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青年教師のための お助け「玉手箱」 1
「学力づくり」実践「玉手箱」
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教育の目的は「人格形成」
福知山市立大江中学校 大島 辰哉
(2006年7月10日) |
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未来を担う主権者を
学校教育が進学率や学力テストの点数を競い合い、急速に「学力」偏重の「歪んだ方向」につき進まされようとしている。
教育の目的は「人格形成」にあると思っている。
人格とは@社会性(人と人との関係をつくる力)A人間の尊厳(人を大事にできる力)B社会認識(人と社会との関わりを考えられる力)C「学力」が大きな要素と考えている。@ABを抜きにした学力では、「生きる力」に繋がらず、未来を担う主権者を育てることにはならない。信頼関係を基盤にした人格形成こそが「困難に満ちた」今の社会を生き抜く確かな力になると信じている。
修学旅行での平和学習
ここでは人格を培う取組の一つとして、修学旅行のことについて述べることにする。
大江中では3年前に「教育課程の見直し」の中、行き先を東京方面から長崎・熊本方面に変更した。内容的にも、人権・平和学習を大きな柱にしている。また、福知山市が島原市の姉妹都市ということもあり、台風23号の大洪水で甚大な被害を受けた町として災害についても学習を深めている。
事前学習として二年生の三学期より、生徒各自が身近な人から戦争体験の聞き取りを行った。協力してもらった方は、ほとんどが高齢で、中には封印していた戦争の記憶を、孫が真剣に聞いてきたことで絞り出すように語ってくれたお年寄りもあった。
聞き取った歴史の事実、感じたことを冊子にまとめ、終学活を利用して読み合わせ、みんなでそれを共有してきた。戦争や平和の問題が遠い世界のことではなく、身近で自分自身に繋がる大事なことだいう認識が広がった。
被爆者から学ぶこと
作家である大江健三郎さんが『原爆のことを学習することは大きな意味がある。そこには被害者ということだけではなく、加害の問題につきあたる』とおっしゃっている。その視点においても長崎で平和学習をする意義は大きい。長崎の地において被爆者の方の講話を聞いた。セレモニーで大江中平和宣言を行った。講話は「赤い背中」で知られる谷口稜曄さんにお願いした。「私の話を遺言として聞いて欲しい」という言葉が生徒の心に重く響いた。
話を聞いた生徒の一人は「私は歴史が苦手で『何で昔のことを知る必要があるのか』という事をいつも疑問に思っていました。でも谷口さんの話を聞いて、昔のことを勉強してもう一度歴史をくり返さないようにしていかなければいけないということが分かりました。
原爆によってたくさんの方が亡くなられ、今でも放射線で苦しんでおられる方がいるという事実を心に留め、どうすれば世界中の戦争をなくすことができるのかみんなが笑顔で過ごせる世界になるのか考えていきたい。そして世界中の一人一人が平和について考えられる世の中になることを願っています。」と感想を書いてくれた。
修学旅行の取組を通して子どもたちの認識は劇的に変わった。人と人との関わり、自分と社会との関わりを真剣に考える大きなきっかけとなったと思っている。(学年2クラスの学校での学年実践として書きました。)
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