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いきいきセカンドライフ

地域と共に生きる

  浅井 定雄(山科区・退職教職員)
 

 退職してから地域でどのように暮らしていけば良いのか、地域でどのような役割を果たしていけば良いのか、というのが私の問題意識です。地域の中には「格差や貧困の広がり」の中で、日々の生活に追われ、また生育歴の中で教育や政治教育がまともに保証されなかったために、現在の政治に関わることから「疎外」されている方々が多くおられます。豊かで幸せな生活や社会を願いつつも、ゆがんたマスコミ報道の中で、社会が良くなることを諦めたり、社会を良くする方法を間違って理解されておられる方々も多くおられます。そんな中で、自分は地域のために何ができるのか。退職した時点では、私は「地域の一住民」であること以外、それ以上でも、それ以下でもありませんでした。地域の中では、やはり「孤立」した一人でしかなかったのです。

 そこで、私はまず、「地域のリーダー」たちが、どのような人であるかを観察することから始めました。結論から言いますと、自治連・町内会・自治会の会長、あるいは各種団体の長を務める人たちには、ある共通の特徴があったということです。それは、「地域を良く知っている」ということです。これはまた、地域のリーダーとしての必須の条件でもあります。地域の何を良く知っているのか、それは地域の「地理・歴史・人間」を良く知っているということです。だから、退職教職員が、地域で一定の役割を果たそうと思えば、まず地域の「地理・歴史・人間」を学ばねばなりません。

 そこで、私がはじめたことは、地元の地理、郷土史を学ぶことでした。図書館や資料館にも足繁く通い、地域を歩いていろいろな人に話を聞きました。初めは「どこの馬の骨か」「何を詮索しているのか」と不審の目で見られましたが、思いが伝わると、やがてそれは暖かい目線に変わっていきました。自分のことや、自分の地域の事の話を聞いてもらえるというのは、本質的に「うれしい」ことなのです。

 そして、それを本にして、出版をしました。地域からの反響はあまりにも大きく、3ヶ月後には第二版を出すほどになりました。そして、ある人が「本の出版だけで終わらせるのはもったいない。これを“まちづくり”につなげよう」と提案してくれて、同年に「ふるさとの良さを活かしたまちづくりを進める会(略称 ふるさとの会)」が発足し、私は事務局長になりました。2007年に30名で発足した会は、現在300名の会員となり、山科区全域にネットワークを拡げています。

 「地域と共に歩み、地域と共に生きる」人間になること、これも退職教職員の一つの生きる道ではないかと思っています。少なくとも、現在社会の抑圧の中で苦しんでいる「声もあげられない」人たちの願いを受けて、その願いに寄り添うことはできるのではないかと感じています。

 
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