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青年教師のための お助け「玉手箱」 5

「教育について学びたい」 理論編「玉手箱」
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研究・実践を、歴史をつづり創造する方向へ

京都教育センター研究委員長  築山 崇



 教育基本法改「正」法案、国民投票法案とその先の憲法改「正」、共謀罪法案など、日本社会の構造、歴史の方向を大きく変える法案が集中している今国会。この文章を書いている時点では、会期延長がなく、これらの法案は継続審議となり、秋の臨時国会にゆだねられる可能性が高くなっているが、予断は許さない。ここで緊張を緩めることなく、この間の国民的な関心と運動の高まりを、さらに大きく確かなものにしていくことが求められている。

 それにしても、今、日本社会はどのような構造変動の大きな流れの中におかれているのだろうか?「官から民へ」の掛け声のもとで進む「構造改革」によって、公営事業や公立施設の民間委託(指定管理者制度という「丸投げ」も含めて)が大規模に進められている。しかし、そのことによって、人々の生活を支える諸制度・サービスが全体としてどのようなかたちになるのか、広がる「民」をコントロールしていく「新たな公」は見てこない。行政(公)が最終的に担うべきは「戦略本部」の役割で、具体的な施策・事業はことごとくアウトソーシング(外注、つまり民間事業者にゆだねる)という自治体イメージが狙われていると、神戸大学教授の二宮厚美氏は描いてみせた(日本社会教育学会6月集会での報告)が、これは、いわゆる「三位一体」改革によって、国(政府・中央省庁)の役割を、外交、防衛などに絞り込んで「小さな政府」をつくるというイメージと重なる。

 一連の「悪法阻止」の取り組みを、このような「構造改革」の大きな狙いの中においてみることで、「阻止」「反対」の運動を、「構想」「創造」の取り組みとして発展させていく道筋を展望していきたい。この思いは、平和憲法、教育基本法の理念にもとづくとともに、NPOの急速な増加や、暮らしのさまざまなニーズに住民の協同の力で応え、新しいかたちを創造していく活動の展開、その先に展望される新たな社会像のイメージを豊かにしていくことへの期待といってもいい。

 人類は、進歩と反動、抑圧と解放を行きつ戻りつしながら、より多くの人々が平和と民主主義のもとに暮らす社会を広げてきた歴史をもっている。 新たに生み出された社会的諸関係を、さらに作り変えていくという「否定」を契機として含んだ弁証法的な歩みを重ねながら。

 コスト削減を至上命題とする激しい合理化は、不安定就労の拡大を生み、若者から、社会への信頼と将来への希望を奪っている。医療費負担の増大は、高齢者とその家族に不安をひろげている。全体社会の変革放棄宣言とでもいえる「格差社会」という時代のネーミングは、より多くの人々から希望を奪い、人間不信を強める力を働かせている。

 そんな困難と新たな社会創造の胎動という時代状況の中で、分析や解明にとどまることなく、創造の力となる、研究・実践に力を注いでいきたい。 (初夏の美しい田園風景を新幹線の車窓から臨みつつ、この社会の平和と信頼に裏づけられた明日の姿への思いをこめて)

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