事務局 | 2009年度年報もくじ |
第2部 教育センターと各研究会の活動 学力・教育課程研究会・2009年度活動のまとめ 小野英喜(学力・教育課程研究会事務局) |
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1. 2009年度の活動のまとめ
今年度の活動方針として、次のテーマで研究活動を進めることができた。 A)部会の研究活動については、「ア)改訂学習指導要領と評価について、問題点を明らかにして 改善の展望を明らかにする」ことと、「ウ)小学校から高等学校までの教育課程編成の課題を検 討する。」ことは、別記のような研究会の開催と、部会の開催で取り組むことができた。
B)学期に一回の例会を計画するについては、『学力・教育課程研究会』を例会として開催できた。 C)部会委員の拡充と恒常的参加の体制作りを進めるために、「委員の拡充によって部会の研究体制づくり」は、新しく事務局に加わっていただいた部会員として参加していただいた方を得る ことができた。 部会のニュース『学力・教育課程研究部会便り』の発行は、3回に止まった。しかし、「イ)2009年度予定している全国学力テストの問題点をより鮮明にし、子どもの学力の変化を各種の調査結果を収集し基礎学力の内容を確認する。」ことについては、具体的な手立てを取ることができず、取り組めなかった。また、学力・教育課程問題についての「資料配布」についても、藤原先生からの投稿などの一部は実現したが、会員の皆さんからの情報提供を集めることができなかった。 2.総括 1.部会の研究活動について 今年度は、昨年度に引き続き、学習指導要領の改訂に伴う教育課程づくりと学力保障をテーマに、昨年できなかった高等学校学習指導要領と教育課程について実践レポートを基にして公開研究会を開催した。26名の参加で充実した研究協議ができた。部会は、「学力とは何か」「学力保障は可能か」をテーマにして、3回の研究会を開催した。 今回の学習会の趣旨は、高校の学習指導要領の改訂が、学習内容の増加と全教科で道徳教育の強制や「言語活動の充実」など、これまでの「ゆとり教育」の方向転換を図ったことや、総則で強調している「義務教育段階の学習内容の定着を図る」ことについて、実践を基にして検討することであった。「義務教育段階の学習内容の定着を図る」ために、学習指導要領には高等学校に「学校設定科目」や「復習する時間」を設定しているのは、文部科学省にどのような意図があるのか、さらに高校の教育課程の問題としても、すべての子どもたちに確かな学力を保障する高校教育を進める上でも避けて通ることができないことの課題をどのように進めるかを検討した。 今年度は、部会の研究活動を再開し、準備会とあわせて下記のような3回の研究会を開催し、「学力とは何か」を協議した。この取り組みは、来年度以降の取り組みにつなげていくことが大切である。
2.公開研究会 公開研究会は、昨年に引き続き、「連続学習会W」として教育センター事務局との共催で開催した。基調報告「高校の学習指導要領改訂と学力保障」で鋒山泰弘先生は、「今回の改訂は、教科にまで道徳化が進むなど、多くの問題点を含むが、高校現場が抱える多様な学力実態に適応する学力保障と教育課程づくりを可能にする面があり、現場での実態をふまえた研修が急がれる。」と、今回の改訂の問題点とともに、改訂によって高校の教育課程の幅が広くなり、これまでの実践が教育課程に位置づけてより一層徹底できる要素があることを指摘された。
・「高校で培う基礎学力とは何か」と題した実践を報告した谷口藤雄先生(網野高校三和分校)は、昼間定時制の今日の学力問題と彼らの進路保障をどのように進めるかを生徒の学力実態と置かれている環境を具体的に挙げながら問題を提起された。例えば、三和分校は高校ではあるけれども特別支援学校のような特異な存在であること、中学校の進路指導がなされておらずとりあえず進学させている。希望する生徒をすべて受け入れるとどうなるかが典型的に見られる高校であり、現実問題として多様な高校生が存在しているときにどうするのか、知的障害がある生徒と普通の高校レベルの高校生とを同じ学力論で論じられるのか」という課題である。「せめて、一般就労できる小学校6年生レベルの学力をつけたい」、そのために、三和分校では、「基礎講座を週に4回設定し、算数・数学講座、漢字講座を開催している。それでも身に付かない生徒は放課後に残して特訓している。トライ学習とか分割授業をおこない、学力に応じた授業をしている。」ということを取り組んでいる。それでも平均卒業率は、65%で、卒業しても正規の職業に就くものは3%しかいない。行政による教育条件整備などの支援がないとこれ以上取り組めないことが報告された。
・「中学校で基礎学力を育てる」といテーマで西原弘明先生は、次のような実践を報告された。「入学時に小学校時の漢字と計算のテストをすると、低学年の内容からできていない生徒がいて、学力格差が大きい。このままでは中学校の学習に参加できないことから、毎日10分間の回復指導をしている。毎日10分間を一週間で1単位にすることについて、当初教育委員会はクレームを付けてきたが、学力向上に役立つことが分かると何もいえなくなり、現在も続けている。」生徒の荒れは、学力がついていないことから起こり、学力保障が何よりも重点的に取り組むことであることを西原先生は強調された。 社会科の授業と評価について、「わかる授業をどのように展開したか、形成的評価をどのように工夫したか、授業の中で不十分なところを補う方法など」を重点に取り組むことであることを具体的な教材と評価の問題と副表を示し報告された。 ・「義務教育までの基礎学力保障の取り組み」というテーマで平野健三先生は、入学前に実施している基礎学力テストの結果、小学校で学ぶ割り算や小数の計算ができないことがわかり、「脳と学力を鍛える基礎ノート」という140ページのテキストをつくり、「総合的な学習の時間」に全員を対象にした特別の授業で学力回復をしている取り組みを報告した。「脳と学力を鍛える基礎ノート」は、数学や国語だけではなく理科、英語、社会、家庭科などの教材も加えてつくられたものである。 <参加者の感想から> ・子どもたちの「低学力を作り出している文教政策」の無責任さに対して、これを克服するための教訓を学んだ。すなわち、学校における学力保障の取り組みは、一人ひとりではできないこと、いかに教職員集団(保護者との懇談・協力)を形成していくかということがポイントの一つである・・・などと、厳しい今日的状況さえも当然のことと改めて感じた。(淵田) 3.研究会 〇9月27日 研究会兼拡大事務局会議・・・第40回センター研究集会第3分科会の内容の検討。今日の学力問題を検討することを研究会のテーマにすることを決定する。 〇11月21日 問題提起者を作らず参加者から「今日の学力問題」について発言を受ける。「学力保障」という用語について批判的な意見やその必要性を主張する意見が出た。 〇12月20日 鋒山先生の問題提起を受けて、学力とは何かを議論した。 読み書き計算という基礎学力を身につけることの意味やそれらがPISAの学力を身につけることとの関係が最初の議論になった。中学校や高校で小学校の基礎学力を回復する意味について、実践している先生方から積極的な意義と困難点が出された。この問題は、引き続き2010年度の研究テーマにすることにした。 〇1月23日 第40回京都教育センター研究集会第3分科会を担当する。詳細は、研究集会「第3分科会のまとめ」を参照。 3.今後の課題 学習指導要領の改訂に引き続き、前倒し実施が進み、総則部分が実施されることになり、「ゆとり」が一変して「時間不足」や「特急授業」が始まり、問題が起こっている。教科書の改訂も進み、来年度以降、教科書の採択や道徳教育の実施計画の作成など、改訂学習指導要領は2010年度から各学校で具体案が検討されることになる。 高校の学習指導要領に新しく書かれた「義務教育の内容を保障する」ことの意味の検討とともに、これに関係する学校と無視できる学校とに分離し、来年度から具体化が進む一方では、より激しい進学競争に特化する学校も出てくるなど、学校教育法の改訂の「高校教育の目的」が顕になることが考えられる。 教育評価については、学校教育法に学力内容を規定し、観点別絶対評価の4観点を全く異質の3観点に変更するなど、学力評価についても大幅に変更される。今までの評価のどこに問題点があったのかを明らかにして、対応しなければならない。 本研究会としては、来年度も引き続いて学習会を例会として開催し、今日の学力と教育課程に関する問題点を明らかにし、学校で対応できる対策を検討する。 4.2010年度の方針と部会の研究計画 1. 部会の研究活動 (1)改訂学習指導要領と評価の問題点を明らかにして改善の展望を明らかにする、 (2)子どもの学力の変化を各種の調査結果を収集し基礎学力の内容を確認する。 (3)小学校から高等学校までの教育課程編成の課題を検討する。 (4)学期に一回の例会を計画する。各種民間研究会と合同して、『学力・教育課程研究会』を例会として開催する。 (5)部会委員の拡充と恒常的参加の体制を作り「委員の拡充によって部会の研究体制づくり」と、部会のニュース『学力・教育課程研究部会便り』の発行を続ける。 学力・教育課程の「資料配布」を会員からの情報提供を受けて積極的に進める。 2.研究会の体制 【部会委員】 (略) 【事務局】 代表・ 鋒山泰弘 事務局員・ 市川章人、 久保 齋、 平田庄三郎、 西原弘明、 淵田悌二、中西 潔、 和田昌美、 小野英喜 |
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