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特集 1 今こそ主権者教育を!−18歳選挙権時代を迎えて−

青年インタビュー

18歳選挙権時代を迎えて−青年の思い、願い−


    「ひろば」編集委員会
 

 A=はるひと君 (高校3年生)
 B=しんじ君(大学1年生)
 聞き手「ひろば」編集委員会


── 7月の参議院選挙で、18歳選挙権が行使されました。選挙権を初めて持たれたお二人に思いを聞かせていただこうと思います。全国的にみると成人の投票率は50何パーセントでしたが、18歳以上は45パーセントで低かったですね。投票に行かれましたか。

A 僕は行きました。

B 僕は地元が大阪で、大阪に住民票をおいていたので、大阪で期日前投票に行きました。

── 投票へ行こうと思われた理由はなんですか

A 僕はスクデモというグループに入っていて、そこで政治の話を聞き、自分が思っていることから政治をみて、こうなってほしいという思いで、街頭演説とかを聴きに行ったりして、この人やったら自分の思いに近いし、投票しようかなと思ったんです。

B 僕は今の政治に対してちょっとおかしいなと思っているところがたくさんあって、去年の戦争法の問題もそうですし、高すぎる学費の問題や、すごく身近なところに焦点があった選挙だと思います。18歳選挙権ということで、政党の方も、候補者の方も、若者向けの政策ということを考えてくださっているとは思うのですが、その中で今の自分たちの暮らしを少しでもよくしたいと思って、そのためには選挙で変えていくのが一番の道かと考えて投票に行きました。

── 街頭演説に行ってちゃんとお話を聞いて判断したんですね。主な情報源というのは?

A 街頭演説と地域にまかれたビラを見て判断しました。

B 新聞やテレビは党首討論とかは見ました。

── SNSなどから情報を得る若者は多いようですが、そのへんはどうですか

B SNSをみても、大事なのは誰が言っているかというところだと思うのです。匿名で好き勝手言っている人もいますが、そういうのはあまり信用できなくて、例えば候補者がつぶやいていることとかだったら信用できるかと思いますけど、僕自身はあまりSNSをみてなくて、インターネットで言えば政党の公式サイトはチェックするようにしています。結構、工夫がしてあっておもしろかったです。

── さっきのBくんの話で言えば、身近なことが争点になっていてわかりやすかったという話だったけど、投票するときの基準は何でしたか。

B 一番大きいのは企業の問題ですね。本当に今、ブラック企業が多いと言われていますけど、それは何も今にはじまったことではなくて、ずっと積み重ねでできてきた企業があり、労働者側はひどい働き方をさせられている。僕は大学でキャリア教育というのがあるのですが、将来、社会に出たときにどういう心がけをもつのかみたいなのがあって、精神論みたいなのがかなり押しつけられていて、そういうのを変えていこうとしたら、大企業とべったりな政党には投票できないと思って、ちゃんとどんなに大きな企業でもモノが言えるような政党に投票したいと思いました。だから企業献金とか、注目しました。

A 僕は大学に行かずに卒業したら就職という道を選んでいるので、自分の中ではやはり賃金の問題や、労働基準法、派遣の問題で決めました。

── 政治的関心を持つきっかけはなんでしたか。

A 僕は去年の安保法制から、これはおかしいやろうと思って政治に興味を持ちました。それまではノホホンと政治にまったく興味がなかったのですが、国会の委員会をテレビでみて、あの決め方はなんやろう?という疑問を抱いて、安保法制ってなんやろ?って調べたら、自衛隊が海外に行って戦争するという情報や、僕たちが経済的徴兵制というので自衛隊に強制的に入れられて海外に行くというのを聞いて、他人事ではないなというのを一番に感じて、それから興味をもったというのが最初ですね。

B 僕は秘密保護法のところからですね。今までずっと平和で、そんな平和な社会であるのが当たり前だと思い込んでいた中に、突然、安倍政権というのが誕生して、その時点で治安維持法とまで言われて、国民の知る権利を奪うような法律ができてしまって、これはまずいんじゃないのというふうに思っていたら、7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定があって、これはもういよいよ戦争する国になってしまうのかなと、それは本当にイヤだなというふうに思ったんですけど、でも、ふとテレビをみてみると、そう感じている人が僕だけじゃなくて、同じような年代の人たちが立ち上がっていて、今までもそういうことがあったのかもしれませんが、僕は知らなくて、若い人はみんな黙っているもんだと思っていたときに、新しい運動がさかんになって、そういったところがきっかけです。

── 学校の中では18歳選挙権が行使されるようになるというときに、それに関する授業とか、学習とかはありましたか

A 僕の学校は、18歳選挙権は3年生だけで、政治的教養を養う授業というのがあって、1回目は先生から、2回目は京都の弁護士さんから講演を聞くという授業があったんですけど、実際は中身はなかった。議員内閣制がどうのこうの、若者は支持率が低いということを一方的に言われて、最終的には選挙に行きましょう、ということで丸く収められた。別に授業があること自体はいいことだと思うのですけど、おもしろくない授業をされて、「それで選挙に行こう」と言われても行く気にならない。

── 先日「教育のつどい」で、「18歳選挙権時代を迎えて」というフォーラムがあって、そこで名古屋大学教授の中嶋哲彦さんが「制度的政治参加」と「非制度的政治参加」があるというお話をされました。「制度的」というのは法律で定められた範囲の有権者が予め定められた様式に従って、一斉に意思表示する形態で行われる政治参加。いわゆる投票ですね。「非制度的」とは、例えば政治的意見の表明を目的としている集会やデモ、政治的テーマの学習会や討論集会などの企画や参加、多様な形態の組織的活動や個人的行動のことを言い、これがすごく大事だというお話をされました。これまでも学校や家庭などで社会とつながりのある行動や話をした経験はありますか。

A 家の中で政治の話とか話題になることは全然ないけど、結構、前に1回だけ親に投票所に連れて行かれたことがあったけど、家で政治に関わったのはそれぐらいです。

── 戦争法が通って「いよいよ戦争する国になってしまうのは危ないぞ、と思った」とさっき言われましたね。例えば、家で戦争体験を聞いたり、「戦争は二度とあかんぞ」という話をしたりはしませんでしたか。

A おばあちゃんの家に行ったときは、戦争の話を聞きました。「大阪で空襲があって、こんな感じやったんやで」という話は何回か聞いたことはあります。

── 学校ではどうですか。平和の問題とか、自分たちの日常の生活の問題とか、暮らしの問題とか。

A 戦争はダメとか、ブラック企業とかの問題は話には一応出てくるのですが、それと政治が結びついていない。

── 学費は高いという話はあるんじゃないですか?

B ありますね。例えば学費とブラックバイトの問題はつながっていると思うのです。学費が高いから親の仕送りだけでは生活できないから、学生の自分も働かないといけない。奨学金を借りないといけない。そして働いた先がどんなにブラックであっても生きていくためにやめられない。そういった状況におかれている学生もたくさんいるので、自分がどれだけひどい働かされ方をしているか、という話題も友だちと話しの中でも出るのです。「何連勤や」とか、「店長がひどい」とか、でもそれを政治の問題として捉えて変えようという意識はなく、だから友だちの間で、話を聞いて、それは政治の問題だよ、ということをどう伝えていけるかなと。

── 私は「子どもの権利条約」について勉強していますが、子どもでも自分の思いを言い、それを受けとめてもらえるような、権利があるんだということを「子どもの権利条約」では言っています。学校の中を自分たちが過ごしやすくするために、児童会や生徒会で、自分たちで話し合って決めていけるように、本来はあるべきなのに、そういうのがだんだんと少なくなってきているように思うのですが、どうでしたか。

A 中高の生徒会は、いろんな生徒からの意見はでるのですが、基本的に、先生に言えば「そんなことはダメ」と拒否され、最終的に意見を言うことをあきらめて、現状維持でただやっているという感じで、生徒の意見をとりあげるということでは機能していない。生徒会長と書記は、全生徒で一応決めるのですが、他の補佐とかは自由に入れたりするんで、履歴書に書けるからそのために入ったという人もいっぱいいます。実際、生徒会がやりたくて入った人もいるんですけど、自分たちがこうしたいと思って、それを先生に言ってもほとんど否定され、それでだんだんと生徒会としての役割が下がっている。僕の学校の文化祭は、今、生徒と生徒の保護者しか入れないのです。それで今、生徒会が「他の学校の生徒や地域の人たちにも入ってもらえるようにしよう」と言っているのですが、学校側が「もし、不審者が来たらどうするんや」という現実味のないことを言って否定されることが多いですね。

B 僕は生徒会とかがすごく嫌いで、生徒会というのは先生を補佐する機関でしかなくて、ただ先生の手伝いをしているだけ、言われることをしているだけなのに、あれ投票で選ばれるのですよね。投票があって、ちゃんと前に出て、全校生徒が体育館に集まって立候補した人が前に出て、「私を選んでください」みたいな話をするんですよ。自分たちの要求が実現しないのに、公約も何もあったもんじゃない。だから人柄とか、そういったアピールになってしまう。それで人気投票で選ばれて、学校の先生を手伝うという、それだけの機関なのに、生徒会だの、児童会だのという名前を付けて、先生としては「これが民主主義だ」みたいなことを言うわけです。「投票行け」「投票行け」と言って、「投票率は9割もあったからうちの学校は民主的」みたいなことを言うわけです。そういう姿勢が、国政とか政治の場から人を遠ざけているのではないかと高校の頃は強く思っていましたね。

── 「子どもの権利条約」の精神をもっと大切にしなければいけない学校が、管理的なことで生徒をしばりつけているということは、大きな問題ですね。その波に流されていては世の中、変わらないし、せっかく18歳選挙権が行使されるようになったんだから、若い人たちが、いろいろ考えて行動していくような京都であってほしいと思っています。そうなっていくためには、何が欠けているのか、どういうことをしていったらいいのか、学校に対してももちろんだし、まわりの私たちも含めて、そして自分自身が何をしたらいいかということも含めて、思っていることを話してくください。

A 学校に求めること。僕が一番思うのは、高校で政治的な授業をやったんですけど、僕はもともと関心があったから、聞くことができたんですけども、他の人たちは無茶つまらそうに聞いている。それはなんでかと言えば、中学校の公民とかで政治の勉強とかするときに、他の授業に比べて政治っておもしろくないんですよね。そういうところからもつながってきていると思いますし、いきなり高校で「選挙へ行け」と言われても、行く気にはならないと思う。やはり小学校、中学校のときから、模擬投票とかやったほうがもっと政治に興味をもつ人も多いのではないかと思います。さっき言われた非制度的政治参加ということで、どこの政党がどういう主張して選挙とたたかっているのかというのを知らずに、「とりあえずここに投票をしておこう」という人がいました。みんな「投票しよう」「投票しよう」とゆうけど、僕は逆に全然、政治に興味なくて適当に投票しているのなら投票しなくてもいい、という側で、ちゃんと自分の意見をもって、どこの政党がどういう主張をしているかを知った上で投票してほしいと思いました。ただそれは自分で調べないと出てこない情報で、そこらへんをもうちょっとわかりやすいようにしたいと思います。

B もうちょっと主権者教育というものに力を入れてほしいなというふうに思って、結構、今、真逆で、高校生のところがデモとか、非制度的政治参加するのに対して、制限を設けたり、許可制にするという学校もあって、そういった流れは18歳選挙権や子どもの権利条約というものに逆行しているというふうに思いましたし、非制度的政治参加を促すことが必ずしもデモに参加するだけではなくて、学校の中でもできると思う。それが制度的政治参加への敷居を低くするのではないかと思いました。

── しっかり考えて政治に参加する人を増やしていくことですね。せっかく制度的政治参加できるチャンスを与えられたのに、それを行使してない人もたくさんいました。

A 投票所が駅にいく方向と真逆で遠い。僕は学校へ行く前に投票に行ったんですけど、投票所に行って、そこから駅に行ったら40分ぐらい歩かないといけない。もうちょっと駅の近くなど、便利なところにしてほしい。期日前投票も僕のところは市役所しかやっていないし、その市役所もまた遠いんで、投票に行きにくい。

── 18歳選挙権が行使されて、全国では240万投票できる人が増えました。投票に行きやすいようにすること、情報が伝わること。主権者教育に力を入れていくことと、生徒会など、自ら考え、行動する子どもたちを育てていくことは学校の課題ですね。きょうはお話をいっぱい聞かせていただいてありがとうございました。

 
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