事務局  2015年度年報目次 


第6分科会

「民主カウンセリング・ワークショップ
~学校・職場・地域・家庭で よりよい人間関係をどう築いていくのか~」

   光木和子(民主カウンセリング研究会)

 

 今回の分科会も、エンカウンター・グループという形で行いました。講師を招いて話を聞いたり体験学習をすることも検討しましたが、年に2回の、一日ゆったりと人の話を聴き自分を見つめ直す場としてこの分科会を心待ちにしている声も多いので、自由にそのときのメンバーの創り出す流れにまかせてそれぞれが、人間信頼・受容的態度・共感的理解などを体験できる場を提供できたらと企画しました。

 この間の情勢の動きは激しく、安倍内閣は安保法制の強行採決を行い「戦争できる国」作りを現実のものとして進めようとしています。その中で、民主主義が踏みにじられることへの怒りや、家族を守ろうと戦争に反対する思いが、今までにない多くの層から声としてあげられ行動にうつされました。一人の人の不安や怒りや願いが、言葉として発せられ、それがネットや集会を通じて広められ、共感し連帯しようとする人々を結び付けていきました。それぞれの立場や思想は違ってもいい、お互いを尊重し合いながら結びついていこうという方向性は貴重なものです。

 今の社会が一人一人の人間性を尊重することを軽視し個々の自由を制限することが強まる中で、「個人の尊厳」を守り「ひとりひとりの人間的成長」を援助していこうというカウンセリングの精神が広まることがますます求められています。

 そんな中で開かれた今回のワーク・ショップは男性6名、女性8名、全部で14名の参加でした。初めての方の参加はなく、学校現場でしんどい思いを抱えている人や新しい人の参加がもっとほしいところでしたが、一人ひとりが安心して自分を語れる貴重な体験ができ、豊かな深い話ができたエンカウンター・グループでした。

 午前中は参加者がお互いを分かり合えるように、今ここにいる自分の気持ちを出していくことから始まり、その後自由に話し合いました。住んでいる地域の中で起きている社会問題を中心に話題がひろがっていきました。午後は、家族に焦点がしぼられ、親子の関係や夫婦の間の問題など、過去からの家族の歴史を振り返りながら、今現在抱えている思いを率直に出し合い、自分と家族とのかかわりを見つめる場になりました。

 会の進め方としては、会長の挨拶のあと、オリエンテーションを行い、初めに参加者全員が今ここにいる気持ちを出し合ってから、自由な話し合い、聴き合いの体験学習に入っていきました。

◎会長あいさつ

 今年度、会長を交代した。初代の会長は西光先生で、自分はその立ち上げのときからこの研究会に参加している。

 西光先生はロジャースから学ばれ、カウンセリングと真宗がどう関わるか模索された。西光先生に、「民主カウンセリングを始める」と言ったら、「なんでわざわざ民主をつけるのか、本来カウンセリングというものは自由で民主的であるべきものだ」といわれた。

 しかしカウンセリングにも200ぐらいの派があり、自衛隊や企業などには本人に寄り添うのでなく、うまく適応させることを目的にしたり、不適格者を切り捨てる手段に使われているものもある。悪くいうとマインドコントロールをして、国や企業に都合のいいように強要されている感じである。だから今、「民主」をつけてよかったと思っている。

「パーソンセンタード」の精神で、その人が真に大事にされ成長していくためのカウンセリングをこれからも進めていきたいと思っている。

◎オリエンテーション

エンカウンターというのは“出会い”という意味合いである。出会いには二つの出会いがある。今日、一期一会で参加している人との出会いということと、自分自身との出会いである。日常忙しくばたばた過ごしていて、自分と出会う場を持つというのはなかなか難しい。

この会はテーマに基づいて討論をする場ではない。枠がなくて、一人一人が話を聴きあい、自分の気持ちで自由に自分のパワーで動く場である。

深い話をきくと、自分も深いところに感じて表現したくなることもよくある。無理して出さなくてよいが、出してみたら自分に変化が起きることもあり、表現することも意味があると思う。

この場は、暴力、暴言以外なんでも自由にしていい場である。出された話はこの場限りのもので、絶対外で言わないという守秘義務は守っていただきたい。

◎話し合い・聴き合いから・・・・(略)

1. はじめに今ここに座っている気持ちを一言ずつ

2. 住民運動でいろいろな考えの人が…

3. 自分のものさしをどう考えたらいいか

4. 貧乏とは…

5. 親と子の関係は…

6. 弱さを受け入れられると強くなる

7. 孤独とさびしさと夫婦の関係

8. 自分にとってカウンセリングの持つ意味は

【感想文より】

・いろいろなお話が聞けてよかったです。一人一人の思いを十分受け止められたか心もとない部分もありますが、しっかり聴けたのではないかと思います。人生を大切に一日一日をしっかりとすすんでいきたいと思いました。

・男性の参加が多く、社会的な話や情勢の話が多いかなと思っていたのですが、個人と集団の話、親子の話、夫婦の話など、いろいろな深い話ができたと思います。忙しさの中、自分となかなか向き合えていないなと痛感しました。

・11時間も待ったこと、話せてよかった。話せる人が私の周りにはいないので…

・いつも、独居生活をしているため、ついしゃべり過ぎたように思います。気分はよろしい。

・午後のセッションが心に残りました。みなさん、自分の心の中で沸き起こっている感情に率直に向き合われ話されるので、気持ちよかったです。自分を開きながら話す、聞くという原点が確認された感じですね。久しぶりに参加されたMさんの最後の話も重みのある深いお話でした。話してくださったこと、聞かせていただいたことに感謝いたします。自分のことも少しですが出せてよかったです。

・午前中は社会問題を論じ合うみたいな感じでしたが、午後は、それぞれの人が自分を開いた話が交わされて、途中居眠ってしまったが、あたたかい笑い声がよく聞こえてきて心地よく最後目覚めました。充実した一日でした。

・どんな分科会になるのかなと思いながら、とにかく自分の暮らしや教育相談所の活動に役立つことをたくさん聞いて帰りたく、参加しました。参加者の自分自身のこと、経験などありのまま発言され、本当によかったと思いました。人生の栄養を頂きました。ありがとうございました。

・みんなが話ができるいい人数だった。ひとりひとりの心の深いところに焦点がいって、家族のことなどそれぞれのところでいい話が聞けました。

・初めから、自分を語る深い話を聞かせていただきました。みなよく聴いているなと実感できたし、自然体で話をされて、自分の気持ちにしみこんできた感じです。特に親子の関係をそれぞれに語る場になったと思います。


 
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              2016年3月発行
京都教育センター