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●京都教育センター通信 復刊第12号
 (2007.5.10発行)

最後まで心を折らない
               
京都音楽センター代表 時田 裕二 


 すでにご存じのように、教育再生会議から七つの提言と四つの緊急対応が発表されました。

 七つの提言には、ゆとり教育の見直しや、学校の再生。魅力的で尊敬できる先生を育てること。などが盛り込まれていますが、提言を読みながら、これで子どもたちにとって本当に良い教育になるのだろうかと、首をかしげてしまいました。

 一番気になつたのは、教師の力量不足が問題とされているように読み取れることです。日本の教育者たちは力量もなく、信頼するに値しない集団なのでしょうか?  私はそうは思いません。

 彼らは「人間を育てる」という、もっとも人間らしく、ムツカシイ(マニュアル化できない)ことを職業としている、選ばれた人たちです。それこそサービス残業で、過労死寸前になろうとも、子どもたちとのふれあいや、子どもたちの成長を楽しみにがんばつているのです。  かつては集団の力で教師を成長させるシステムや、協同を作り出す自由・文化があったのです。そして、様々な工夫と教材研究で、子どもたちの学力を支えてきたのは、他ならぬ日本の教育者たちだと思います。

 問題とされるべきは、これらの集団の英知を発揮できないシステムや現場を作ってしまったことにあるのだと思います。

 それに、逆行するかのように提言には「給与体系で差をつける」としています。これは格差社会にいっそうの拍車をかけることにならないでしょうか?

 提言は社会の矛盾をますます子どもの世界にも広げ、協力や協同の理念をこわしかねません。本来の教育とは相容れない物だと思います。

 日本の学校や教師には、優れた能力と協同する力があるはずです。その力にこそ教育再生のカギがあるのだと、私は思います。  作家の出口ランディさんが東京新聞に「STOP!いじめーあなたへ」という一文を掲載されています。

 『私は日本の子どもたちを誇りに思う』『大人社会がこれほど荒んでいても、みんなはよく育っている。がんばっています。ほんとうに明るく元気に生きている』と書かれています。

 さらに『この社会がなんとかこうして成り立っているのは、悪いことをする大人よりもたくさんの、悩みもがいている大人がいるからです』『私がまだ若くて苦しかったころ、たくさんの悩める大人に出会いました。彼らは私を子ども扱いしなかった。仲間にしてくれた。自分もそういう大人になりたいと思った。懸命な生き方に感動したからです。子どもには感動する力がある。それは子ども時代の宝です』『今の日本は大人にとっても苦しい社会です。弱さを出せない。だから、みんながもっと楽に暮らせるように変えていかなければなりません。そのために私も努力します。逃げません。あきらめません。希望を捨てません。焦りません。悲観しません。わかったふりをしません。間違いは素直に認めます。そして悩みます、喜びます、楽しみます。かつてそういう大人の背中を見て学んだのです。』と、大切な大人像を示されています。そうです、今大切なのは、もがきながらでも、一生懸命生きる大人たちの姿なのでしょう。

 アメリカンフットボールの日本一を決める「ライスボウル」で、社会人チームに挑んだ学生(法政大学)チーム。

 彼らが試合前にお互い誓ったのは「どんな状況になっても、最後まで心を折らないでいよう」でした。

 私たちも最後まで心を折らないでいたいと思います。

 そのための理念・理想を持ち続けたいし、心を折らない思想をもてる文化を築いていきたいと思います。




高学年のハードル走の授業
          長岡京市立長岡第三小学校 木村俊四郎



 本校では、単学年当たり四時間の教材指導時数がそれに当てられている。何を教えるのかを絞り込んでも、その配当時数では十分な力を付けることができないし評価もできない。子どもたちの事前アンケートでは、「五〇メートルのタイムに近づけたい」「かっこよくとびたい」「ハードルに引っかかるから怖い」などがあった。この意識に具体的に応えて行くためにも、ハードル走のフォームを教えることよりも「どうしたらタイムロスがなくせるか」を「見つけ合いや伝え合い」を大切にして授業を組み立てている。

 そこで、陸上領域や体ほぐしの時間に当てる時間をやり繰りし、「五〇メートルハードル走」に六〜八時間あてて指導している。また、「わかり・できる」内容を絞り込み、五年生で「@有効な踏み切りポイントがわかる(中心的な学習活動)、A遠くから踏み切ると低い姿勢のハードリングになることへの意識化」を中心課題に、6年生で「B振り上げ足の着地ポイントがハードルに近い方が有効であることがわかる。C振り上げ足を叩き付けるようにして、抜き足の着地点や抜き方への意識化」としている。

 地域の先生仲間の声として、「1.2.3ー.トンのリズムを教える」「ハードリング時のフォームを意識的に教える」など耳にすることがある。どれも間違っていないと思うが、動作を起こすタイミングはハードル走に限らず永遠の指導課題として受け止めている。しかし教科体育が、クラブ活動的なトレーニングの場面になることだけは避けて指導に当たらねばと心に決めている。

 紙面の関係で、授業計画を紹介することはできないが、コース決めと三〜四人でのグループ学習の様子を紹介したいと思う。一身長一四〇センチメートルとして四歩で五・六メートル、疾走区間では一身長以上が一歩なので、最短のインターバルを六メートルに設定(五年生では、一時的に五・五メートルも設定するが)し、六・五メートル、七メートルの三コース、各ハードルは最下段でスタートから第一ハードルまでを十五メートルで、三インターバルを含む五〇メートルハードルで指導している。(記録会などの基準で指導していない。)

 学習効果を上げるために、各コース内で子どもたちを異質集団で三〜四人で点検させている。一人目は試技、二人目は第一・第二ハードルの課題(学年やその時の課題に合わせる。五年生では@、6年生ではB)を点検する。三人目はゴールラインあたりの正面から、ハードリング姿勢の高・低の様子などを点検させる。この時必ず、点検表などを通し課題確認をさせている。課題を持つ子も巻き込み学習課題を明確にさせるように心がけている。

 最後に、学習課題に対して子どもたちの声を紹介したい。課題に迫れている子への声として、五年生では「スピードの落ちない子は 一メートル以上で踏み切っている」、六年生では「振り上げ足の着地点がハードルに近く、抜き足が素速い」などがある。反対に走スピードが失速している子どもたちには「 踏み切り足がハードル前一メートル以内で、跳び上がるようにしている」、「跳び上がったようにしている人は、振り揚げ足の着地ポイントが長く、抜き足の一歩目も狭い」などの声があった。  課題を持つ子どもたちが増えている中、タイム短縮は全ての子どもたちの目標であり要求であるはずです。今後も子どもたちの変化に応えていける実践を追求していきたいと思っています。





子どもたちを「自分のからだや生活の主体者」に
                      福知山市立三和中学校 関口てるみ


  一年前、八年間の小学校勤務の後、中学校に異動しました。その小学校の前に中学校に勤務していましたが、三年間という短い期間であったため、「やり残した感」が強く、養護教諭として思春期の子どもと達と向き合いたいという思いを持っての中学校異動でした。

 私は、小学校でも中学校でも、子どもたちには「自分のからだや生活の主体者になってほしい」と願って、実践をしています。特に大切にしてきた健康学習・性教育。体やいのちの不思議に触れたときの子どもたちのおどろきと感動の表情が大好きです。そんな思いを積み重ねることによって、子どもたち自身が自分のからだやこころからの声を聞き、自分のからだやこころを見つめ、自分を大切にできると思っています。

 中学校では、健康学習・性教育の時間は年間四〜五時間しかありませんが、保健室に来た子どもたちとの会話の中で性に関わる話題がよく出て、ミニ性教育を展開しています。こんな時は、子どもたちの本音がよく出ていておもしろいです。(中略)性情報が氾濫する中、子どもたちは知っているようで曖昧な知識が多く、ゆがんだ性情報を植え付けられていると感じることが多いです。だからこそ、さまざまな場面で、正しい知識やゆたかな関係性を築くことの大切さを語っています。

 もう一つ大切にしてきたことは、子どもの話をていねいにじっくり聴くこと。本校は、生徒指導上の課題も少なく、行事や部活動に意欲的に取り組む、とても落ち着いた学校ですが、一人一人の子どもたちをていねいに見ていくと、課題がないわけではありません。保育所の時代からほぼ固定した人間関係の中で、お互いの顔色を伺いながら、思ったことが言えずに周りに合わせて行動している傾向があります。友達関係で傷ついて、居場所を見つけることができない子どももいます。話を聴こうとしても自分の思いを語れない子も多いです。そんな子どもたちの言葉にできない思いを受け止めたいと思っています。

 とはいえ、なかなか思うような実践もできず迷いの多い毎日。そんな時、保健室で休養していた子どもが「先生って、中途半端やなぁ」「だって、先生(保健の先生)は、勉強を教えるわけでもないし、お医者さんでもないし。でも、学校っていつも元気な人ばかりやないから、話を聴いてくれたり、病院へ行くまでの手当をしてくれたり、そんな人が学校にはいるんやなぁ」と言いました。養護教諭の役割を見事に言い当ててくれたようで、とっても嬉しくなりました。こんな言葉に励まされながら、これからも、子どもたちが「自分のからだや生活の主体者」になるためのサポーターでありたいと思っています。


京都教育センター 公開研究会


 昨年の12月15日に教育基本法か強行改悪されて半年が経過しようとしています。この間、改悪ステージのもとで新たな教育統制と競争管理をシフトした国民不在の教育議論が展開され、新学期早々の4月24日には46年ぶりの「全国一斉学力テスト」が「粛々と」実際されてしまいました。今国会には教育3法案が上程されており、「教育免許更新制度」「賃金格差に連動した教職員評価」「学校選択制の拡大」などが画策されています。コロコロ変わる「学習指導要領の改訂」も日程に上っています。
 こうした子ども・父母・教職員にとって新たな困難を導く情勢下で、すべての子どもたちの生き生きとした豊かな発達を願う立場からどう立ち向かうのか、議論を深める機会として企画しました。

どなたでも参加できます。(参加費:資料代として300円)


日時 2007年6月9日(土)13:00〜16:30

場所 京都教文センター101号(京阪丸太町下車東へ5分)

講演

    『改悪「教基法」以降の新たな教育統制施策にどう立ち向かうか』

      八木 英二先生 (滋賀県立大学)

【報告】T.「4・24学力テストの問題点ととりくみの総括」                深澤 司(京教組教文部長)

    U.「60年代の学力づくり実践と学力テスト問題」         淵田 悌二(前京都教育センター事務局長)

【特別発言】

    今回の学力テスト中止の仮処分を求め提訴された父母より



京教組民主教育推進委員会

日時 2007年 6月16日(土)10:30〜

午前:全体会
午後:分科会

場所 京大会館にて



教育センターだより

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