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青年教師のための お助け「玉手箱」 2

「「教科指導」実践「玉手箱」


創作中心の俳句の授業

         京都市立洛陽工業高校 中西 亮


(2006年9月10日)


 国語教師の多くが苦手としているのが、詩や短歌、俳句の指導ではないでしょうか。わたしが生徒のときにも、三十一文字の短歌を、二百字くらいの文章で解釈して黒板に書く先生が多かったように記憶しています。わたしも、詩や短歌などは、なにをどう指導したらよいのかいつもとまどいます。 言語には、ある事柄や思想を伝える働きと、表現することが目的になる場合の二通りあります。前者は論理性が重要ですが、後者は自由な発想や表現をします。生徒は論理的な文章が苦手なのに、意味が通じること、わかることに強くこだわります。

 評論や小説は読者と作者が分業であるのと異なり、詩は集団の中で享受され、読者は作者にもなります。そこで、詩形が最も短い俳句の創作を行うことにしました。授業で作った俳句は、作品募集に応募します。前年の受賞作品をみると、一見たいしたことがないので、もう自分が賞をとった気になっている生徒もいます。

 授業では、最初に、クイズ形式のプリントを使って、俳句の三つの決まりを説明します。一つめは季語です。春の雨、夏の雨、秋の雨、冬の雨は同じじゃないことに気づかせます。二つめは五七五、三つめは「切れ」です。俳句は「切れ」によって上下に分断されます。この二つの部分に論理的なつながりはありません。

 たとえば、「ひまわりは太陽のようだ」という一行詩を示します。ひまわりと太陽とでは組み合わせが当たり前すぎます。一方、「桜散るあなたも河馬になりなさい」(坪内稔典)だと、散る桜と河馬の間には何のつながりもなさそうです。しかし、よく考えると、二つがとても似合ってます。また、「詩のボクシング」を見せたりして、俳句は意味にこだわらなくてもいいと強調します。

  作句の当日は、固有名詞を入れないこと、と、パクリにならないことなどをはじめに注意します。人名・地名などを使うのは難しい上、他人を茶化したりする句になってしまうことがあるからです。

 作った句を友達と見せ合いっこしながら、自由に何句も作ります。たくさん作った中から二句提出です。全員提出できるのは集団の力でしょう。 提出した句は作者名を伏せ、プリントにして配ります。誰の句か想像しながら楽しく読みます。各人三句選んで発表させ、高得点句は講評をして作者を発表します。また、特に好きな一句の感想をカードに書かせ、作者に渡します。

 韻文は散文とは違います。伝達の道具ではない言語の豊かさも、生徒たちに知ってほしいと願っています。
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