事務局 | 2009年度年報もくじ |
第2部 教育センターと各研究会の活動 生活指導研究会・2009年度活動のまとめ 築山 崇(生活指導研究会事務局) |
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1.2009年度の総括 生活指導研究会では、2009年度、3回の研究例会と公開研究会を開催し、第40回教育センター研究集会では、「生きづらさの時代の生活指導」をテーマに分科会の企画・運営にあたった。3月には、研究集会分科会での議論を受けて、キャリア教育の実態を中心とした研究討議を予定している。 経過(2009年2月〜2010年1月) 3月14日(2008年度第5回研究例会) 第39回研究集会生活指導分科会の振り返りと2009年度の研究計画についての議論 研究集会の振り返りの議論から始めて、山城地域の状況報告を受けての議論で、現状の困難を読み解くいくつか重要な論点が明らかになった。 キーワード的にあげると、 @柔軟で、タイムリーな指導を縛っている学校運営 A中学年期の子どもたちの生活内容(経験)の問題 B「中1ギャップ」「小中一貫」など、新しさを装っているが、本質を外した指導観 C小学校高学年で、かつての中学校の荒れのような状況が見られる“変化” D「学力重視」の掛け声の下で進められている“異常な”体制E学校を越えて、課題で交流しあう教員組織の動き、 などがある。 これらの論点を手がかりに、次年度は、まず前半、小・中学校に絞って、問題状況の分析と今日的な状況を踏まえた指導のあり方、教師の集団的な研究・実践交流のあり方を探るために、原則として隔月で例会を開き、秋のセンター公開研で、問題の整理と実践交流の企画をもつという計画が確認された。 5月23日(2009年度第1回研究例会) 府南部小学校からの報告「気になる子をつなぐ教師の役割」 4年生の時に「崩壊」したクラスを担任し、「このままだと、自分はつぶされてしまうなあと、本気で危機を感じた」ところからのスタートした実践の報告。 暴力的でわがまま、教師に一番辛らつな言葉を投げて傷つけようとする生徒に、「何をしても、このクラスの中であなたは生きているのだ、みんなが見ているのだということを伝えたいと思いました」と、クラスの集団と“つなぐ”ことを重視している。また、暴力やわがままな行為に追従してしまう子どもたちにも、クラスという集団(仲間)を、「子どもらが戻っていく場所」としたかったと述べている。 さらに、「どんなに荒れていたって、心の中をのぞけば、まっとうな行動をとりたい、親や教師や何より仲間から、へぇ、やるねぇー、がんばってるなぁ、すごいやんと褒めてもらいたい、がんばれば変わっていける、成長していける自分であると実感したい、周りの人間からそう見て欲しい、子どもたちはみんなそう願っている」、「どんなに時間がかかっても、子どもたちの願いにそった実践を進めること、目標から遠くても教師が揺るがないこと」という、“子ども観”“教師観”は、非常に大事な内容を含んでいる。 最後の、「やっぱりみんなの仲間でいたい、でもその思いを素直に出せない、その術を知らない『気になる子』の手を、まわりの子らのたくさんの手としっかりつないでやる、教師は接着剤?であればいいのかな」という思いも、現代の子どもたちの願いの本質をとらえているのではないかと思われる。 併せて、提起されている「今の子は、周囲の人間の『眼差し』にとても敏感」という指摘も、論点として重要である。 7月4日(2009年度第2回研究例会) 報告:「ネット・ケータイと子どもたち」(府南部) 7月例会では、中学生、中学校の実態の報告をもとに議論した。 『ネット・ケータイと子どもたち』と題した報告では、週30〜35件の問題行動指導のうち、およそ半数がネットがらみで、ネット上でのいじめや、ネットでのつながりによる非行の広域化など、「親も教師も知らないところで、深く静かに、確実に進行していると思われる」という状況が、具体的に報告された。 補足報告では、暴力、教師反抗、エスケープ、授業妨害が頻発した2008年度の状況について、学年方針をもとに報告された。学年方針では、学年の教師間、学校生指との緊密な連携・情報の共有と並んで、関係機関との連携による、強い指導の事例が紹介された。また、保護者の協力を得ていくことに関連して、「他校とのつながりでも厳しい対応を強いられる、トップグループの生徒」については、生徒間のつながりや、家庭状況など詳細な状況を含めた内容が紹介され、特に不安定な家庭状況におかれた生徒への対応の困難さや、荒れる生徒たちの居場所となっている母親の存在など、リアルな状況が報告され、親・家庭への支援のあり方・可能性を探る議論が交わされた。 9月19日(2009年度第3回研究例会) 5月、7月の2回の研究例会の内容のまとめが報告され、最近の子ども状況についての意見と、11月の公開研究会に向けての議論をおこなった。 ■小中学校における子どもたちの実態と生活指導の課題について(おもな意見) ・子どもの体験的活動が認識発達・人格(社会的能力)形成にとってもつ意味、各発達段階で何がどう育っていくのかなどについて、教育カリキュラムとの関係で研究していくことが重要だと思う。体験的活動では、大人が楽しむ姿を子どもたちに見せていくことも大切だと思う。 ・家庭生活の困難そのものを背景とした、問題行動(指導困難)ケースが増えている。 ・児童自立支援施設で暮らす子どもたちの層が変化している。一時期、不登校など非社会的な問題傾向のケースが多かったが、再び非行傾向のケースが増えているように思われる。 ・端的に言って、「もう少しお金があれば解決するのになぁ・・・」と感じるケースが増えている。 ・中学生では、携帯による情報ネットワークで、問題行動の広域化が見られるが、夜間に家の外に出て行動している生徒が40人程度(1中学校の生徒数の5%程度)いる。 ・中・高所得層の子どもたちにも、進学などプレッシャーを抱えている状況がある。 ・地域の教育力の組織化に関連して 民生児童委員協議会、少年補導委員会、防災組織など35団体から構成される「地域ふれあいネット」という組織が、学校が音頭をとるかたちで作られている。 11月29日 公開研究会 「子どもの貧困」をめぐる議論に見られる日本社会の構造的変容と、小学校(高学年)での最近の問題状況を中心に、生活指導をめぐる今日的な状況を分析し、新たな実践の展開方向や研究の課題を探った。 報告 いずれも、京都南部の小学校からの報告 1.「一度切れた絆を築きなおすには」 教師と、そして子ども同士の、“切れてしまった絆”を何とか築きなおしたいと思い、時には立ち往生しながら、子どもたちと関わってきた1年間の記録から 2.なんとかしたいという職員の強い協力をバネに 2.「貧困率15.7%」に象徴される今日の日本社会の矛盾が生み出す新たな困難を、教職員そして父母相互の理解・協同のちからで切り拓いていく学校づくりの試み」 以上の2つの報告に加えて、生活保護ケースワーカーからの意見も交えて、子育て家庭の抱える困難について議論した。 また、事務局からは、生徒指導におけるキャリア教育の強調など、最近の.行政・官製生徒指導の動向、学会等研究動向の資料提供をおこなった。 京都教育センター第40回研究集会 生活指導分科会(2010年1月24日) 本年度の分科会は、次のような内容で行った。(詳しくは、集会分科会報告参照) 分科会テーマ「生きづらさの時代の生活指導」 基調報告 報告者 [築山 崇・京都府立大学] タイトル「生きづらさの構造と生活指導-真に求められている連携のかたち -」 実践(現場)報告 1.子どもの世界に見る生きづらさ(小・中での実態と集団づくりの課題) 報告1:細田 俊史(京都市内小学校) 報告2:恩庄 澄(京都府南部中学校) 2.青年の進路と生きづらさ(高校における進路指導・キャリア教育をめぐる問題状況) 報告:石田 暁(京都府立高校) 3.社会福祉分野から見た、生きづらさ(討論参加) 生活保護業務にかかわっているケースワーカーより 2.2010年度活動方針 京都教研の生活指導分科会での議論や京都生活指導研究協議会の研究活動とも連携しつつ、子どもたちの学校・地域での生活実態、集団づくりや自治的諸活動の展開、生活指導(生徒指導)をめぐる教育政策(行政)の動向分析など、総合的な生活指導研究を進めていく。 1. 研究テーマ ◇2009年度京都教研や公開研究会等で、明らかになってきた、子どもたちの「荒れ」の状況のより正確な分析を進めると共に、小・中・高それぞれにおける学校の指導体制のあり方について、検討する。 ◇「子どもの貧困」の「再発見」が大きな社会的議論となり、全生研や生活指導学会でも研究テーマとなっている(「反貧困の生活指導」)状況も踏まえて、今日地の貧困の構造て特徴と生活指導の課題について、社会福祉分野の実践者・研究者の参加も得て、研究討議を進める。 ◇官製生徒指導の動向と、自治と人間的共感を育む生活指導実践のあり方の探求 ・キャリア教育をめぐる政策動向の把握と実態分析 ◇自治的諸活動の指導・集団づくりをめぐる今日の実践の到達点と課題について 2. 研究会の組織化のとりくみ 2009年度センター研究集会分科会の成果(参加者のひろがりと課題の明確化)を踏まえ、参加者の輪を福祉分野など関連領域にも広げて、多角的な議論・研究を目指す。 3. その他 毎回の研究例会のまとめを心がけつつ、昨年度までの研究活動の成果の集約にも努める。 研究会メンバー 代表・事務局 築山 崇 会員 (略) *追悼 本研究会代表として永年ご尽力いただいた加藤西郷先生が、2009年10月21日、ご逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。 |
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