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特集1 これでいいのか、京都市のまちづくりと教育
●総論 子どもを真ん中に新しい京都市政を!



(2)地域コミュニティの核としての学校再生を

                 中野 宏史之(京都市教職員組合)

 

はじめに

 京都市では、一九八十年代後半から、大規模な学校統廃合がすすめられました。その多くの学校は、明治五年の学制発布以前の明治二年に京都の町衆が自ら資金を出し合って開校した「番組小学校」です。この大規模統廃合を京都市教委自身、全国に例を見ない「京都方式」の学校統廃合と賞賛しています。「京都方式」とは、地域の要望に応えて統廃合を実施するというものです。しかし、昨年来の京北地域の状況を見ても明らかなように、京都市(京都市教委)主導で、住民の声を無視して強行するもので、将来に大きな禍根を残しています。


許されない学校跡地の民間利用

 そんな中、京都市は学校跡地活用を教育委員会から市長部局に変更しました。そして、今年になり学校跡地の活用を民間企業に丸投げする計画募集を開始しています。これは抜本的な方針変更で大問題です。第一に、そのことが地域住民全体に全く知らされていないことです。地域では驚きの声があがっています。第二に地域コミュニティーの核としての役割が保持できるのか大いに疑問です。廃校になった学校は、区民運動会、お祭りなどの地域行事を実施しています。さらに、地域スポーツの拠点として活用され、防災上は避難所となっています。ブライダル施設やホテルになってこれらの機能が維持されるのか大きな問題です。第三に御所南小学校の例(春日小学校跡地に新たな小学校建設)を見れば明らかなように、将来学校として復活しなければならない事態もあります。学校跡地の利用は五十年、百年単位で検討する課題です。


安倍政権の教育リストラ路線のお先を担ぐ市教委

 安倍政権は、今年一月、六十年ぶりに「公立小学校の適性規模・適性配置等に関する手引」を「改正」し通知しました。その中で、6学級以下の小学校、3学級以下の中学校は、統廃合の適否を「速やかに検討する必要がある」としました。さらに、通学条件についても、バスなどの交通機関を利用して「おおむね1時間以内」とし、広範囲での統廃合を可能にするよう変更しました。この手引きの「改正」は、安倍政権の教育再生会議五次提言でしめされた「統廃合によって生じた財源の活用等によって、教育環境の充実」をすすめるという方針に沿ったものです。その発想は、へき地など困難をかかえる地域やそこで生活する子どもたちを切り捨て、そこで浮かせた財源で、小中一貫校などの目玉となる学校を建設しようとするものです。地方創生と言いながら、典型的な地方切り捨ての政策と言わなければなりません。


日本は世界二位の大規模学校

 千葉大学の三輪名誉教授による学校規模の国際比較では、アメリカや日本が小学校で平均三百人台にあるのに対して、イギリス・イタリヤ・カナダ・スペインなどが百人台、フランス・フィンランド・ギリシャなどが百人前後となっています。WHO(世界保健機構)は、子どもの教育機関を組織する際の原則として、百人を上回らない規模を提唱しています。とりわけ初等教育(小学校)では、歩いて行ける距離に学校があることは最低限必要な教育条件です。東山区に開校した小中一貫校の東山開睛館は大規模統廃合のため、バス通学を余儀なくされています。バス通学は、学校行事の計画や自然災害などの緊急対応、子どもの放課後の遊びなどに制限が加わり、決して望ましい境域環境とは言えません。


子どもを真ん中に教育施策の推進を

 いま大切なことは、効率や財政優先ではなく、子どもにとって地域にとってどのような政策判断が必要なのかということです。もちろん、財政も無限ではありません。しかし、先進国で最低の教育予算(GDP比率)をそのままにして、子どもの成長・発達を保障することはできません。今の市教委は、「ひとり一人の子どもを徹底的に大切にする」とのスローガン掲げていますが、全くそうなっていません。どこの地域に生まれても、どんな家庭に生まれても、すべての子どもの生活と教育を保障すること、これこそが行政役割です。みんなが声を上げ、子どもを真ん中に新しい市政をつくりあげましょう。
 
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