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■特集1 人にやさしい京都府政に

総論 人・いのち輝く京都府へ ー知事候補尾崎望さんに聞くー

             −−ひろば編集部
 

○4月に行われる京都府知事選挙に立候補表明されている尾崎望さんですが、「ひと・命輝く京都府へ私の5つの挑戦」を掲げておられますが、その「5つの挑戦」のトップに、子どものことをあげておられます。今の子どもたちの姿や置かれている状況をどのように感じておられますか。

尾崎

 私は1954年生まれ、もうすぐ、60還暦です。私が生まれ育ったころは、地域の力、近所の力、遊ぶ空間、時間自体がゆっくり流れている中で子どもたちはゆっくりできた時代でした。今の子どもたちは見ていて思うことは、かなり追い立てられています。自由に過ごす場も時間もなく、かわいそうやと思います。では昔に戻ればいいのかではなく、どうすればいいのかの解答を出していかなければいけません。そういう面では、少年団とかの活動で自然にできていた異年齢の集団や、その中での体験のようなことを創っていくことが大切です。また親子劇場のような文化に触れる活動も大切です。

 小児科として、障害のある子どもたちの外来もやっています。10年ほど前までは、患者ではてんかんの方が多かったですが、この10年間は発達障害の方が多いです。発達障害の子は増えたのかと言う質問がありますが、増えたのかもしれないけど、矛盾が顕在化しているのではないかと思います。学校がかなり規格化していて、学校の先生もかなり忙しく、しかも大規模です。35人といっても、子どもたちをしっかり見るには多すぎます。そんな中で先生も大変で、余裕がなくなってついつい叱ってしまったり、規制にはめたり、逆に害のない子は放置されているということになってしまいます。そういう面では、先生に余裕がほしいし、そのためにも教職員を増やさなければいけません。

 物事を分断的に見るのではなく、発達障害の子がしんどいということは、多くの子もしんどいと思います。どの子にもあった教育を進めるためには、少人数学級が必要です。

○「5つの挑戦」の中で、「平等なスタートラインを」と言っておられますが、具体的にはどういうことでしょうか。

尾崎

 子どもの虐待のケースがあります。虐待するには絶対背景があります。親自身の困窮に行き着くのですが、親自身が虐待の経験をもっている方も多いし、孤立していたり、貧困であったりします。親に余裕がないです。今、虐待と言う現象があれば福祉事務所で措置するのですが、いったん児童養護施設に入れた時に、親や家族にどうアプローチするのかというのが圧倒的意に弱くて、父親あるいは母親が虐待をせずに済むようにするためにはどうしていくかを、経済的なこともそうだし、子育ての練習をするなどのケアを丹念にやっていかないと立ち直れないと思います。

 似たようなことは生活保護の場合もあります。法律を変えて就労を義務付けるみたいになりました。、誰もが嫌がるような仕事などで働く意欲や生きがいにはつながりません。

 ヨーロッパなどでは、かなり丁寧な、職業訓練を半年・年単位でやって、その人の個性に応じた仕事の勉強などをやっています。本当に生活保護を取得している間に次の社会的自立に向けた技能とか知識とかあるいはモチベーションをつくっていくようなことが大切だと思います。京都府レベルでいくらでもできると思います。京都府が生活保護者の就労にかかわるとりくみを始めましたが中身が大切です。その人たちのやる気や関心や特性に合った仕事探しをしていけば生活保護を切ったときにたぶんやっていけると思います。

 子育てにつまっている親はたくさんおられます。私の所に来られる方にも、虐待ではないけど、暴言をはいたり、たたいたり、何日も風呂に入れてもらえない子がいます。つい先日も、「子どもさんにお薬をきちんと飲まして経過を見てあげてくださいね。」と言ったら「この子ばかりにかかわっていられません。」と返事が返ってきました。親がそう言わざる得ない状況に追い込まれているところに問題があります。経済的なところであれば、生活保護の枠がもっと緩やかになって取りやすくすることが必要です。一時避難的なことも含め、せめて親が子どもを理解しゆとりをもって子どもに接することのできる条件を作ることが大切です。そういう意味で「平等なスタートライン」と言ったのです。

 もう一つ、教育の前期投資ができないと、小中高、いわゆるよいところにいけないというのがあります。今の世の中、よい大学を出たら何かいいことがあるかといえばあまりそういうことは関係ない世界になっていると思いますが、親御さんたちの中には子どもにいい大学に行かせたいという志向がまだ強いと思います。そのためにいい高校に、中学時代から熟に行かせてとなると経済格差が出てきます。

 これも何とかしたい。ほんとに学びたい子が、経済的格差で、学ぶ場を奪われることをなくしたい。

 そういうことも含めて「平等なスタートライン」と考えています。本来の教育制度、教育委員会のもとで、公教育が充実しなければいけないのはもちろんですが、義務教育の無償化の中で、高すぎる教材費などに対する手立てが大事かなと思います。

○経済対策としてはどう考えですか。

尾崎

 地域経済では、地域の中にお金が落ちるということが基本です。たとえば京都の中のホテル、ホテルオオクラで飲み食いをすると売り上げは全部東京にいってしまう、駅前の伊勢丹もそうです。やはり京都の業者が仕事を得て、京都府に府税を払ってくれて、しかも京都で働く人たちの給料が増えていくという循環が京都をよくするということは思っている事です。

 府が発注する事業はたくさんあると思います。だから、中小企業基本振興条例は絶対府レベルで作るべきだと思います。この間、すごく感動したのは、与謝野町のとりくみです。福祉あり、農業再生あり、中小企業基本条例では丹後ちりめんは厳しい状況だがそれを支え、大企業は下請けを中小企業に発注して、さらに、住民の役割も中小企業を振興させるとして、中小企業からの購入をすすめています。中小業者がすごく元気です。先日伺った時に説明してくれたのは、安田織物の社長さんでした。

 ですから、建築関係でも京都府内の発注は基本府内の業者を使っていくというスタイルにしたい。府内での消費を増やしていくためには、府の労働者の賃金を絶対にあげていくことが必要です。府の中小企業振興条例で、最低賃金を千円にしていくことなどが必要です。

 私が京都の知事になったら、例えば、橋を作ったり、建物を建て替えたりする時に、京都の業者の力をなるべく生かしていきたい。その時、グループ化していって、このプロジェクトは、このチームでやってくれへんかというようなことで、中小工場の知恵を集めることができると思います。たとえば東大阪市では、中小工場のグループでロケットを作る技能を持っています。先端のロボットを10社ぐらいで作っています。京都もこんな力があるはずです。

○中小業者への施策や伝統産業を守っていくことについてお聞かせください。

尾崎

 この前、「西新道商店街」に行ってきました。私が聞いていた範囲では、大店舗が進出して厳しい中で、お年寄りへのファックスで受注したり、クーポン券を発行したり、地域に密着した優れた取り組みをしている商店街、行ってみると、夕方だったのですが、人の足は少なく、シャッターを閉ざしている店も結構ありました。民商の会員さん二人と話をしました。高齢で、息子さんはどうしているか尋ねると、「遠くで医者をしている。私の代で店は閉める」とのことでした。そんな中で、最近来たという34才の女性が喫茶店を始めたといわれた。「私は行く行く、ここをアートの特区にしたいと思っている。旧来の商店街ではないかもしれないけど、若い人なども気楽に来れて、町の雰囲気が味わえて、かつ芸術が楽しめるようなところにしたい。このことを西新道商店街の理事長さんに話していこうと思う」と言われました。そのあと、理事長との懇談ができていると思いますが。町おこしとかある町の保全とかを考える時、伝統が残る、かつ伝統を巻き込んで次に育てるみたいな両方があっていいかなと思います。その町に住み続けたいという思いと、そこでやりたいと思う若い層の両方がおらんと町は発展しないと思います。若い人たちの感覚も含めながら、創造的に発展させるというキャパシティもいるかなと思います。京で生まれ育った人の感覚としては、古い街並みがこわれていくがあるかも知れないけど、若いエネルギーを取り込んでいくということもありかなとその人とたまたま話して頼もしく感じました。

○決意の中で、「地方自治体でできることは、少なからずあると思います。」と述べられていますが、具体的に教えてください。

尾崎

 地域振興のために地域の資源を活用して、ネットワークをつくって地域を再生している人たちがいます。たとえば南部で言えば、普賢寺という地域で農業生産法人を作り、疲弊した農村を、そこの特産品、ブランド力を使って、道の駅(ふれあいの駅)を作ってそこで販売をする。そうして、過疎の村の活性化につなげる取り組みをされている。そうした1つ1つの地点でやっている活動を行政が支援していくことが大切だと考えています。

 それと、府と市の関係に関わるけれど、府が基準を決めて行政施策をやることで、市もそれに並べるということがいくつかあって、一番感じていたのは、乳幼児医療の無料化の話で、京都市は一番遅れているけれど、それは府の基準通り。徐々に改善しつつあると言え、3歳を超えると、小学校卒業までは月3千円の負担になります。今度現物支給になったので一歩前進だけれども、一人に対してだから、兄弟3人いれば9千円払わなければならないことになります。そういうことを府として施策を採れば京都市もそれに準じてというになると思います。

○平和の問題で考えておられることをお聞かせください。

尾崎

 大企業誘致、原発誘致、まして軍事基地誘致ではその地域は発展しないと言うことは歴史的にはっきりしていると思います。Xバンドレーダーが決して日本を守るものではないことははっきりしているし、あんなものが京都にできたら、京都府民は脅かされることはあっても、安全とは結びつきません。

 辺野古でも焦点になっているけど、お金が絡むから地域住民が分断されることが一番つらいです。地権者も貸す貨さへんで疑心暗鬼の中にいるから本当に大変だと思います。だからこそ、府や市はきっぱりと誘致しないと言い切ったら余計な分断はなくなります。ただそれだけで終わったら自分たちの生活をどうするかということになるから責任を持って地域おこしをしなければならない。そのためには上から何かを持ち込むのではなく、そこの地域資源力をいかに発揮するかということを地域調査することが必要です。弥栄町の野間に行ったら、一公務員が発端者になって頑張っています。そういう人はどこでもいると思います。地域おこしを地域の資源を発掘しながらやっていくということを対案で出しながら知事や市長はきっぱりとNOだと言い切ることが必要だと思います。

 府知事の役割は2つあって。1つ目は、国政の矛盾している所はきちんと言わなければだめだ。静岡県知事が秘密保護法は悪法との意見表明をしているのは立派です。オスプレイの飛行ルートを知らされなかった山田知事は怒らなければならない。その一方で、京都の中で悪政の防波堤として何をすべきかを考えていくことだと思います。

 最後になりますが、今憲法が本当に大切だと思います。辺野古に基地はうつされる、Xバンドレーダーができる、日本が本当にアメリカべったりの軍国主義国家になっていく道を進もうとしています。また基本的人権は切り捨てられようとしています。今ほど憲法が大切な時はないのではと思います。もう一度蜷川さんの本を読んでみました。1950年に当選していますけど、1965年ベトナム戦争が華やかになっていって、憲法を変えようという動きが出てきた年の念頭の記者会見で「今年は憲法を守る年にしたいと考えている」といわれ憲法会議を作ったそうです。その年の10月にあの垂れ幕を府庁に掲げました。私は皆さんの力を借りて知事になれたら、第1にしたいことは「憲法を暮らしの中に生かそう」の垂れ幕を掲げることです。力を合わせてひと・いのち輝く京都をつくろうではありませんか。

〇ありがとうございました。

(知事候補尾崎望さんにインタビューしたものを、「ひろば」編集委員会の責任で編集いたしました。)
 
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