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私と京都

  中蘇 杰(ソ ケツ)(京都大学 経済学研究科経済学専攻)
 

はじめての海外

 あなたにとっての初めての海外は何処でしょうか?

 其処に行って、どのように思いましたか?

 私は昔から日本の大ファンでした。アニメから漫画、エッセイからミステリ小説、ドラマからお笑い番組、ポップミュージックからオーケストラ、浮世絵から書道…私はあらゆる日本のすべての文化に興味を持っていた。気づいたら、初めての海外でさえも、日本にした。

 日本への留学が決まった時、選択肢はたくさんあった。けれど、当時の私には、行くべき場所は京都しかなかった。


どうして京都に来ましたか?

 一番よく聞かれる質問です。

 最初に関心を抱いたのは、森見登美彦さんの「有頂天家族」を読んだ頃だった。森見先生の書いた文字を通して、私は京都に居るような錯覚を感じた。昔ながらの街並み、可愛らしい京都弁を話すお姉さま、静けさが染み込んだ路地裏、辺り一面に広がる自然風景…私は彼の文字にある京都に恋をした。それが私の京都を選んだ理由だ。

 現在は京都に来た初日から、もうほぼ3年が経ったが、自分の中では、京都に来てよかったという感想しか持ってない。最初人見知りだった頃の私が、今のように新入生の前でパフォーマンスをしたり、サークルの仲間たちと合宿に行ったりとかができることを、きっと想像すらもできなかった。一つの国でゼロから人間関係を築くのは難しい。けれど、その難しさが後から懐かしさや誇りになることもある。そして、このような誇りや感謝の気持ちを与えてくれたのも全部このやさしい街だ。

どの時がいちばん喜んでいましたか?

 日本で過ごした初めての誕生日は、一人ぼっちだった。「日本に来てまだ間もないし、友達もそんなにすぐできるものでもないし」と一人で鴨川を眺めながら、自分を慰めていた。

 けれど、驚くほど、その後京都のいろいろな外国人応援サークルの皆さんに出会えて、繋がりがだんだん広がって、気づいたら週末でさえも、殆ど一人で過ごすことなく、いつも皆に囲まれていた。そして二年目の誕生日があっという間に訪れてきて、二人の親友を中心に、皆がサプライズパーティーを用意してくれた。自分は驚き過ぎて、涙も笑顔も何一つも反応できなく、ただひたすら皆のお祝いを受け止めていた。

 ふっと、心の底から「日本に来てよかった。皆と会えてよかった。私は今人生の中でいちばん幸せを感じている」という嬉しい叫びが聞こえてきた。
 そして、「皆、本当にありがとう」と言いながら泣いている自分がいた。


お勧めの場所がありますか?

 京都と言えば、鴨川だと思っている人が多いだろう。私も最初はそうだった。床の下に流れる水音、そしてその水に伴って伝わってくる風、時々聞こえてくる楽器の歌声、まさしく雅京都の典型的代表。けれど、ある些細な出来事で、私のいちばん好きな場所を河原町に変えた。

 それは、日本に来てからまだ半年しか経ってない頃だった。ある日、急に先生からとあるスペイン人留学生の世話係を頼まれた。その人と会って、真っ先に聞かれたのは「私、京都の街風景をいっぱい撮りたいので、河原町に行きたい。道案内をしてくれないか」というやや強引な話だった。当時の私は一度も京都の繁華街に行ったことがないため、非常に迷っていたが、初めての世話係という役目を全力で務めたいという一心で、私は考えた挙句「はい、喜んで」って応えた。今から思えば、その一言が私の京都に対する認知を変えた肝心な一言だった。

 そこから河原町に向かったら、今まで知っていた自然しかない京都と違う風景に出会った。それは想像外に賑やかで活き活きとしている街だった。人が皆何かに惹かれているように、前に少し急ぎ足で歩いていた。路地裏から時々飛んでくる甲高い笑い声が私たちを誘って、入ってみたら、自然と現代文明の結合物がそこにあった。そして、目の前の景色に捕らわれた時、遠くから囁いている水の音が聞こえてきた。「実に素晴らしいところです。想像以上に自然と建物がうまく噛み合っていて、自分が思った以上の写真を撮ることができた」とスペイン人の彼が大喜びしていた。

 それを際に、私は自分の中のいちばん京都らしい魅力を見つけた。それは「現代と古典の共存、歴史と今とのハーモニー」のような街風景だった。


これから京都に来たい人たちに
 
 京都という街は、静かで、元気で、優しくて、強くて、美に満ち溢れている街。あなたがもし夢の中の日本と出会いたかったら、是非お越しくださいませ。あなたが知ろうとしている古今共存の日本は、ここにある。

あなたにとっての初めての海外はどのような場所でしたか?

私の初めての海外はすごく優しくて美しい場所でした。

京都に出会えて、本当によかった。

 
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