トップ 事務局 青年教師 教科指導

青年教師のための お助け「玉手箱」 2

「「教科指導」実践「玉手箱」
29


「読み聞かせ」で育つ子どもたち

            向日市立第六向陽小学校 清水 鉄郎


(2009年5月10日)



一、はじめに

 昨年は、「源氏物語」千年紀といわれ、京都初め全国各地でその関連の行事や取組が数多く開催されました。「源氏物語」の「東屋」に「読み聞かせをする」場面があります。すでに「読み聞かせ」をすることによって、心を慰めたり、癒したりすることを 千年の昔から先人が知っていたことに驚きました。今、私たちは全国的に読書の大切さ、読み聞かせの大切さを強調していますが、「読み聞かせ」 は千年の歴史を持つ営みであるというのは大げさで しょうか。

二、全国ですすめられる「国語力向上と読書運動」を考える

(一)全国に広がる朝読書のとりくみ

 今日、全国的に、国語の学力低下(とりわけ読解力)、読書力の低下が指摘され、学校現場では、朝読書運動が広がっています。読書の習慣づけとしては効果的ですが、本来の読書の意図とかけ離れた管理と結びつく「朝読書」運動が広がっているのも現実です。

 県あげての一〇〇〇万冊読書運動や学校ごと目標を設定させ、読んだ冊数を競わせ、教育行政が評価するという実態も起こっています。

 一方で、学力テストの結果、読解力向上のために、国語の力をさらに向上させるため、「読書」をことさ ら強調している傾向が見られます。これは、私の学校の地域の現状だけではなく、全国的にも起こってきており、こうした読書のゆがんだ形が、学校教育に競争と格差を生み出す一面にもなっていないでしょうか。  本来、読書は強制的ではなく、自主的であくまで楽しみに結びつくものと考えます。「読解力」などの力は、結果としてつくものであり、結果を目的化すべきでないと考えます。

 私の学校でもこうした見解を持っていますが、行政からは冊数を競わせる指導があります。


三、私の学校(前任校)でのとりくみから

(一)日常的な「読み聞かせ」がなかったクラスを 担任して  読み聞かせとの出会いを大切にし、本を読んだり、 読んでもらったりする体験の心地よさを子どもたちにと、毎朝できるかぎり読み聞かせを実施しました。  

 読みながら、驚いたり、笑ったりしながら、読む先生も楽しいことをいっしょに感じたい、共感しあうことを大切にしました。

(二)何よりも「読み聞かせ」の楽しいひとときを子どもたちと一緒に

 「読み聞かせ」本は短冊カードにして、すべて教室に張り出しました。イラストは係りの子どもたちが交代で描きます。だんだん増えるにしたがって、子どもたちの自慢になりました。さらに、本や作者に注目し、よく本を覚え、関連した本もよく読むようになりました。また、子どもたちの作文カードの中から、「読み聞かせ」のおも しろさを書く子どもたちもふえてきました。「みんな と一緒に聞くことが楽しい」と感じる子どもたちが出てきました。

(三)お母さんの「読み聞かせ」 〜本をかかえて教室にやってくるお母さん〜

 学級のお母さんの自主的な取組として、「お母さんの読み聞かせ」がスタートしました。学級懇談会で出たもので、定期的に朝の十五分、お母さんが クラスのみんなに読み聞かせをします。子ども達は、その日のうちに感想を手紙にして届けます。するとお母さんから返事が届けられます。学級の子どもたちとお母さん方をつなぐものになり、懇談会でも話題になりました。  このお母さん方は、「読み聞かせノート」をつくり、次の人にまわしていました。今日読んだ本、子どもの反応や感想、読み手の反省、さらには、ク ラスのその日の雰囲気まで書いてありました。お母さん同士の交換日記みたいになりました。


四、「読み聞かせ」で育つもの

 国語では、ブックトークの取組を学年で取り入れ、成果を上げてきたが、こうした取組で次のような力が育ってきたと考えます。

(一)「読み聞かせ」によって言葉に反応しながら イメージを膨らませること、表象力が育っていく。

(二)子どもたちの語彙を増やし、日本語の持っている美しさ、たのしさに気づき、日常の生活の中で発展的に広がつていく。

(三)作品の中から、社会や自然に対する認識を新たにすると同時に、具体的な形で人間の生き方や考え方の認識を作り上げていく。

(四)「読み聞かせ」によって、読み手と聞き手の心をつなぎ、作品を通して共通体験をする。  ということがいえるのではないでしょうか。

トップ 事務局 青年教師 教科指導