伸びるしできるようになる!と信じ、跳び箱運動「ヘッドスプリングからハンドスプリングへ」に取り組みました。

 最初に私が、ヘッドスプリング、ハンドスプリングの見本を見せたとき、子どもたちは口々に「ムリムリ!」「すごいけど・・・」「こわい!」と、予想通り一気にひいてしまいました。「いきなりこんなことはできないのは当たり前。でもちゃんと道筋を通ればみんなたどり着くんだよ。」と笑顔で語りかけ、授業をスタートさせ、いくつかの技術的アプローチを自分なりの系統性をつけて指導していきました。子どもたちがお互いにアドバイスをしたりされたり、人の技をじっくり見たりすることを大切に、授業カードも毎時作って、気づきやふり返りを記録させていきました。

 「ムリムリ!」と叫んでいた第一時。でも次からは、子どもたちの目つきも態度も徐々に変わってきました。自分の体がふわっと浮いて起き上がる感覚が気持ちよくて、しり込みしていた女子もどんどんマットに突進していきました。カードの書かれている内容も、「できてよかった。」「まだよくわからない」という文章から、「○○さんのを見ていると△△すればいいのかなと気づいたから今度やってみよう。」「◇◇くんが、今日初めてできはった。アドバイスしてきたぼくもとてもうれしかった。自分もがんばらんと!」という文書が増えてきました。


(3)科学の眼をもって、他人の成長を自分の喜びにできる子どもに

 授業を終えて、障級の二人も含め、ほとんどが跳び箱でのハンドスプリングまで到達しました。できなかった子もいたが、「やり方はたぶんわかったと思う。きっとできるようになる!」「いっぱいアドバイスをもらってうれしかった。いっぱい人の技を真剣に見た。」という感想を残してくれました。

 ますます、忙しくなる職場ではありますが、ささやかでもこのようなこだわりのある授業をしていきたいと思っています。

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