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生き生きセカンドライフ

町屋を活かして人の輪を

        安本 俊昭(左京退職教職員)
 

 スペース土御門にて11月9日〜15日「絵画作品展」を開催しました。

 京の町家が壊され、パーキングが増え、自動車が人間の代わりに大きな顔をして住み続けている京の町。山科の職場の大先輩で、同じ学年でご一緒させていただきましたFさんから「知り合いの町家を残して、活かしたい」と問いかけがありました。「京の町家を活かしたい」と思う卒業生Y君と三人でスペースとして使うことにしました。

 私が絵画作品展を、オープニングはFさんのチェロの先生が演奏、元教員のUさんが生け花を出品。暖簾の題字と書作品を私の知り合いにお願いし、コーディネーターをY君がすることにしました。Y君は、町家の構造や京間の雰囲気を活かした空間づくりと照明も加え、導線を綿密につくりだしました。上長者町通りの町名の看板のある京町家。表に出ると御所の生け垣と大文字が見える通り。一歩入ると丁寧に木材でしつらえられた和空間が広がっています。天井には、竹の桟。窓ガラスや戸もすべて木製、灯篭のある庭も丁寧に刈り込んでありました。大工さんが手を掛けて維持されてきたそうです。

 暖簾をくぐると、ウエルカム生け花が出迎え、Uさんの家の木と花で飾られました。

 1階は庭と仏間、壁と襖の和空間、ここに私たちを結びつけた山科の風景と、土御門界隈の風景画を展示しました。床の間には書と生け花。間接照明を使って落ち着いた空間が出来上がりました。ご近所の方と共に共感し合える場にしたいと考えました。次の間を談話室とし、階段下には5重奏を描いたデッサン。2階はチェロ奏者の油彩画。和室に抽象画も置きました。昔から使われていた箪笥のある和室に、描きためた小さなスケッチ45枚を畳の上に直接置き、床の間には掛け軸と生け花。間接照明のやわらかな光が穏やかな空気を演出していました。暖簾をくぐって、ひかりさす明るい洋室には、イラストと鴨川スケッチを置き、私の娘のキャンドルも窓辺に置かせていただきました。

 とりかかったのが8月でした。玄関の前で大文字の見える風景をスケッチしました。その後母の入院など私用も重なり、休憩。9月28日山科、御所のスケッチから11月8日前日まで30点を描きました。こんなに短期間に描いたのは初めてでした。油彩、水彩スケッチは楽しく、疏水ではジョギングの人と話をしたり、御所では外国人の方に写真を取ってもらったりしました。チェロの演奏会にも出かけました。大学のころに使った技法をもう一度思い出したり、日頃描きためてきたスケッチを見つめなおしたり、制作三昧でした。

 初日、チェロ演奏は木造建築に響き、庭を借景にしたバッハ、カサドの作品は素敵でした。期間中は昔の友人と交流を深める事ができ、スペース近くの方とも知り合うことができました。町家の活かし方を提案できたのではないかと思っています。200名を超える方々に見ていただきました。皆さんに感謝の一言です。最後の部屋に「わだつみ」と題する作品を並べました。平和教育への一枚です。

 京町屋が取り持つ縁で、人の輪ができました。
 
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