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青年教師のための お助け「玉手箱」 2

「「教科指導」実践「玉手箱」
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I Want To Live!(もっと生きていたい!)


      与謝野町立江陽中学校 太田垣 靖


(2008年1月10日)



 文化祭で各学年20〜30分程度の英語発表会を7年間取り組んだ。生徒達が日常の授業で取り組んでいる Small Talk, Short Speech, Show & Tell, Recitation 等の自己表現の力を総合的に高めていく場として、また共通の学習目標の達成に向けて生徒同士の学び合いや協働学習を創造していく機会としても大切な取組となっている。

 内容は、英詩の朗読、構成詩、英語劇など多彩である。1年では助動詞 Can の学習を深めるために We Can Stand (水俣病を扱った教材)を学習する。この学習を通して生徒達は自作の構成詩を上演した。構成詩の最後は、 We Can Stand の合唱であった。 We Can Stand の作詞者へ上演ビデオを贈り、その後生徒との交流が行われた。  ある年の2年生は、神戸の中学生が書いた Cheer Up Kobe! (神戸大震災の惨状と復興への願い)を構成詩につくりかえて上演した。アメリカ同時多発テロの翌年、3年生が Mutchan (防空壕で死んだムッちゃん)を上演した。

 教科書の平和を取り扱った読み物教材“ A Mother's Lullaby ”の授業では、吉永小百合さんの『第2楽章』の学習を通して、生徒達は広島の原爆投下がいかに非人間的な暴力であったかを学び、 Mutchan を演じる大きな足がかりを得た。 Mutchan を演じた男子生徒の“ I Want To Live! ”(もっと生きていたい)の言葉は、生きたくても生きることを許されなかった少女の平和を願う悲痛な叫びとして、また、平和な未来を次の世代に受け継いでいく私達大人への強烈なメッセージとして、6年経った今でも私の脳裏に刻み込まれている。

 市販の脚本は時として語彙やボリューム等中学生が演じるにはレベルが高すぎる場合もある。 Run! Melost(走れメロス)や Toshisyn (杜子春)を演じた生徒達の場合もそうだったが、レベルの高さが生徒達の意欲や学び合いを高めたりすることもある。生徒同士の関わり合いや学び合いが深まることで、一見困難に見えるレベルの高さも克服され、彼らの達成感や次への学習の意欲につながる。

 取組の中で生まれる生徒同士の信頼感や存在感が学習レベルを高める上で重要な要素であることをさらに確かめていきたい。11月の文化祭に間に合わせるために、1学期には脚本の完成、キャストの決定を終え、夏休みに自主学習も含めた台詞覚え、そして2学期からは当日に向けて授業や総合的な学習の時間を使った本格的な取組が始まる。  ALTも英語・演技両面からの援助を行う。時間も労力も費やし体力勝負の取組ではあるが、生徒達は英語力や演技力を高めながら、同時に学び合いを通じて学級集団のかたちもつくりかえていく。英語学習のスキルアップの面だけがもてはやされる傾向にある。英語学習を通してどのような学力を育てるのか、学習意欲をどのように高めていくのか等、授業論や教材論を実践的にとらえなおす研究活動の推進が求められている。

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