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情勢ナビ 憲法問題

憲法九条を守り生かす揺るぎない国民的多数派を



                    寺内 寿(憲法九条京都の会)
 

◆改憲、9条破壊をめぐるあらたな危機

  昨年の総選挙の結果、小選挙区制に助けられた自民党294議席、日本維新の会54議席など改憲勢力が改正のための発議要件である2/3を超えました。共同通信社の衆院選当選者アンケートでは75.6%が9条改正に賛成と回答しています。また解釈改憲による集団的自衛権の行使容認派も81.1%を占めています。すでに改憲原案の審査権限をもつ憲法審査会が衆参両院で本格的に活動しています。そして、見過ごせないのが集団的自衛権行使を可能とする解釈改憲(自民党選挙公約の「国家安全保障基本法」制定)の危険性が一気に高まったことです。9条改憲と集団的自衛権行使にむけての情勢は、きわめて重大な段階に直面しています。

◆96条「改正」の真のねらいは9条改憲

  安倍自民党総裁は、総選挙後の17日の記者会見で、「日本維新の会、みんなの党とは基本的には96条改正で一致できる」と、3党連携で96条改悪(憲法の改正発議の要件を衆参各2/3から1/2に緩和する)先行してめざす考えを表明しました。これに対して日本維新の会幹事長の松井大阪府知事は記者団に、ただちに「賛成する」と明言しています。参議院では自民・日本維新の会・みんなの党の3党では過半数はなく、2/3はさらに高いハードルです。自民党の自衛隊を国防軍に位置づける明文改憲に消極的な公明党等にも抵抗が少ない改憲発議要件の引き下げ論議を先行させ、夏の参議院選挙結果をふまえ、一気に9条改悪に突き進む「9条改憲迂回作戦」です。解釈改憲と明文改憲をともに射程に入れた動きが国政の場で本格化するのはこれまでなかったことです。

◆憲法9条を守り生かす揺るぎない多数派を

  2013年は、憲法9条をめぐる真っ向勝負の年となります。国会では改憲派、集団的自衛権行使容認派が圧倒多数を占めていますが、国民の中では少数派だという点が重要です。総選挙後の世論調査では9条改憲反対が52%と半数を超え、集団的自衛権行使容認の憲法解釈の変更も「反対」37%と、「賛成」28%を上回っています。(「毎日」) 衆議院全体の6割超となった自民党の議席も対有権者比では小選挙区24%、比例代表では15%に過ぎず、国民の中では「少数派」です。私たちはこの民意に依拠し、憲法を守るとともに、原発はじめ医療・福祉・雇用などいのち・くらしに憲法を生かすことを国や自治体にやらせる新しい国民共同の憲法運動が求められています。生かすことを通じてこそ守れるのではないでしょうか。憲法12条は国民の不断の努力よって保持しなければならない≠ニしている意味もそこにあります。

  九条の会ができたのは2004年。当時、世論調査では改憲賛成派が65%(改憲反対派22%)と多数派でした。全国で9条の会が毎年1000単位で増え、2006年9月に「任期中の改憲」を公約して安倍政権が生まれるとさらに増え続け、マスコミがほとんど報道しないのに、世論が大きく変わり始め、読売新聞の調査でも毎年改憲賛成派が減り続け、2008年には7000を超え、ついに改憲賛成派が反対派に逆転され、2006年の教育基本法改悪反対の一大国民運動とも合流し、安倍政権がやろうとした1回目の改憲策動を止めた決定的な力となりました。今、あらためて地域・職場・分野などに無数の9条の会を広げ、作っていくことが大きな力となっていくでしょう。

(寺内 寿・憲法9条京都の会)
 
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