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京都教育センター 年報28号(2015年度)

 -- あいさつ --

「憲法を暮らしと教育に生かす」
教育研究・運動を広範な人々と連帯して進めよう

                京都教育センター代表 高垣忠一郎
 

 わたしは心理臨床が専門であり、カウンセラーをしています。小さな面接室で心に悩みを抱える個人と向き合ってきました。だから、「すべて国民は個人として尊重される」という憲法13条の大切さを身にしみてよくわかります。それは、わたしの言葉で言いなおせば、。「自分が自分であって大丈夫」という自己肯定感を心に懐き、一人ひとりが主人公として生きることです。しかし、残念ながら、この13条の理念がいまの日本の社会で十分に実現しているとは到底言えません。

 わたしの目には、多くの子どもや若者たちの心に「見捨てられる不安」や「焦り」、「傷つきやすさ」や「自己否定感」という「地雷」が埋め込まれているのが見えます。多くのおとなが人間らしい感情を感じないように「心に鎧」を着て頑張っている姿がみえます。子どもも若者もおとなもとても生きづらいのです。

 安倍政権がつくりだす社会は生命を軽んじ、人間を人材として使い捨てにする「戦場」のような社会です。その社会には「脅し」がはびこっています。わたしたちは権力によって「頑張らないと見捨てるぞ」と常に脅されながら生きているのです。そんな社会は変えなければなりません。

 昨年の9月19日に安倍政権は、集団的自衛権を認める「安全保障関連法案」(戦争法案)を強行採決しました。日本を戦争できる(する)国に変えてしまいました。その法案を通すために、政府は中国や北朝鮮が日本を攻撃する危険があると国民を脅しました。マスメディアに脅しをかけ、その口を封じました。日本はますます脅しによってことを運ぶ恐ろしい国になりました。そんな日本に住む人々の心は平和ではありません。

 この法案が強行採決されたその日に、教育センター事務局長の本田久美子さんが戦争法に反対し、平和憲法を守れと敢然と立ち上がりました。「教え子を再び戦場に送らない」という教師の魂を原点に、「生命は平等・子どもは未来」を合言葉に、京都に「憲法市政」を実現するべく、京都市長予定候補に立ちました。わたしはその選挙母体「憲法姿勢 みらいネット」の代表として選挙戦を担いました。

 その結果、選挙には破れましたが、保育所問題、学校統廃合問題などをはじめとして広範な京都市民のとのつながりをつくりだし、これからの京都教育センターの活動を一層発展させることができる可能性を広げることができたのではないかと思います。
安倍政権下では日本を戦争する国にするための教育へのさまざまな攻撃と締め付けが一層強くなることは明白です。しかし、他方で、戦争法案をめぐる攻防のなかで、あらたにあらわれたシールズの若者たちや広範な一般市民、学者、宗教者が声をあげはじめ、自分の頭で考え、自分の心で決断し、自分の足で立ち上がる人々の連帯もつくられてきています。それらは、新しい日本を誕生させるための「生みの苦しみ」のようにみえます。「日本の夜明けを京都から」を合言葉に、その一翼を担おうではありませんか。

 


空気を変える年に!

            京都教職員組合執行委員長 河口 隆洋
 

  ジョン=W=ダワーとガバン=マコーマックの共著『転換期の日本へ』(NHK新書)には、「日本は、第2次世界大戦後のヨーロッパにおける西ドイツとは異なり、アジアのもっとも身近な近隣諸国と和解し再び一緒になることを効果的に封じられてきた。…帝国主義、侵略、搾取、それらの傷と苦々しい遺産は化膿し疼くままにしておかれた」と指摘されています。

 この化膿した疼く傷口に塩を塗りたくってきたのが安倍自公政権です。傷を重症化させた上に、憲法9条2項の改悪、「緊急事態条項」を憲法に盛り込んで、さらなる立憲主義の破壊をたくらんでいるのも安倍政権とそれに追随する勢力です。

 安倍「教育再生」は、憲法改悪と一体に戦争する国づくり、人づくりを進め、「世界で一番企業が活動しやすい国」の「人材育成」に奉仕する教育や学校づくりが企まれています。安倍政権下で軍事費が増加し続け、来年度予算では過去最高の5兆円を突破する一方で、教育予算は先進国最低の水準にもかかわらず、予算を減らし、教職員定数は3年連続の純減と、子どもと教育にたいへん冷たい政治になっています。

 昨年の戦争法案・安保関連法案反対のたたかいには、学生・青年・学者などの市民が自覚的に立ち上がりました。戦争法案廃案を求める国民的な運動の高揚は、政治を変えることの重要性を広く国民に気づかせました。

 SEALDs関西の大沢菜実さんは、戦争法案反対のたたかいに参加して次のように語っています。「私はほんの数年前まで新聞の中だけにあった、沖縄を東北を、こんなに近くに感じたことはなかった。彼らの息遣いが、怒りの声が、今の私には聞こえます。そして原爆ドームの前に立ち尽くすあの人を、杖を突いて国会前に足を運び続けるあの人を、弱音を吐けないまま死んでしまった大好きなあの子を、こんなにも近くに感じた夏はなかった。こんなにも自分が生きていることを噛みしめた夏はなかった。」「当たり前に順応するのではなく、何を当たり前にしたいのか常に思考し、行動し続けること、どうやらそれだけが未来をつれてきてくれるようです。空気を読んでいては空気は変わらないんです。そのことをデモするたび、街宣するたび、一緒に声を上げる名前も知らない人が、その勇気で持って教えてくれました。」と語っています。

 空気ばかりを読んでいては空気は変わりません。2016年を空気を変える一年に、平和と憲法を守り抜くために、政治を変える年にし、戦争法・安保法制廃止の展望をきりひらく年にしていきましょう。

 日本を再び「戦争する国」にしていこうという策動が強まる中で、憲法と子どもの権利条約にもとづく民主的な教育を学校現場でいっそう推進していくことはますます重要です。「戦争する国づくり・人づくり」を許さず、戦争法廃止を求める運動を強めるとともに、子どもの人格的成長と発達を保障する教育にむけての研究活動を充実することが求められます。

 
 「京都教育センター年報(28号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(28号)」冊子をごらんください。

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              2016年3月発行
京都教育センター