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青年教師のための お助け「玉手箱」 5

「教育について学びたい」 理論編「玉手箱」
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府民の意見を反映する教育委員会へー実情を伝えることから始まる
──夜間定時制募集定員増のとりくみから──


京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会 事務局長 説田 三保

(2008年11月10日)



 京都市内の夜間定時制の募集定員は8年前の1000名から、昨年は450名、今春は440名と半減された結果、昨年42名、今春76名と多数の不合格者を生みました。京都市内の不登校中学生は982名(2007年度)、就職61名と発表されています。全日制中退者もありますから、予想されたことでした。「京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会」(略称:定通みんなの会・1995年4月発足・年会費千円・会員数140名)は、募集定員の削減が発表された直後から、府教委・市教委に削減の撤回を求めて申し入れを重ねてきました。毎年、定員を超える志願者のある桃山高校定時制の四十人削減した理由を、担当者は全日制の改変によるクラス増に伴う教室の確保のためと称し、定例教育委員会でも課長が同様の説明をしました。この暴挙を止めるには教育委員に実情を伝えるしかないと、私たちが例会や進路相談会でのゲスト(在校生や卒業生、保護者)の発言を収録し発行している文集『もっと知って!定時制・通信制』(2007年版)を提供したことで、大きな変化が生まれました。生徒の心情の一端が伝わったからです。

 私たちの申し入れが議題になる7月15日の京都府定例教育委員会を傍聴したのですが、3月、5月と申し入れと傍聴を重ねてきたこともあって、次々に意見が出ました。 委員:資料の『もっと知って!定時制・通信制』を一読して強く思うのですが、書かれていることを読む限り、ほとんどの子が学校嫌いで、普通の高校に入ってもついていけないか、受け入れられないのか、どちらの形で定時制に来ているのか、よく知りませんが・・・。夜間の状況も変わってきたようで、この話の限りでは、夜かならずしも行く必要が無い。広い目で考えれば、授業のスピードや先生の対応とか、もっと、ゆっくり、親切な学校が望まれているように思う。・・・もう少し抜本的に、昼間の定時制なども考えてはどうか。もう少し親切な高校や、朝からある定時制も、考えられないか。 委員:学校嫌いは小・中学校からはじまっている。小学校・中学校から落ちこぼれている。子どもの数が少なくなったのに問題が起きてきた。授業の進め方など小学校、中学校の対応も大事。・・・定員を増やすなどして・・・基本的には、その時点での対応が大事なのではないか。

 これは発言の一部です。とても同意できない個所もありますが、率直な発言に感動さえ覚えました。こうした経過もあって、7039筆の賛同署名を頂いた「京都の定時制・通信制教育を守る連絡会」の請願が報告された8月27日の定例会では、再度各委員から多くの意見が出されました。なかでも、「桃山定時制は、物理的な問題が解決されれば、募集定員は増やせるのか」との質問は、募集定員を決定する当日の発言だけに、委員の疑念の表れといえます。事務局も「定時制問題の検討委員会を立ち上げる」と発言するなど、変化が生まれてきました。また、全日制収容率は微増したものの、定時制募集定員増は実現しませんでしたが、今後に活きる課題も明らかになりました。一方、京都市教育委員会は申し入れや請願を委員会で報告せず、議題にもしていません。報告すべきとの規則がないことを理由にして、公式には情報を委員に隠していたのです。議題に挙げさせる運動と共に、規則制定が課題です。

 それにしても、不況下で経済格差が拡大している今日、「学び直しの学び舎」である夜間定時制の募集定員は、余裕をもたせるのが教育行政の責任です。

 以上、市民団体としての取り組みの一端を報告し、請願への賛同署名のお礼といたします。

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