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青年教師のための お助け「玉手箱」 5

「教育について学びたい」 理論編「玉手箱」
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すべての子どもたちに高校教育を


           京都市立高等学校教職員組合 執行委員長 関 民夫

(2007年11月10日)



 九月三十日の京都新聞第三面下段に「ブルーベリーアイのわかさ生活」が「京都市の『子育て支援都市・京都』づくりを応援しています!」と称して大きな広告を載せました。「シリーズ『いま、京都から教育が変わる』全国をリードする京都市立高校改革」というもので、ご覧になった方も多いと思います。その広告のほぼ中央に「中学生のニーズに応える教育内容・入試システム」の見出しとともに「中学生の本来的な希望がほとんどない公立夜間定時制の定員を約三〇〇名相当減少」という記述があります。確かに、現役の中学三年生に進路の希望を聞けば最初から夜間定時制高校を希望する生徒はわずかしかいないでしょう。

 しかし、それでは近年、複数の夜間定時制高校で、入学試験の志願者が募集定員を上回っていることを説明することはできません。特に、二〇〇七年度の入試では、洛陽工業高校での夜間定時制課程の募集停止を含めて、京都市内で一三〇名もの夜間定時制課程の定員が減らされ、その結果、桃山高校定時制普通科の一・六倍を筆頭に西京、伏見、朱雀の夜間定時制課程で志願者倍率が一倍を超え、二次募集でも一二六名の募集に対して一七五名が志願し、最終的には五五名の不合格者が生まれました。

 このことは、「中学生の本来的な希望」がそのまま入学志願者数に結び付かないこと、ましてやそのことを理由にして夜間定時制課程の定員を減らすことなど許されないことを事実でもって示しています。

 そもそも、戦後、新憲法と教育基本法が制定され、「教育の機会均等」が謳われる中で新制高校は発足しました。特に、定時制課程と通信制課程は「希望するすべての人たちに後期中等教育を保障する」ために、様々な理由で全日制課程に通えない人たちのために新しく設置されたものです。決して本来的な希望を持つ中学生新卒者のためだけのものではないのです。現に、今夜間定時制高校には、経済的な理由で昼間働かなければならない勤労青少年はもちろんのこと、小中学生時代不登校だったために全日制高校へ行けなかった人たち、引きこもりなど様々な理由で全日制高校を中退した人たち、若いときに十分な勉学条件に恵まれず子育てを終えて改めて勉強を始めたいと思った高齢者の方たち、などなど様々な人たちが学んでいます。このような人たちがこの広告を見ればどのような思いを抱くでしょうか。この広告の製作に携わった責任者の方たちに強い怒りを覚えます。

 しかし、最大の責任は京都市教育委員会にあります。今、市教委がしなければならないことは、このような広告を使って夜間定時制潰しに狂奔したり、府教委と手を組んで恵まれた一部の生徒のためだけの高校入試改革を進めることではなく、戦後教育改革の原点に立ち返って、全ての生徒が高校教育を受けられるように行政の立場から制度保障をすることにあるのではないでしょうか。それができないというなら、もはや市政を変えるしかありません。

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