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情勢ナビ 沖縄米軍基地問題

高江のヘリパッド建設強行と高裁判決の酷さ


    長堂登志子(沖縄県民間教育研究所所長)
 

 今安倍政権は高江のヘリパット建設を強行している。ひた隠しにしていたオスプレイの訓練用ヘリパッドの増設だ。すでに米軍に先行提供された2基のヘリパッドでは、オスプレイが夜間を含め、激しい訓練を行っており、夜間の騒音が激増し、眠れない子どもたちが学校を休み、ついに大好きな家を出て隣村に住まざるを得ない事態になっている。高江の集落を取り囲むように6基のヘリパッドが完成すれば、騒音や危険性への不安からすべての高江住民が住めなくなることが予想される。ヤンバルクイナやノグチゲラなど貴重な動植物が生息する、世界でも稀な生物多様性を誇る「やんばる」の森が破壊される。負担軽減と言いながら、いらなくなった土地を返し、米軍基地機能の再編強化であり、辺野古とまったく同じ構図である。

 高江はまさに戦争法最前線の様相を呈している。10万以上の大差で現職の沖縄担当大臣を敗選に追い込み、伊波洋一さんの勝利で沖縄の「新基地いらない」の民意を再度高らかに示した。しかし安倍政権は参議院議員選挙の結果に関係なく高江の工事の再開を7月11日早朝から開始した。それも神奈川、大阪、愛知、北九州、東京から500人の機動隊がかまぼこ車と一緒に高江に押し寄せ、県警も合わせると1000人近い機動隊が一斉に県民の弾圧を始めた。9年間N1のゲート前に座り込み闘いを続けてきたテントを跡形もなく除去し、大型ダンプは砂利を積んでどんどんと森に入っていく。それを止めようとする県民からダンプを守り、森にダンプを入れ、作業員を入れ森の破壊に手を貸しているのが機動隊だ。最近は森の木々を何の許可もなく、何千本と切り倒している。森がまさに悲鳴をあげ、泣き叫んでいる。民間ヘリを使い、さらに自衛隊ヘリも使って重機を空輸し作業を着々と進めている。

 安倍首相は9月26日の国会の所信表明演説で地元がこれ以上の基地は負担だと何度も訴え、選挙でも民意を示し続けているのに、ことさら数字を挙げて「負担軽減」だと言い、問答無用で押し付ける演説をした。その上海保・警察・機動隊の働きに敬意を表そうと拍手をし、自民党議員は立ち上がってまで首相に応えている。大嘘がまかり通り、「沖縄の未来」のためと日本人を洗脳する。まさに帰ってきた亡霊ヒトラーの手法である。この姿勢とまったく同じことが司法の場でも起こった。9月16日の高裁は「県敗訴」の判決を出したが、証人申請をすべて却下し、被告の翁長知事一人の意見陳述で幕引きし、結論は全く国側の主張通りであった。「矜持と良識」をかなぐり捨てた三権分立破壊の姿を多見谷裁判長は見せつけた。翁長知事も「一方では軍事的な面について踏み込んだ判断を行い、他方では自然環境面については一切考慮しないなど、裁判所がこのような辺鄙な判断を行ったことは驚きを禁じ得ない」と言い、上告に踏み切った。沖縄の闘いは日本の民主主義の闘い。負けるわけにはいかない。


 
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