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臨時教職員問題

京都の非正規教職員

        京都教職員組合臨時教職員対策部書記長  西明和彦
 

■京都の公立学校の非正規教職員

 平成25年度学校基本調査(下表)によると、京都府内(京都市含む)の公立学校で働く非正規教員は、常勤・非常勤を合わせて5396名となっています。「先生」と呼ばれる職種の全体の約4人に1人が非正規雇用です。この中に事務職員やバス介助職員、実験助手、寄宿舎指導員などの非正規「職員」は含まれていません。

・  全教員数  常勤講師  常勤%  ●  (非常勤講師) 
幼稚園  355  69  19.4  ●  126 
小学校  8320  957  11.5  ●  1080 
中学校  4860  718  14.8  ●  852 
全定高  3374  326  9.7  ●  681 
特別支  1766  353  20.0  ●  234 
 合計  18675  2423  13.0  ●  2973 
・・・・・・・・  ・・・・・・・・  ・・・・・・・・  ・・・・・・・・  ・・  ・・・・・・・・ 
( 私立高  1783  319  17.9  ●  1104) 


■非正規教職員が減らないのはなぜ…

 ここ10年ほど京都府・市で大量採用が続いていますが、非正規の教職員は減っていません。これは今日の非正規教職員雇用政策は、一番コストのかかる人件費を抑えて教育予算を生み出す「道具」となっているからです。ある職種では、定年退

 職した正規のあとを、採用試験を実施せずに、非正規採用で埋めていました。

 また、異動してもすぐに職場に順応して力を発揮できる経験の豊富な非正規は、人事異動の時には、簡単に動かせる「便利なコマ」として利用され、あえて正規採用せずに一定数プールされているようです。

■非正規の生活実態は…

 教育現場では全く同じ仕事をしているのに、給与、ボーナス等、待遇には格段の差があります。中には生活保護を受けることもあります。非常勤で預金を使い果たして教員を続けられなくなるケースもあります。最悪の場合は失業で、次の仕事が見つかる見通しもないまま、「短期のバイト」を繰り返して食いつなぎます。このような経済状況では、安心して教育実践に打ち込むことができません。つらいことはたくさんありますが、一番つらいのは、年度途中で雇用期間が切れて子どもたちと別れる時だといいます。まさに日本の教育が崩壊しないのは、最悪の労働条件にもかかわらず、非正規教職員が日々熱心に働いているからと言っても過言ではありません。

■ 国際的な労働基準から改善を進める

 日本が批准しているILOの「教員の地位に関する勧告」は、教員が不安定な生活を強いられ、教育実践に専念できない状態を禁じています。これを監視する機関であるCEARTの職員は、日本の非正規教職員の実態を、「告訴するに値する」と言います。子どもたちの教育を受ける権利の保障は人権に関わる問題であり、これは教職員の生活が安定してはじめて担保することができるからです。予算がないから仕方がないという性格のものではないのです。民間に比べて労働に関しての法整備がまだまだ遅れていていますが、「一日の空白」「保険証」の問題など、今全国で少しずつ改善が進んでいます。

■力量のある非正規のベテランが採用試験に合格しないのは…

 20年を超える「ベテラン非正規」が多数存在します。職場ではもう中堅以上の役割を果たしています。そんなベテランが面接試験で「教育実践」の項に5段階評価で「D」をつけられるのです。これは全く失礼な話で、面接官側の力量に問題があるとしか思えません。人物重視をいうのなら、問われるべきは面接官の力量です。

 すでに現場で試され済みの「ベテラン非正規」は、正当に評価され、すぐにでも採用されるべきです。自分が悪条件に置かれても、なお「教育の仕事を続けたい」と願う非正規こそ、教職員としての「資質」があるのではないでしょうか。京都では「よりよい教員採用を求める会」という市民団体をつくって、公平公正な採用試験になるように、情報公開条例を駆使して試験内容と選考基準を府民的に明らかにし、採用試験の改善を求めています。

■ 仲間とともに頑張っています

 非正規教職員の待遇改善を求める全国組織があります。夏に全国集会を開いて、お互いの取り組みを交流し、励まし合います。中部近畿でブロック集会も持たれます。また、京都では、「臨時教職員制度問題を通して教育を考える秋の集い」を開催して、非正規教職員から日頃の思いを聞いて、参加者で共有し、運動に反映しています。

 今年度の集会では、久しぶりに私学で働く参加者がいて、経営難でベアなし、ボーナスも出ず、苦しくて辞めていく教職員が後を絶たない状況の中、「自分が辞めないのは正規になろうと思ってもなることができない非正規の人たちがいるからだ」と語り、自分の非正規時代の思いをばねに頑張っている姿に感動を覚えました。

 公立私立を問わず、労働組合は非正規問題を正面に据え、「労働条件=教育条件」の改善を取り組むことが求められています。非正規問題に関心を持つ方が一人でも増えることを切に願っています。

 
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