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秘密保護法の問題点と廃止への取り組み

             京都法律事務所弁護士  小笠原 伸児
 

1 秘密保護法の問題点

(1)秘密保護法は、防衛、外交、特定有害活動(いわゆるスパイ)の防止、テロリズムの防止という4つの分野の情報について、行政機関の長が特定秘密を指定する、特定秘密を取り扱う公務員などが漏えいしたり、何人であれ、秘密保有者の管理を害するやり方でこれを取得したりした場合には、最高10年の懲役及び1000万円の罰金を科する、漏えいや取得を働きかける共謀・教唆・煽動なども重罰に処する、特定秘密を取り扱うことができる者を「適性評価」により選別された公務員などに限定する、というものです。

(2)特定秘密は、防衛情報に限らず、外交情報や公安警察情報にまで拡大され、しかもその範囲が極めて不明確となっています。原発情報や輸入食品の安全性情報など、含まれるか含まれないかの政府説明が変遷したのはその証左です。だから「何が秘密か、それが秘密」と批判されているのです。

(3)行政機関の長が行う指定などについて、行政に都合のいいように恣意的に運用されるおそれがあります。チェック機能が全くないのです。設置された情報保全諮問会議は運用基準について意見を述べるだけで指定などには関与しませんし、独立公文書管理監や情報保全観察室は内閣府に、保全監視委員会は内閣官房に設置される政府の一組織ですから、第三者機関とはなり得ません。特定秘密は、行政の判断によって永久に秘匿できる仕組みになっており、特定秘密は国民の目に触れさせるなと言わんばかりです。

(4)情報源に対しては厳罰化と適性評価制度による差別選別によって、情報源への接近に対しても同じく厳罰化と取得行為の未遂、共謀、教唆、煽動まで処罰対象を拡大することによって、規制を強化し、秘匿性を高めています。取得行為の規制は、出版報道業務に従事する者も例外ではありません。

 ここまで規制が強化されると、国民の知る権利やこれに貢献する取材・報道の自由が死滅しかねません。多くのマスコミ関係者やジャーナリストらが抗議の声を挙げているのは当然のことです。

 行政が情報を私物化する社会、行政が是認する範囲内でのみ知る権利、取材・報道の自由が“保障”される社会は、もはや民主主義社会とは言えません。

(5)適性評価による著しいプライバシー侵害、何が特定秘密かを秘匿にしたままの刑事訴追による適正手続、実質的弁護権侵害など、国民の諸権利を侵害し、また、国会による行政統制監視機能を弱体化させる仕組みなど、問題点は尽きません。

 極めつきは、この法律が刑罰法規であることから犯罪捜査権限を背景に情報収集・統制機能を強化し、スパイ・テロ防止名目に市民運動を監視し、適性調査権限に基づき公務員や民間適合事業者を統制下におく、公安警察による監視社会が到来するということです。

2 廃止への取り組み

 法律成立後も修正及び廃止を求める声が約75%(共同通信世論調査)に達しており、秘密保護法廃止の一点共闘を急速に強めていくことが求められています。

 民主党や共産党は通常国会へ廃止法案を提出する予定で、他の野党との共闘が期 待されています。日本弁護士連合会は廃止を求める請願署名運動を提起しました。秘密保護法対策弁護団が1000名規模で結成されます。

 強行採決された12月6日を忘れないとして6の日宣伝行動が始まりました。気骨ある報道機関、ジャーナリストへの支援、ツイッターなどでの情報・運動の発信、新聞社への投稿など、ひとりでもできます。

 あきらめないこと、できることを継続すること、ネットワーク(仲間)をつくり、大切にすることが、廃止を求めるこれからの取り組みにとって大事です。

 
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