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「学力づくり」実践「玉手箱」


今日の算数はおもしろかった

               京田辺市立田辺東小学校  和気 政司

(2009年7月10日)


「今日の算数はおもしろかった」と言わせたい

 算数の授業では、教具をいろいろ工夫したりわかりやすいプリントなどを準備していますが、なかなか「おもしろかった」とは言ってもらえません。体育や理科の実験などとちがって、活動したから楽しいというわけにはいきません。新学習指導要領で強調されている「算数的活動」は大切ですが、活動させることが目的になっていたのでは、楽しくないと思います。子どもたちが一番楽しいと思う授業は、討論の中で事実を見つけていくことだと思います。


小数×整数の2時間目の授業



 子どもたちの意見は@とB半分ずつに分かれました。

@の意見の子どもたちは、位をそろえなければいけないと主張します。

Bの子どもたちは塾や公文などで、すでに筆算を習っているのですが、なぜBのように筆算を書くのか考えたことはありません。

 最初は位をそろえる@の意見が優勢でした。今まで、小数のたし算・ひき算で位をそろえることを指導されてきたのですから。しかし、しばらくするとBを主張する子の中から、3.12は3.12gだけれど、3は3gではないという意見が出てきました。

 実は、この前の時間に1.6×3の計算を1mが1.6gのアルミ線を3本用意して、実際に4.8gになることを上皿てんびんで測定しています。この活動を通して、数字が表す量を意識したのだと思います。

 ここで、形勢はBの意見に傾きました。



 次に@の意見の子が「Bが正しいのなら、Aでもよいのではないか」と言い出しました。Bでなければいけないと思っていた子どもたちは困ってしまいました。

 ここでいったん多数決をとりました。Aが正しいと主張する子はいませんでした。そして、@AB全ての方法で計算して見ました。どれでも、9.36という答えを出すことができます。  次に、1.25×4という計算をさせました。




 さらに、1.25×200という計算をさせました。

 @を主張していた子が「Bの方がやりやすい」と言いました。そこで、私は「どのやり方でもまちがいではありません。Bは今までの筆算と同じ方法で計算できるから、計算しやすいだけなのです」と、教えました。「算数の答えは一つとは限りません」また、「絶対にこうしなければならない決まりがあるわけではありません」ということも教えました。


算数の指導をゆっくり・ていねいに

 今、私の学年は少人数学級で編成されています。このような討論が成立するのも、子どもたちの人間関係や教師との関係も大きいと思います。今盛んに言われている「国語力」というのは、子どもたちが考え、意見を出し合う授業のことではないかと思います。少人数授業では、考えを出し合うことより、1時間で隣のクラスと同じ所まで進むと言うことが第一の課題にどうしてもならざるを得ません。少人数学級の良さをもっと生かした授業の工夫を続けたいと思っています。

 いつも算数の授業は学年の先生と一緒にできるように教材を用意しています。教科書も意識しながら、あまり特別な方法ではなく、親にも先生にも納得してもらえるようなプランを考えるようにしています。しかし、新学習指導要領では、指導時間の充分な保障もしないで、内容は前々回にほぼ戻してしまいました。私たちは、前回の3割削減を批判してきましたが、今回の方がもっと危険な気がします。ゆっくり、ていねいな算数の授業ができなくなることが予想されます。父母にも理解してもらえる算数科の自主編成を早急に考えないといけないと思っています。

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