事務局 2009年度年報もくじ

第2部 教育センターと各研究会の活動

京都教育センターの活動・2009年度総括

             大平  勲(京都教育センター事務局長)



1.第40回京都教育センター研究集会

 昨年同様の時期、1月23〜24日の二日間にわたって開催されました。 「学校と教育に自由と民主主義を!」のテーマを掲げ、昨夏の政権交代による民主政権下での教育事情を意識し、また、今春の京都府知事選を間近にした情勢下で研究討議が深められました。

 プレ集会では、昨年の旭丘事件当事者の山本正行氏に続いて、戦後の占領軍によるレッドパージで教壇を追放されながらも府立田辺高校に復帰した関谷健氏が「私が歩んだ戦後60余年の子どもの変化と教育」と題して講演。全体会記念講演では「石原都政の異常な教育介入とのたたかい」と題して、元都立七生養護学校長の金崎満氏が裁判闘争の到達点もふまえて講演。全体会後半のパネルトークでは3人の青年教職員がその苦労と喜びを縦横に語り、教育に自由と民主主義を確立するたたかいをこれからの展望に結びつけ参加者の共感を得ました。1日目にはのべ140人の参加がありましたが、今年も女性教研など他の取り組みと競合し参加目標には及びませんでした。

 しかし、二日目の分科会には8会場で130人の参加があり、この10年では最も多い到達になりました。とりわけ京教組各支部教文部長の運営協力もあり、現職教職員の参加が半数近く(56人)を占めました。各分科会では組合教研より幅広い参加者による討論などで深められ、センター研としての役割を示したものの、分科会によっては京都教研参加者とほぼ変わらないなどの状況もあり、今後京都教研とセンター研との区別と関連について検討していくことが課題となりました。

◇ プレ集会: 関谷 健氏 [1月23日(土)[10:00〜12:00] 69 人

 お願いした主旨に添ったお話を、86歳とは思えない元気なはっきりした口調で語っていただきました。淡々と語られただけに、予期せぬ「レッドパージの仕打ち」が関谷先生の人生をどれほどないがしろにしたかを深く受け止めて聞きました。この日のために年末から年始にかけて何度もセンターに足を運んでいただき、発達論による教育実践への執着をじっくりと語られました。22年間勤務した田辺高校での活動や実践は時間切れになりましたが、後の討論で30年前の「改革」の苦労を田辺高校の元校長の上村栄一氏や当時の分会長荒賀憲雄氏からリアルに語っていただき、関谷先生の存在の大きさを認識しました。

◇ 全体会記念講演: 金崎 満氏 [1月23日(土)  [13:00〜15:00] 70 人

 金崎氏自身、30年前に京都の与謝の海養護学校の実践から学ばれた思い出を披瀝され、氏を中心に編み出した豊かな性教育実践を土足で踏みにじった石原都政下の民主党都議やサンケイ新聞の攻撃を生々しく語られました。氏自身の不当な校長降格処分の取り消しを求めた裁判(地裁・高裁共に完全勝訴、現在最高裁で審理中)でのたたかいにもふれ支援を訴えられ、参加者は支援カンパで応えました。 また、この間の石原都政と一体になった都教委の管理と新自由主義による教育攻撃と破壊の実態を語り、それらが今、良識ある都民の力で破綻・見直しを余儀なくされている現状についても展望を持って紹介されました。

◇ 3人の青年教職員によるパネルトーク [1月23日(土) 15:00〜17:00] 60 人

 講演された2人とは半世紀分近くも若い3人の青年教師が、築山崇氏(京都府立大、センター研究委員長)のリードで、新採時からの苦労と喜びを縦横に語ってくれました。子どもとの関わりを求めながらも、会議や提出物に追われ子どもと関われないという辛い心情を語り、一方ではこれでは自分がダメになるとの思いから青年教職員を結集していく苦労多い取り組みを紹介されました。夢を広げながら奮闘する決意を持ちながらも、これからの自身の子育てや組合の行方などにも「不安と心配」を抱いていることを切々と訴えられました。参加者の多くは「良き時代」の青年時代をくぐってきただけに、信じがたい現状に驚きながらも、励ましと共感の表情で聞き入りました。

◇ 8研究会による8つの分科会 [1月24日(日) 10:00〜16:00] 130人

 ※プレ集会、記念講演、パネルトーク、8分科会の内容詳細は第1部に掲載


2.公開研究会の開催

 各研究会による研究会については後頁の「研究会活動のまとめ」を参照していただくとして、ここでは事務局が各研究会とリンクして企画準備した公開研究会についてその概略は以下の通り。

(1) 「新学習指導要領批判連続学習会W:高校での学力保障をどう見通すのか」

  5月21日  26人参加   [学力・教育課程研究会主催]  
○ 講演「高校の学習指導要領改訂と学力保障」 鋒山泰弘氏(追手門学院大)
○ 報告 @「中学校での基礎学力保障」 西原弘明氏(市立洛北中)
    A「定時制の教育と学力保障」 谷口藤雄氏(府立福知山高校三和分校)
    B「義務教育までの基礎学力保障の取り組み」 平野健三氏(府立朱雀高校)

(2) 「戦後、1950年代における教育運動・教職員組合運動を検証する」

   9月13日(日)  50人参加  
○ 挨拶 田中 聡氏(戦後歴史学ワーキンググループ代表)
○ 講演 「戦後、京都における教育をめぐる状況――教職員組合運動の位置づけについて」           生駒佳也氏(徳島市立高校教員、元京都大学大学院教育学研究科)
○ 特別報告 「戦後、沖縄における教職員運動――地域における教職員の役割」               櫻澤 誠氏(立命館大学・日本学術振興会特別研究員)
※ 田中氏挨拶、生駒氏講演の要旨は後ページに[資料]として掲載しています。

(3) 「子ども達の発達と科学的認識――人の進化と発達――」

   9月26日(土) 17人参加  [発達問題研究会主催]
○ 講演 「発達・進化からみた野外活動の意義」 好廣眞一氏(龍谷大学人類学教授)

(4) 「地域で育つ子どもたち」

   10月12日(日)17人参加       [子どもの発達と地域研究会主催]  
○ 講演 「子どもたちの居場所づくり――“本物体験”を通して」
                      西尾直子氏(京都子ども勉強会サポートクラス)

(5) 「子どもの貧困と“荒れ”に立ち向かう」

   11月29日(日)  17人参加     [生活指導研究会主催]  
○ 報告@「一度切れた絆を築き直すには」 中山智子氏(京都南部小学校)
     A「何とかしたいという教職員の強い協力をバネに」 保田雄大氏(京都南部小学校)


3.教育研究集会などへの参加

・東京で開催された「2009全国のつどい」には、教育センターから共同研究者として(山崎、浅尾、植田、高垣、春日井、細見、工藤)の各氏が参加したほかに野中、中須賀、倉本、大平の各氏が参加しました。

・ 第59次京都教育研究集会(11/14,15 龍谷大学大宮学舎)には二日間で共同研究者としてのべ58名(昨年51名)の参加があり、各分科会での任務を果たしました。給食や文化などは新たに配置できたものの、理科・技術家庭・体育、幼年の4分科会には引き続き共同研究者を配置できない(他に2分科会未成立)など課題を残しました。

・ 京教組の民主教育推進委員会には26人(5/9)、20人(9/12)、25人(11/1)が参加しました。なお、第18回全国教育研究交流集会(1/23、24 長野)にはセンター研と日程が重なり参加できませんでした。

・ 他に昨年度から取り組んでいる学費の無償化をめざす取り組みに関して「ゼロネット実行委員会」に参加し、京都での全国集会(9/7)や大集会・パレード(11/29)に参加しました。また、府北部や宇治、京都市などでの学校統廃合、小中一貫校問題などにも各団体と共同して取り組みに参画しました。


4.季刊誌「ひろば・京都の教育」の発刊

・ 158号(5/20)   特集 @学級集団づくりと教師の役割  A保護者と教職員の協同関係

・ 159号(8/5) 特集 @子どもをどう捉え、豊かな成長・発達を支援するのか A検証!教職員の研修

・ 160号(11/11) 特集 @発達障害のとらえ方と特別支援教育の今後 A地域における子育て支援のネットワーク

・ 161号(2/15) 特集 @教職員の葛藤と自己形成 A学校統廃合と小中一貫教育

 これらの特集をテーマにして今年度も春日井編集長を軸とした刊行委員会の尽力で、季刊4回の発刊をすることができました。また、毎回の発送には多くの方々がボランティアで協力いただきました。定期読者は退職者などの減誌分をカバーすべく事務局員を中心に拡大訴えを行い、一定の成果が見られました。


5.出版活動

(1)「京都教育センター年報22号」を例年通り3月に発行し、京教組定期大会代議員、共同研究者、各県研究所などに配布しました。活用しやすくするために、編集上の改善を図りました。

(2)2006年5月に復刊した「センター通信」は4年目に入り、今年度も8月を除いて月刊ペースで発行し、全職場組合員、「ひろば」全読者、関係者に配布しました。2,3面の「授業づくり」「学級づくり」の実践報告は今年度から隔月後交互の2頁だてとし、学校現場でも読まれ期待が高まってきています。


 ※今年度の執筆者
発行月 1面(主張) 2面(授業実践) 3面(学級実践)
32 4月 吉田文子 秋山吉則(市高) 吉澤はつ江(宇小)
33 5月 原田 久 清水鉄郎(乙小) 木下淳史(市高)
34 6月 梶川 憲 浅尾紘也(教育センター)
35 7月 築山 崇 和気政司(綴小)
36 9月 市川 哲 久田晴生(府高)
37 10月 倉原悠一 土肥照典(市小)
38 11月 高橋明裕 水谷徳夫(府高)
39 12月 中須賀ツギ子 小村美幸(市小)
40 1月 浅井定雄 竹内真知子(与小)
41 2月 大平 勲 石河正伸(乙中)
42 3月 西條昭男 深澤 司(綴小)

(3)来年度、設立50周年を記念して「自民党府政下30年間の京都の教育」(仮題)と「早川幸生の歴史たまてばこ」の出版に向けての編集会議を11月より開始した。

(4)その他、各研究会作成の会誌や通信、ニュースなどを配布。


6.研究活動

 8つの研究会がそれぞれ独自に研究活動を展開しています。年間3回の拡大事務局会議でそれぞれの報告と交流を行っています。(各研究会報告を参照)


7.資料室の整備・活用

 この間、関係者の尽力により資料室の整備がすすみ、全国の定期刊行物のバックナンバーが整理された。また、この資料室を活用する形で「歴史ワーキンググループ」の若手研究者が戦後教育の研究を系統的にとりくみ、卒論・ゼミなどの資料検索、閲覧に全国から学生が訪れています。

 故室井修氏、故有吉孝雄氏の遺族から貴重な文献・資料などが寄贈されました。


8.事務局体制

・事務局会議は(16名構成)は3週間に一回のペースで下記の日程で17回開催され、毎回7割〜8割程度の出席のもとに議論を深めてきた。企画検討会議(月一回)や拡大事務局会議(学期一回)も計画的に開催された。実務事務局体制の強化や規約問題、50周年を迎えての今後のセンターの発展について引き続き議論を深める必要がある。

※ 事務局会議:4/11,5/2,5/23、6/13,7/4,7/18,8/8,9/5,9/26、10/17,11/7,12/5,12/19,1/9,1/30、2/20 、3/13

・ 浅井定雄氏の尽力によるホームページは6年目に入り豊かな内容を迅速に掲載され、関係者や幅広い人びとから一定の反応が返されてきている。


[体制]   

◇代表:野中一也(大阪電気通信大学名誉教授)   
◇研究委員長:築山 崇(京都府立大学教授)   
◇「ひろば」編集長:春日井敏之(立命館大学教授)   
◇事務局長:大平 勲(元公立中学校教師)   
◇事務局次長:中西 潔(元公立中学校教師)

――事務局メンバー―― (上記以外)

◇高垣忠一郎(立命館大学教授) 
◇市川 哲(京都教育センター) 
◇倉本頼一(立命館大学) 
◇高橋明裕(京都教育センター) 
◇中須賀ツギ子(元公立小学校教師) 
◇倉原悠一(元公立高校教師) 
◇浅井定雄(元公立小学校教師) 
◇西條昭男(元公立小学校教師) 
◇東 辰也(京教組教文部長) 
◇寒川正晴(市教組教文部長) 
◇佐野幸良(府高教文部長)
◇事務活動担当として小田貴美子氏に協力していただいています。    

◇「研究員」の登録

 退職教職員を中心に依頼し、センター企画のとりくみなどを案内し、希望により各研究会のメンバーになっていただく候補者として登録する制度。一昨年度より開始し、30名の方々に登録していただいています。

 ※各研究会の体制・構成については、研究会活動報告を参照。

 「京都教育センター年報(22号)」の内容について、当ホームページに掲載されているものはその概要を編集したものであり、必ずしも年報の全文を正確に掲載しているものではありません。文責はセンター事務局にあります。詳しい内容につきましては、「京都教育センター年報(22号)」冊子をごらんください。
事務局 2009年度年報もくじ

              2010年3月
京都教育センター