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青年教師のための お助け「玉手箱」 2

「「教科指導」実践「玉手箱」


理科はやっぱり本物で勝負だ!


      八幡市立第二小学校 野村 治


(2007年2月10日)


理科教育での賢さとは

 理科教育の中心は科学的な物の見方の形成を豊かに進めることです。脳が活性化すること=かしこさのように考える風潮がありますが、活性化した脳の働きを科学的認識につながなければ本当の賢さの形成はできません。いくらたくさんの昆虫の名前を知っていても、自然や環境との関わりがトータルに認識できていなければ豊かな自然観の形成は困難です。

 豊かな実体験から自然観がどうしたら確かになっていくのか、新学期の授業の導入を例にしながら考えたいと思います。  


小学校中学年を例にして

 中学年の理科を楽しくするにはどうするか。子ども達が「先生、今日も理科しよう」と思うくらいわくわくする教科、待ち遠しくなるような教科にするにはどうしたらいいのか。そう考えたときに、人が自然と豊かに、ワイルドに関わりそこから直接学び、知ること・分かることが楽しくなるような学びの原点に立ち返るべきだと思います。それを端的に言うのなら「理科は本物で勝負!」ということです。

 科学技術は進歩し、写真や新聞、テレビやパソコンを通して世界中の自然を間接的に知れるようにはなっていますが、自然に対する感性の育ちは逆に弱くなり、鈍感になっているのではないかと実感しています。そこには具体物を通した感性的学びや自然の仕組みのおもしろさを学び取ることの楽しさが欠落しているからに他なりません。多くの誤謬を内包する素朴概念から科学的な概念に認識が深化するためには、直接体験を重視しつつ、事実を記述しそれを基に話し合うという理科的な指導法をたどりましょう。  


「理科っておもしろいね」−−春の野草さがし

 新学期初めの理科の授業の導入です。教科書の絵や写真で授業を始めるのではなく本物で勝負!≠ナす。準備物としてナズナをいくつか持ち込みます。

 「これは春の植物です。みんなはどんな名前をつけますか」子どもの反応を確かめながら進めます。「これはナズナと言います。これを今から見つけてきてほしい。どこにあるかは秘密です」。子ども達は一斉に教室から飛び出し、ナズナ探しをします。「あった。ここにナズナがあった」。そんな元気のいい声が響きます。みんな必死に探します。やがて全員見つかったら教室に持ち帰ってナズナの身体検査をします。「ナズナには何がありますか」そんな発問をしながら根、茎、葉、花、実と言う言葉をおさえます。実の形がハート形であること、ナズナは茎の先に白い花があり、実が根に近づくほど大きくなっていることにも着目させます。やがて花が咲いたら実ができ、実の中に小さな種が十個くらいあることも見つけます。

 このように直接手で触りながら自由に思ったことを発表させることで個別認識を積み重ね、野草の見方をまずは初歩的な形で学ばせるのです。

 採集した野草は土植えして廊下に展示しておきましょう。野草探しをするとみるみるうちに種類が増えていきます。花の色や形、葉の形などに着目させながら野草を探し、そこからの学びを進める中で「先生、理科っておもしろいね」「またしよう」「これが理科なの」と子どもなりに感動してくれます。

 すべて雑草でくくっていた身の回りの草花に一つ一つちゃんと名前が付いているという事実は、子どもにとっては驚きであり野草に対する興味が一気に広がって行く出発点となります。その興味は地域で遊んだり散歩するたびに様々な野草の生育状況や小動物・昆虫との関わりにつながり、自分で発見する楽しさを知る中で、自然に対する興味を広げ次第に親をも驚かすようにもなるのです。

参考:「親子で開く科学の扉」3〜6年 文一総合出版

 
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