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■ 市民の目で見た世の中の動き 原発問題

「革新的エネルギー・環境戦略」をめぐる“争乱”
“閣議決定せず”が見せたもの



          地球温暖化防止京都ネットワーク代表委員 榊原義道
 

 9月中旬、政府がまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」をめぐる“争乱”は、「原発ゼロ」を実現するためには何が必要か、その課題と情勢を、かなりの判りやすさで私たちの前に見せてくれた。

 9月12日に明らかになった「戦略」について「日経」(13日)は、「原発ゼロ30年代明記」と書いた。それは「即時ゼロ」を求める人々にとっては全く頼りないものだったが、原案では、「『原発に依存しない社会の1日も早い実現』に向け、40年運転制限制の厳格適用」などと書かれ、閣議決定されることになっていた。ところが19日「閣議決定」は行われなかった。


猛烈反対の二大勢力、なりふり構わぬ圧力

 「戦略」の閣議決定に対する、財界とアメリカ政府の抵抗は、傍目で見てもなりふり構わぬ「異例」のものだった。ここに現在の情勢と「原発ゼロ」実現への課題が示されている。

 22日「東京新聞」は、「原発ゼロ『変更余地残せ』閣議決定回避 米が要求」と書き、25日「朝日」も、「原発同盟 維持迫る米」「30年代原発ゼロの閣議決定へ(アメリカが)『ノー』」と圧力をかけ、これが「決定」見送りの「大きな理由になった」と書いている。しんぶん赤旗は14日に財界とアメリカ政府の圧力を紙面で並べて、こうした圧力を払いのける政治が「原発ゼロ」実現に求められると書いた。

 財界は、10日米倉弘昌経団連会長が記者会見で「『原発比率ゼロ』は現実的でなく、実現困難」「日米同盟関係の維持も重要」と発言、13日の緊急記者会見では「承服しかねる」と野田首相に直接電話まで掛けたことまで明らかにし、18日には、経済同友会の長谷川閑史代表幹事、日本商工会議所岡村正会頭とともに、3人勢ぞろいの「異例」の記者会見まで行い、「具体性を欠いた戦略を出す役員は降格だ」と激しい言葉で政府に不満をぶちまけた。連合の古賀伸明会長も「年限を示した原発ゼロに反対」を表明、19日の「閣議決定」への不安からか、国内の原発死守勢力は総出演となった。

 アメリカ政府の動揺と繰り返しの圧力も報道されている。「朝日」は、アメリカが自らの核戦略との関わりで、また米国の原発産業の都合で「米国内では製造が難しく、日本から輸入せざるを得ない重要部品」の供給源である日本の原発産業の衰退は困ると書いたが、「原発ゼロ」は、まさしく大企業の「経営の問題」であることを露にした。こうした中で“27年後の原発ゼロ”の閣議決定さえ、つぶされた。25日、首都圏反原発連合は「経団連前抗議」を呼びかけ、1300人の行動となったが、こうした活動は今後いっそう重要性を増すだろう。


“原子力村”とは、原発死守の「財界・アメリカ政府村」

 9月28日、関西電力京都支店での14回目の「再稼働止めよ」スタンディングアピールが行われ約300人の市民がそれぞれの思いを関西電力に突きつけた。大飯原発再稼働を強行した関西電力への抗議行動は、6月29日以降だけでも3000人を超え、大企業への抗議行動としてかつてないものとなっている。首都圏反原発連合は、「国会包囲」に続いて、11月11日、脱原発・東京100万人占拠を呼びかけている。こうした運動と世論が財界やアメリカ政府の焦りと“圧力”を浮き彫りにさせている。28日、京都新聞は、「消えた『もんじゅ廃止』 エネ戦略素案で明記…どんどん骨抜き」「“原子力ムラ”圧力」と書き骨抜きの過程を報じたが、ここでも圧力の主犯は「財界・アメリカ政府村」なのだ。

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