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情勢ナビ 教科書採択問題


戦争美化の教科書を採択させず
-来春から使用の中学教科書採択-

                 松岡 寛(教科書連絡会)

 

 この夏全国で、来春から中学生が使う教科書の採択が行われました。京都府内の各市町でも、7月末から8月末にかけて、教育委員会議で教科書が採択されました。それに先立つ、地区採択協議会(山城・乙訓・南丹・中丹・丹後の5地区)はいずれも、過去の戦争を美化し国民の権利より義務を強調するような記述の多い、歴史・公民の教科書(育鵬社版・自由社版)を、今回も採択しませんでした(京都市も採択せず)。

 これは、京教組・京都退職教職員の会・新日本婦人の会・自由法曹団など、多くの民主団体が協力して、教科書展示会への参加と意見記述、市町教委への要請などに全府的にとりくんだことの成果です。京都教科書問題連絡会議としての府教委への2回の要請の中では、教科書展示会の会場や時間の拡大を求め、今年度いくつかの会場で夕方の時間が延長されました。また京都市教委への2回の要請の中では、現場の教職員の意向が教育委員に具体的に伝わるような選定資料の作成を強く求めました。

 しかし大阪府では、4年前に東大阪市で育鵬社が採択されたのにつづき、今回は大阪市を含む5つの市で、育鵬社版が採択されてしまいました。現場教員が参加した選定委員会の答申内容や、多くの市民の要望を無視して、教育委員の独断で採択を強行したことは大きな問題です。他の県でも同様に育鵬社を採択した自治体が新たに出てきています。一方、前回育鵬社を採択した、愛媛県今治市・東京都大田区では、今回は他社の教科書を採択させることができました。

 また、昨秋から今春に行われた、文科省による教科書検定では、政府見解どおりに記述することが合格の条件とされ、領土問題では「(尖閣・竹島は)日本固有の領土です」などの記述が、どの会社の教科書にも一律に書かされています。

 今後京都府内での課題として、

(1)山城地区では各中学校に教科書の見本本を巡回させていますが、乙訓や亀岡以北ではとりくまれておらず、展示会場が1ヶ所もない市町も複数あります。教職員や市民が、教科書を直接見て意見を伝えることができる機会の拡大を、各地教委や府教委に求めていく取り組みが求められます。

(2)京都市以外の各市町は共同採択をおこなっており、採択される教科書が全くの密室協議で決定されています。地区採択協議会の議事を公開させる必要があります。

(3) 京都市の教育委員会議に提出された文書(事務局の議案や選定委員会の答申文書)では、育鵬社・自由社の教科書について、過去の戦争の正当化や国防意識を強調している部分などについての批判は一切なく、一方で「我が国と郷土を愛する態度や心情を養うための工夫が優れている」(自由社)、「伝統文化に関する資料や記述が豊富で、領土に関する記述は最も充実しており」(育鵬社)などと、一定高い評価を与える記述をしています。今後、府教委の選定資料や各地区採択協議会の選定委員会の答申文書などを分析し、必要な批判を加えていくことが求められます。

 これらに加えて、政府見解を「正しいもの」として書かせるような検定制度の撤廃要求など、教科書採択に教職員や保護者・市民の意見をよりよく反映させるとりくみをすすめましょう。

 
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