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連載 生き生きセカンドライフ
東洋医学(中医学)の奥深さに触れて


* 松橋 秀男(京都市内退職教職員)
 

 組合専従役員していた者が退職後、「ケーシー(白衣)を着て何かしているらしい」ということで、今回の原稿依頼があったのだと思います。母親の認知症が進行して余儀なく定年より1年早く退職させてもらいました。退職を決意した時に、鍼灸師をしている娘から「1日中介護は大変だから、夜に勉強でもしに行ったら」と、鍼灸理療専門学校の追加募集があることを教えてくれました。以前から鍼灸や東洋医学に興味があったのですぐに応募し、3年間の学生生活が始まりました。夜間のクラスは、昼間バイトをしながら通っている若者が多く年齢層は高いのですが、さすがに60歳を超えた者は私一人でした。

 彼らはとてもモチベーションが高く、国家試験に合格し資格を取って開業したいという思いが、真剣な学習態度に現れていました。免許が取れなくても、「年金生活をしながら楽しく勉強しよう」などという思いを改めさせられました。はじめは、実技中心の講義が多いと思いきや、2年間は一般教養や現代医学の講座が大半で、中でも解剖学・生理学・病理学など、保体教員になるために大学で学んだことが、如何に浅いものであったのか思い知らされました。大げさに言うと毎日が「目から鱗」の連続。同時に新たな学習意欲が沸き起こり、今までにない学ぶ喜びを実感しました。専門学校の良いところは、国家試験は合格点を取れば全員資格を取れるので、競争するのではなく、みんなで助け合いながら勉強することでした。役に立つ資料や情報を交換して、みんなで共有していました。 しかし、一方で楽しいだけでなく脳の老化を思い知らされたことも事実です。覚えたことが頭に定着しないのです。全く基礎知識がない専門学科や300を超える経穴(ツボ)名を覚えることは大変でした。中医学は、数千年の時を経て体系化された医学であり、内臓疾患をはじめ病気治療として、鍼・灸、漢方薬(湯液療法)医療が行われています。しかし、中国哲学(宇宙観・人体・自然観)の上に体系づけられてきたため、現代医学の観点で見ると理解しにくい内容が大変多く、鍼灸理論もなかなか分かってもらいづらい所があります。ギックリ腰なのに手の甲に鍼をさしたり、胃の調子が悪いのに足に鍼を刺す等など、なぜと聞かれても説明に時間がかかります。しかし、少なからず効果を発揮します。そのことが楽しくて、今でも実技講座などに参加しています。肝心の仕事ですが、当初疲れ切った現職の先生たちを治療出来ればと思っていましたが、治療を受ける時間さえないのが実態のようです。いまは、地域の方や知人からの治療依頼は、基本的に鍼灸師を生業にしている娘が主に治療をしています。私は、退教の組織や各種団体主催の健康教室などで、ツボ押し健康法などの講師をすることが多いです。もっともっと学んだことを皆さんにお還ししたいのですが、社会を良くするための地域活動の方が忙しいのが現実です。

 
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