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■私と京都

気に入った京都の町を自転車で

        ジュイニ・ムニール(チュニジア共和国出身)
    「ひろば 京都の教育」171号では、本文の他に写真が掲載されていますが、本ホームページではすべて割愛しています。くわしくは、「ひろば 京都の教育」171号をごらんください。
 
 どの国にも、他の国からは異なって見える独自の慣習や習慣、生活様式があります。

 私たちが交流するときにこのような人々の違いを考慮に入れておくことは、価値観の違いを理解するのに役立つでしょう。

 私は地中海沿岸地域出身です。

 この地域の人々は、昔から目新しいことやまだ知られていないことを発見するのが得意でした。古代フェニキア人は船に乗って地中海東方から地中海沿岸一帯に進出し、豊かな国家を築いたのです。

 同じように、地球の東の果てにある“日出ずる国”・日本を訪れることは、私の長年の夢でした。しかし、私のこの希望を叶えるには経済事情が許しませんでした。私は日本行きの航空券を買うため、5年間かけて少しずつお金を貯めました。広大な空ときらめく星を見ながらの約15時間の雲の上のフライトは、私がかつていつかはと夢見た初めてのフライトでした。


 私は、日本行きの機内で隣り合わせた日本人男性に大変感謝しています。

 本当にありがとう、マコトさん。あなたのことはいつまでも忘れません。

 マコトさんは、日本が初めてだという私にお箸の使い方やわさびについて、また日本食について教えてくれました。私は「わさびは辛いから気を付けて」と言われたのにわさびをつけたそばを一気に食べてしまい、大変な目に遭いました。


 次に、入国審査での体験は私にとって大変興味深いものでした。

 日本の入国審査官は、私が初めて来日して3ヵ月も滞在するのに日本円5万円と500ユーロしか持っていないことを不審に思い、1時間半私を拘束しました。(訳者注:チュニジア共和国は査証免除措置国であるが、左記の理由で身元引受人が空港に到着するまで入国審査事務所で長時間待たされることになった)

 また、税関では私がチュニジアから持ってきた自家製スパイスに疑問を持ち丹念に調べました。税関職員が、私が同時に持参していたコーヒーに気づき「とてもいい匂いだ、これはコーヒーか?」と聞いたので私は彼がコーヒー好きであると気づき、「そうです、これはコーヒーです」と答えると彼らは「いいでしょう」と言い、私は税関を通過することができました。

 これは、コロンブスが新大陸を発見したときのように、ニール・アームストロングが月面に着陸したときのように、新生児がこの世に生を受けたときのように、私の人生にとって大変重要な瞬間でした。

 そして、私の日本・京都での新しい暮らしが始まりました。


 初体験というものは、5感を駆使し自分がおかれている環境に適応しようとします。

 京都の町は適度な湿度を含む木々の匂いがします。それは、私の出身地域である北アフリカの山々や雨の匂いと同じです。私が京都の町で最も気に入っているところは、一年を通してたくさんの木々や豊かな緑に恵まれているところです。また、きれいな水で人々の生活を豊かにする鴨川は、人間の静脈のようです。この冬、私は雪の北山ハイキングを経験しました。初めての体験に、私は寒さを忘れて楽しみました。

 本当のことを言うと、来日前、日本はビルだらけの都市だと思っていました。しかし、そうではなく、日本は自然と技術が共存している国であることを知りました。

 日本の食事も、私にとっては驚きが多いものでした。わさびはしばらく苦手でしたが、刺身や寿司を美味しく感じるようになると同時に大好きになりました。特に気に入っているのは寿司、てんぷら、鰻の蒲焼、うどん、そしてたこ焼きです。


 今、私は京都の町のあちこちを自転車で走るのを楽しみとしています。たとえば、岡崎周辺や鴨川沿い、四条河原町などの町中、寺町、京都御所周辺などです。京都の町は自転車で走りやすく、すべてが私にとっては大変新鮮で興味深いです。

 私は、普段は地図を使いません。出かけるときは飲み物と非常時連絡用の携帯電話を持ち、旅行者が行くような場所ではなく私が行きたいと思った場所に行きます。

 私は、これからも京都の貴重な歴史や文化、大変価値のある町並を巡り、いろんなものを見たり聞いたり感じたりしたいと思っています。

(日本語訳:坂尾 淳子)
 
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