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青年教師のための お助け「玉手箱」 5

「教育について学びたい」 理論編「玉手箱」
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学力テスト結果「これならもう要らない」
   「スーパーのちらし」の読み取りで学力はつくのか!?
                 滋賀大学教育学部 倉本 頼一

(2008年1月10日)



1、「これならもう要らない」学テ結果発表

 文科省は十月二十四日、四十三年ぶりに実施した全国学力テストの結果を発表しました。新聞では「得意の知識、活用は苦手」(毎日)「知識及第活用に課題」(朝日)と内容「A」(基礎)に比べて「B」(応用)が低かったと報道しましたが、これは予想通りの結果で、文科省の意図通りだったといえます。

 全国都道府県の平均点の順位発表は、地域点数競争を煽ったものといえます。「地域・経済格差が影」「秋田・福井が好成績、沖縄・大阪低迷」(朝日)「最下位沖縄失業率離婚率も高く」(毎日)文科省の発表でも「就学援助を受けている子どもの多い学校の成績が低い傾向がある」等、今日の経済格差が教育格差、学力差を生み出していることは、学テを実施しなくても自明のことではないでしょうか。

 これらの調査結果について、新聞の社説が「目的も活用も見えぬ」(京都)「これなら要らない」(神戸)と主張したのも当然といえます。


2、「スーパーチラシ」の読みで「学力」つくか

 「次は、今村さんの家に配られたお店のちらしです。よく読んであとの問いに答えましょう」「一、今村さんはお店のちらしの内容を友達に説明しようと思います。その説明としてふさわしいものを次の1から4までの中から一つ選び、その番号を書きましょう」

 これが学力テスト小学校国語「B」(応用)最後の問題です。結局「2.サンドイッチは、ふだんの一つぶんの金額で二つ買うことができる」を選べというのです。「B」の問題は全部で四題ありますが、1は「学級会記録」、2は「わくわく新聞」(かべ新聞)、3は「読書感想文二つの比較、4がこのスーパーのちらし」問題となっています。どこにも「物語文」「説明文」「作文」の教材も読みとりもないのです。このような問題で国語の学力がつくのでしょうか。


3、PISA問題と「学テ」内容は別物

 文科省は、03年の経済協力会開発機構(OECD)の学習到達調査(PISA)の結果「読解力低下十四位」にショックを受け05年「読解力向上に関する指導資料」を発表し「読解力」に力を入れるよう力を入れてきました。今回の学テの国語内容「B」も「PISA型だ」と宣伝していますが、形は似ていても、その内容は違っています。

 なる程小学校国語Bの3は二つの文を比較する問題ですが、PISAの問題が二つの「落書き」についての意見に対し読み手の考えを問うているのに対し、学テの問題は二つの「読書感想文」の「良い書き方」を求める問題です。PISAのいう読解力「リテラシー」は常に読み手の考えを文章で表現させますが学テは「二つの文」比較の形だけ真似ているのです。2の「わくわく新聞」のごみ問題も「わたしたちの身近なところからごみを減らす」「自分でもできる取り組みを書きましょう」と世界の紙・板紙の資料をあげておきながら「ごみ減らし」の「心がけ」に問題を矮小化しおています。PISAの問題は、常に社会との関わりを大切にした応用問題をテキストにするのと根本的に違っています。


4、学テ型学習内容重視の危険

 現在、京都府下各地で学テ対策が「学力向上」という名で強化されています。「うちの学校は平均点より低かった」「学テ内容と結果を分析して成績アップの取り組みを」と圧力が教師にかけられてきています。  国語教育の学力は「文学教育」「作文教育」「言語・説明文教育」の積み 重ねの中でこそ培われるものです。 (図は、学テ6年国語「B」より)

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