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■生き生きセカンドライフ

自然との対話を楽しむ



                  清水  正(NPO自然観察指導員京都連絡会代表理事)
 

 先ほどまで離任式で同僚や教え子たちと別れを惜しんでいた自分が、今は新しく入学した学校で学生会主催の歓迎会、それも18才の子から70前のおとなの学生たちの輪の中にいる。何と奇妙でかつおもしろい世界.何かが始まる予感がした。これがセカンドライフの始まりでした。

 私の入学した岐阜の学校では里山を専門コースに選びました。実習の多い学校でしたが、週末にはさらに周辺の山に登り植物の採取や観察に明け暮れた。最初は分からないものばかりだったのが、徐々に分かるものが増え調べる時間も少なくなりました。時には木の実やキノコの収穫で同行した仲間と酒盛りをするのが楽しかった。この時は年の違いは吹っ飛んでいました。卒業論文は文系だった私には経験のない実験の繰り返しでしたが、何とかクリアー。卒業までの2年はあっという間に過ぎ去り、今を思えば人生最高に勉強した時期でした。学ぶことががこれほど楽しいものと言うことを知った時です。

 卒業後は1年就職浪人。やっと栗東自然観察の森と言うところに就職をしました。植物調査や維持管理、園内の自然観察ガイド、小学生の観察実習の世話やガイドなど趣味が仕事になったようなもので、職場に着くと小鳥がさえずり、様々な花が咲き変わる楽しいものでした。そこでは10年以上続いていた「自然観察基礎講座」(年間12回プラス自主活動)を突然受け持つはめになりました。そのためのカリキュラムもテキストも自前で作ることになりました。1年目はしょっちゅう図書館通いをして、テキストの編成に時間を費やしました。そこを修了した受講生たちが年度ごとの同窓会を作り、今も年何回か観察に出掛けます.

 その仕事を辞めてから日本自然保護協会の資格を持つ指導員で作る京都連絡会に入り、毎月観察会をやっています。毎回の場所探しも結構大変です。新しい場所を求めてや自分が観たい植物を求めてあっちの山こっちの湿原や河原を晴れたらほっつき歩いています。この会には講師依頼も結構あって、小さなこども、おとなたち、障害者などとも観察会を楽しみます。もちろん退職教職員の関係の観察会も行っています。


 植物ってすごいんですよ。よく知ってみるととんでもないことをやっています.それに一つ一つの姿形がみんな違う。知っていると思う木でも草でも、一つづつ色や形が違うんですね。だから知ってるつもりの草木が分からない時があるんです。自分は分かったつもりになっていたのですが、草木の方からそんなに甘いもんじゃありませんよと言われた感じで、反省して勉強し直しです。自然から謙虚であることを常に教えられています。木や草、虫たちの生活を観ると、生きるってことに真剣なんですね、そんな自然界に俺が一番偉いと人がええかげんな関わりをしていく姿を見ると許せませんね。沖縄の辺野古だって、あんな素晴ら
しい自然を埋め立てよう何て、東北では海と里や山とを分断する大防潮堤を作る。アユモドキを危機に落としてまで、スタジアムを作る。リニアのために自然が豊かに残る地域を開発する。豊かになった日本人は、もっともっと自分達の住む地域の自然の豊かさに気づくべきだと思います。こんな思いを持ちつつ今後も自然とつきあい沢山の人に自然のおもしろさや奥深さを知ってもらうボランティアを続けていこうと思います。

 
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