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いきいきセカンドライフ

車イスに乗ることができれば、どこへでも出かけることができる!


          川口 良正(退職教職員 福祉タクシー「つばさ」)


(1)いろんな人々とのさまざまな出会いの中で・・・。

 2009年12月7日、60歳の誕生日に2つの仕事がありました。午前中は、堀川高校の同級生のご主人を第二日赤から第二中央病院への転院の仕事です。11月21日に脳溢血で緊急入院され、家族あげての献身的な看護と治療のおかげで回復も早<、後はリハビリに取り組む必要があるので転院・・・いうことでした。ご主人も同じ60歳になられたばかりとのこと、リハビリに前向きに取り組まれれば、若い年齢なので回復するのも早く、歩けるようになられるでしょう、と励ましました。

 お昼からは、園部の農芸高校近<にある「自分の生まれた家を見たい」という母親自身の強い願いを叶えるために、娘さんと孫娘さんを乗せて桂病院から走り出しました。現在住んでおられる家の前に来ると、表札に書かれてあるお名前が、以前同じ中学校でご一緒だった先生と同姓同名なので、「ひょっとすると**先生のお宅ですか?」と尋ねたら「はいそうです」という答えでした。娘さんはその先生の奥さんだったのです。その後の車中での会話が和んでいきました。「世間はなんと狭いものだな。」とあらためて感じる一日 となりました。

 福祉タクシーつばさを開業して早2年半、2400件をこえる予約と、車イス利用者320余名(家族の方を含めると700余名の人)の人々との出会いがありました。それぞれの方々からいろんなお話をお聞きし、そして学ばせてもらっています。


(2)つばさくんとの出会いが・・・。

 55歳の時、洛西中学校から呉竹養護学校へ異動し、高校三年生のつばさくんを始め3人の生徒の担任を仰せつかりました。つばさくんは呉竹の中では最重度の障がいのある生徒でした。寝たきりのため身体の筋肉や関節を柔らか<する「身体の学習」や、誤嚥を起こさないように給食や水分を補給すること、さらに下校するまでに何回もおむつを取り替えることなどがあり、毎日を一所懸命に生きている彼らを通していろいろなことを学ぶことができました。

 「飛行機にはまだ乗せていないので何とか乗せてあげたい」と願うお母さんの強い要望でつばさくんの誕生日に、おばあちゃんとお母さんとつばさくんと私の4人で飛行機に乗って、一泊二日の沖縄旅行に出かけました。「障がいのある人が外に出かける」ということに大変な苦労がいる、と同時に「世界が広がっていく」というとても大きな意義があるということを体感することができました。

 その時の経験が、退職後何をしたいかを決定づけました。病気や障がいがあるために外へ出かけるのに困難を伴う人たちの「足の役割」をしよう、そのために介護・福祉タクシーをしようと考えたのです。次の1年間は、開業に向けて自動車普通U種免許を取得したり、2級ホームヘルパーの資格を取得したりするための勉強を楽しんでやりながら、教師生活最後の充実した教育実践を思う存分行うことができました。57歳で退職し、その年の6月から「福祉タクシーつばさ」の看板をつけて京都市内を走り回っています。お母さんに承諾していただいたうえで屋号に「つばさ」をつかわせてもらっています。つばさくんに出会っていなければ、「介護・福祉タクシー」をやっていくことなど夢にも考えなかったことなのです。


(3)健康なままで、やりたいことを・・・。

 退職後の人生の中では、老親を介護することやその終末を迎えること、さらには自分自身や配偶者の高齢化とともに起こりうる病気や老化との「おつきあい」等々、今まで考えてもいなかったようなことが具体的に立ら現れてきます。さらには町内の役などが回ってきたりして、健康なままでやりたいことを思いっきりやれる時間というのは案外短くなってしまうかもしれませんね。

 だからこそ、退職後の「自分の・自由な時間」をどのように過ごしていけばいいのかをじつくり考えながら、具体的な準備や行動をしていくことがとても大切です。そして少しでも人の役に立つことを通して、お互いに喜びを感じ合える日々を過こしていければ・・・と思いながら、毎日楽しく過こしています。他にもやりたいことがいっぱいあるので、今やれることから順番に取り組んでいこうとしています。

                            
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