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青年教師のための お助け「玉手箱」 1

「学力づくり」実践「玉手箱」

学力づくりを「一斉授業の復権」で

久保 齋(京都市金閣小学校) 2006年5月1日


 私は、日本の教育は世界に誇る二つの宝を持っていると思っています。一つは、江戸時代に寺子屋でつくりあげられた「読み・書き・計算」の技であり、もう一つは日本の教師が明治以来百余年間、営々と築き伝えあってきた一斉授業の技です。これらは庶民の中に「均質で広範な学力」を形成し、明治維新の文明開化や戦後の復興の力となりました。これらの力を保障してきたのが、学校教育における一斉授業の技なのです。私は、「生きる力・新しい学力観」を打ち出したこの十年間は「授業崩壊の十年」であったと考えています。そのもとで、子どもたちがばらばらにされた「がさつな授業」を打ち砕き、「凛々しい個別化」と「豊かな交流」が保障される一斉授業を復権、再生しなければなりません。そのためには、二つの視点が大切です。一つは、学習評価を授業の中に位置づけることです。これは到達度評価で授業を変えるという視点で研究を深めたいと思います。もう一つは、ヴィツキーの「発達の最近接領域」の考えで模倣と共同の観点から一斉授業を吟味し、班活動の意味や豊かな交流の教育的意義を検証します。

 教師は自分のクラスを分析し、学びの共同がクラスに実現しているのか、学力による差別の荒野なのかを見てとる力が必要です。子どもが荒れるのは教室が差別の荒野になっている時で、いきがっていても明らかに弱者である荒れ、傷ついた子になおも塩をなすりつけるような授業をしていないか。本来、子どもにとっては授業ほど心地よいものはない。なぜなら学習行為は褒められることに満々いる。子どもは授業以外ではほとんど褒められることがなく、いつも親の小言、教師の小言・注意ばかりの生活を強いられている。  私の授業づくりプランをまとめると次のようになります。

1.教師の教え:教師の語りと模倣の準備
2.頼りになるのは「お隣さん」:共同と多様な模倣(子ども語による模倣)
3.凛々しい個別化:形成評価で学習の通過点を個々に把握
4.豊かな交流:学力の社会性に気づかせ、集団思考により深い認識へ
5.「今日学んだこと」:学習したことを文章化し発表する。友だちのまとめと教師の評価を聞き、自分のまとめを比較し深める。

 私は、「板書、発問、ノート指導」を一斉授業の「三種の神器」と位置づけています。その技を子どもたちに一生の宝として身につけさせるとともに、それを通して「読み・書き・話す・聞く・考える」の学習能力を活性化させ、学習規律を高める授業をめざしています。

 前任校の新林小学校での6年間の実践から学んだことを、次の三冊の本にまとめさせていただきましたのでご参照下さい。

(子どもの未来社発行) ・『学力づくりで学校を変える』 ・『学力づくりで子どもが変わる』 ・『一斉授業の復権』  

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