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教育基本法「改正」案に反対し、廃案を求めるアピール


                                   2006年5月3日

 去る2006年4月13日、与党教育基本法の改正に関する協議会は、「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」をまとめ、政府に対し、法案の速やかな取りまとめと国会への提出を要請しました。

 これを受けて政府は、4月28日、教育基本法「改正」案を閣議決定し、国会に提出しました。

 教育基本法「改正」をめぐっては、政府や与党の内部から、現在の子どもたちや学校をめぐる問題、社会問題について、あたかも教育基本法に問題があり、教育基本法を「改正」すれば、それらの問題が解決するかのような発言が相次いでなされています。

 しかし、今回、国会に提出された教育基本法「改正」案では、義務教育について「9年の普通教育」という文言を削除する(第5条)とともに、政府が「教育振興基本計画」を定める(第17条)ことにより、子どもたちを、義務教育段階から行政のすすめる競争主義的教育の中に取り込もうとしています。これは、新自由主義・構造改革路線のもと、子どもたちを一個の人格、一人の人間としてではなく、人材すなわち労働力と捉え、ごく一部のエリート以外の子どもたちに対する教育を切り捨てていく「教育改革」の延長線上にあるものです。

 現行の教育基本法において、教育は「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」を目的とするものとされています。現在起こっている問題は、教育基本法に問題があるのではなく、上記の「教育改革」のもとで、教育基本法の定める教育の目的が実現されてこなかったことに問題があるのではないでしょうか。

 教育基本法「改正」案では、上記最終報告をうけて、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が、教育の目標として定められています(第2条5号)。

 しかし、国や郷土に対してどのような感情を抱くかについては、あくまで個人の内心の問題です。感受性豊かな子どもたちに対して、一定の感情を抱くことを教育することは、まさに内心の強制、愛国心の強制に他なりません。昨今の「日の丸」、「君が代」をめぐっての行政当局によるしめつけを見れば、この愛国心の強制が教育にもたらす弊害は明らかです。

 愛国心教育により、戦前のように、教育現場で国家主義が過度に強調され、国家のために尽くす子どもがつくられることにもなりかねません。今、行われようとしている教育基本法「改正」は、日本国憲法第9条の「改正」と相まって、日本を戦争することができる国家に変えようとするものです。

 上記最終報告は、与党が、すべて非公開で国民の声が全く届かない形で協議を進めてきたものであり、その手続面を見てもとても問題です。

 教育基本法は、教育の根本理念と原則を定めたものであり、私たちにとっても、子どもたちにとっても、とても重要な法律です。それが、国民の中で十分に議論されないまま、密室の中での「改正」協議をもとに法案が作成されるのは問題です。国民の中で十分な議論を尽くし、教育における「子どもの最善の利益」の実現をめざしていくべきです。

 私たちは、上記最終報告に基づく、教育基本法「改正」案に強く反対し、廃案を求めます。



アピール呼びかけ人

           鯵坂  真 (関西大学名誉教授) 

           安保 千秋 (弁護士) 

           金子 欣哉 (元京都府教育庁) 

           佐伯 快勝 (真言律宗宗務総長) 

           佐伯 幸雄 (同志社協会牧師) 

           茂山千之丞 (狂言師)

           鶴見 俊輔 (哲学者) 

           出口 治男 (弁護士) 

           野中 一也 (大阪電気通信大学名誉教授)

           広原 盛明 (元京都府立大学学長) 

           村井 豊明 (弁護士) 

           山下 綾子(弁護士)

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