事務局  2013年度年報もくじ


地方教育行政研究会
2013年度活動のまとめ

                葉狩 宅也(地方教育行政研究会事務局)
 

1.地方教育行政研究会・京教組合同学習会としての運動

 この間、安倍内閣が打ち出してきている教育政策は、「教育再生実行会議」を発足させ、「いじめ防止対策基本法」を定める、「心のノート」の再配布をはじめとした「道徳教育の徹底」、「6・3・3・4制の見直し多様化」、「全国学力調査の全員参加」「高校授業料の無償化の見直し」「教育委員会制度の改編」など、さらなる競争と管理統制路線の推進を露骨にしています。

 また、「侵略戦争美化」を批判される中での外交や、保守勢力が強引に推し進めようとする「憲法改正」の動きをめぐって、テレビ、マスコミは様々な形で報道をすすめています。わたしたちには、そうした動向に着目しつつ、歴史的な真実や本質的な意味をていねいに学び合い、わかりやすい言葉で実践・運動を進めていくことが求められています。

 そうした多くの課題を目の前にして、今年も合同学習会を継続してきました。第1回学習会では、@安倍政権・教育再生実行会議の政策を批判的に検討する、Aそうした動きに対して、私たちがどのように運動や実践を展開していくべきなのか、を交流しました。
第2回学習会では、@教育委員会制度の系譜を学び、現在の教育委員会の「改革の課題」を考える、A今日の教育行政の動向にわたしたちがどう向き合っているのか、を交流しました。

 第3回学習会では、@高校教育における「適格主義」について学び、それを乗り越える高校教育改革の展望を探る、A京都府の高校三原則廃止以降の高校教育制度や入試制度の実情を交流し、その矛盾やそれに抗した取組に学び合いそこからわたしたちがめざすべき高校教育について論議しました。

 さらに、例年のように第44回京都教育センター研究集会第1分科会を第4回学習会と位置づけ、企画しました。@安倍自民党の教育政策の教育政策について学習する、Aこの間の京都府下の学校・教育をめぐる実態や実践・運動から、地方教育行政のあるべき姿を検討する、B京都府知事選挙を見据え、教育条件整備に関わる私たちの「要求」を交流するという3点を目的に開催しました。

 2000年度から始まった京都教職員組合との「合同学習会」は今年で15年目を迎えています。「合同学習会」を含む研究会活動では、子どもたちと教育に広く、深くダメージを与えている新自由主義と新国家主義を批判し、その対抗軸を明らかにすること、そして子どもの学習権を具体的に保障する教育条件整備に向けた理論と運動を励ますことを今年も課題としてきました。


2.2013年度の合同学習会の経過

●第1回  「安倍政権の教育政策」で学校・教育はどうなるか
2月17日(日) 教育文化センター301号室
   講演:「安倍政権・教育再生実行会議の政策分析」
       講師:石井 拓児 氏 (愛知教育大学 教職大学院 准教授)
 現場からの報告〜交流
     府議会報告(成宮さん)、京都府の教育予算について(新谷)
 まとめと閉会あいさつ・・・市川 哲 氏 (研究会代表)
 ■参加:24人 宇治久世2、相楽1、綴喜1、乙訓1、亀岡1、市教組3、京教組4  13人
         センター4、退教1、府会議員1、市会議員・事務局2、ほか3  11人

●第2回 教育委員会は不要なのか!?
5月18日(土) 市職員会館「かもがわ」
   講演:「教育委員会制度論の系譜と改革の課題」
       講師:土屋 基規 氏(宝塚医療大学・神戸大学名誉教授)
   報告@「京都府の教育委員会・教育行政について」…京都府職労教育支部
   報告A「『いじめ防止条例』の動向」…葉狩(事務局)
   まとめと閉会あいさつ・・・市川 哲 氏(研究会代表)
 ■参加 21人 宇治久世3、綴喜2、市教組1、府高1、市高1、京教組2  10人
        センター4、府職労教育支部1、教科書ネット1、追手門学院大1、舞鶴退教1、府会議員1、亀岡市議1、ほか1  11人

●第3回 高校教育問題を考え合う
11月24日(日) 教育文化センター 地階会議室
   講演:「高校教育の展望を探る−「適格者主義」をのりこえるために−」
        講師:佐古田 博氏(京都府立高教組 委員長)
   報告@「2013年度山城地域入学選抜状況」…府高南山城ブロック(篠原)
  報告A「高校教育制度を考える」…我妻(事務局)
   まとめと閉会あいさつ・・・市川 哲 氏(研究会代表)
 ■参加 23人 宇治久世1、綴喜1、市教組1、府高5、市高1、京教組3  12人
        センター5、「30人学級」1、新婦人1、名古屋大1、府会議員2、ほか1  11人

●第4回 安倍「教育改革」の批判的検討と私たちの課題
―府知事選を前に教育行政のあり方を考える―
(教育センター研究集会、兼第4回合同学習会)  12月22日(日)教育文化センター301
  基調報告:安倍自民党の教育政策−「日本を取り戻す」ための教育とは?−」
・・・市川 哲氏(地方教育行政研代表)
  特別報告: 府政を変えて、どの子も大切にされる教育を・・・相模光弘氏(京教組教文部長)
  報告@ 「学校統廃合問題と地域に根ざした教育実践」・・・畔柳晋介氏(福知山市教組)
  報告A 「スモール イズ ビッグ―小さい学校の大きな可能性―」・・・府金 清隆氏 (綴喜教組)
  報告B 京都府議会での教育関係の論戦から ・・・山内佳子さん(府会議員)
 ■参加12人  綴喜2、乙訓1、福知山1、府高1、京教組1、センター2、府会議員団1、他2


3.2014年度研究活動の方針

 新自由主義教育改革が、学校・教職員にもたらしてきた多くの弊害は、子どもや保護者に対して「不利益」や「困難」をもたらす結果にもなっています。新自由主義的傾向がさらに強められようとする現局面を、様々な角度から批判的に学習することと、それらに対してどのような実践や運動を進めてきているのかを交流することがますます求められている情勢だと言えます。

 安倍「教育改革」を推進する立場で、昨年4月25日に中央教育審議会が「第2期教育振興基本計画」を文科大臣に答申しました。さらに、安倍首相が主宰する教育再生実行会議は、「いじめの問題等への対応について」(第一次提言)(平成25年2月26日)「教育委員会制度等の在り方について」(第二次提言)(平成25年4月15日)「これからの大学教育等の在り方について」(第三次提言)(平成25年5月28日)「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」(第四次提言)(平成25年10月31日)と、矢継ぎ早に多くの問題を含んだ提言を発表し、法案提出や制度化を狙っています。

 私たちは、そのねらいと問題点についてもていねいに分析しつつ、「すべての子どもの人間らしい成長・発達を保障する教育を願う立場から、子どもたち、父母、教職員の願いをふまえた教育条件を整備する計画の策定を強く求めていく運動」をすすめていく立場で学習活動をすすめていきたいと思います。

 そこで、2014年の研究活動のメインテーマは昨年に引き続き、「具体化する新自由主義とどうたたかうか」とし、この間の研究を継続発展させる内容で取り組みます。

 今年度も研究会活動の中心に京都教職員組合との「合同学習会」を位置づけます。これは組合員だけではなく、誰でも参加できる開かれた学習会であり、そのため広くビラ・インターネット等を通じて学習会の内容や研究成果を知らせていきます。

研究課題としては、

1.新自由主義の具体化とのたたかい
@教員政策に表われる新自由主義とたたかいの方向−教員評価、研修、給与、免許更新制−
A学校〜行政の関係に表れる新自由主義とのたたかい−学校と教育行政、教育委員会制度、父母・住民と教育行政参加−
B子どもの学習権と新自由主義−貧困とのたたかいと学習権保障、生活保護・就学援助制度、−
C新自由主義による学校政策のもとでの子ども、親、住民、学校の共同−新自由主義的な「学校づくり」をのりこえる教育運動を展望する−
D新自由主義と教育運動−われわれが情勢を切りひらく方向を考える−
  教育研究者とともに、政治学、経済学、法学などの研究者に講師依頼して、専門的な立場から分析していただく。

2.当面する教育政策を分析して、実践・運動に生かす
@“貧困と子どもの教育”や“教育費政策の貧困”
   「現状分析」〜「貧困を生み出す社会背景」〜「社会的平等(平準化)と学校(教育)」〜「教育運動と社会運動の結合」  など
A“政治と教育” “震災、原発問題をめぐる国政と地方自治”
  「安倍政権の『教育再生会議』の批判検討」〜「新自由主義教育改革路線の継続」〜「橋下・大阪維新の会の市・府議会条例と教育行政」
B“教育振興基本計画”や“土曜活用問題(学校6日制)”
  「第1期(08年7月〜12年)の批判検討」〜「第2期(13年〜17年)に向けた中教審の論議と地方教育行政の先取り的動きの批判検討」
C“学校教育実践・教育内容への介入やおしつけと多忙化”
    「新学習指導要領・教科書をめぐって」〜「学力テストの動向」〜「学校評価」
D“教職員定数・配置と学級定数”
    「小学校専科教員」〜「加配教員の採用と位置づけ(非常勤、ボランティア)」
    〜「少人数学級(30人学級)」〜「青年教職員の増加と定年延長について」
E“教員免許更新制の廃止と研修制度”
    「更新制実施から4年目」〜「廃止(改正?)への見通し」〜「京都府や各自治体ごとの研修の実態と問題点」〜「のぞむべき研修のあり方と実践」
F“(幼)小中(高大)一貫教育と統廃合”
    京都府下ですすめられている「小中一貫教育」

 また、事務局体制をさらに強化しつつ、継続的に研究を推進していくことを意識的に取り組みます。
@ 教組としての課題意識と、行政研事務局員の課題(研究テーマ)を出し合いながら学習会の計画を立案する
A 学習会のメイン講師の講演と、現場実践・運動(学校、行政、地域での取り組み)報告2〜3本を基本とする。
B ビラの作成とともに、組合各支部や各種団体等へ可能な限り広範に知らせるように工夫することで、様々な立場の方や若者達の参加を意識的にすすめる。
C 会員(登録者)へのメール配信、各支部教組へのFAX送信をできる限り早期(1ヶ月以上前)に行ない、参加組織・集約を強める。
D 学習会の内容等をファイルするとともに、整理して「発信」する。

4.研究会員と体制

代表者 市川 哲
事務局 葉狩宅也、大西真樹男、奥村久美子、新谷 剛、田中正浩、我妻秀範、本田久美子
会員   東 辰也、新井秀明、石井拓児、磯村篤範、井上英之、射場 隆、植田健男、
     大前哲彦、大和田弘、梶川 憲、佐野正彦、末富 芳、竹山幸夫、野中一也、
     藤本敦夫、柳ケ瀬孝三、山本重雄、吉岡真佐樹、淀川雅也、

 
 「京都教育センター年報(26号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(26号)」冊子をごらんください。

事務局  2013年度年報もくじ


              2014年3月発行
京都教育センター