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声明


  教育基本法の「改正」を至上命題として発足した安倍政権は、衆議院での与党単独の採決強行という異常事態に続いて、昨夜参議院本会議において自公与党が野党反対のなか審議を打ち切り、採決を強行し「法案可決」の暴挙を断行しました。ほとんどの教育関係者や法曹界をはじめ多くの国民が廃案を求め、今国会では慎重な徹底審議を求め、拙速な成立は見送るべきとの圧倒的世論を無視したままに。そして、この間に浮上した「いじめ自殺問題」「高校単位未履修問題」やタウンミーティングでの「さくら動員」「やらせ発言」の決着などを横に置いたままに。

 私たちは、戦後60年にわたって教育の憲法として光り輝いた教育基本法を議論も尽くさないままに改悪したこうした「政治的蛮行」に対し憤りをもって強く抗議するものです。そこには、国民の世論をかえり見ない政権与党の驕りと傲慢のみがあり、教育の条理が入り込む余地を封じる議会制民主主義破壊の実態があらわに示されました。

 しかし、国会を延長してまでもの強行を許したものの全国的に展開されたこの間のたたかいは、「国会の数と時間」だけに依拠して逃げ切ろうとした政権与党を土俵際まで追い詰めました。「改正」という形で決着をつけられたものの、論戦や宣伝などでは私たちの側が圧倒していました。知名度が必ずしも高くなかった教育基本法を条文そのものの意味を含めてグレードアップさせ、わかりにくいとされた教育の問題をその本質に迫って子どもと教育にとって何が大切なのかを周知することができました。その背景と力になったこととして次の三つのことがあげられます。

(1)何よりも教育基本法のもつ理念の高さ、すばらしさが明快となりこれを改変する根拠がことごとく崩れ、国会最終盤での朝日新聞調査でも「基本法を変えると教育はよくなる」と答えた人は僅か4%にすぎないことが示されたこと。

(2)「いじめ自殺」や「高校単位未履修問題」など相次いだ教育問題の解決は教育基本法を変えることではなく、基本法を生かしてこなっかた教育行政の不備がそこにあったことが浮かび上がってきたこと。

(3)教育関係者をはじめ日本弁護士会など幅広い団体や労働組合などがこの問題を我がこととしてとりくみ、憲法改悪阻止闘争に連動する全国闘争が津々浦々で多様に展開され、政権与党を追い込み、最終盤での民主党の体たらくぶりがあったものの国会での「野党共闘」を支える力になったこと。

 こうした運動の到達点と教訓は今後に続く憲法擁護闘争へ継承されるであろうし、勇気を持って知恵と力を発揮すれば真実と正義の風が吹くことを証してくれました。

 京都教育センターにとっても教育基本法改悪に対するとりくみはこの数年間に及ぶものでした。

・ 2000年12月、当時の「教育改革国民会議」がその「最終報告」において「教育基本法の改正」を織り込んだことを受けて、2001年4月に鰺坂二夫氏ら16氏を呼びかけ人として「拙速な教育基本法見直しではなく、『百年の大計』にふさわしい、深い教育論議を望みます」との声明を発し259名の有識者からの賛同を得ました。そして2002年9月には中央教育審議会での見直し動向に鑑み、再度の「16氏訴え」を発しました。

・ 2004年度には基本法の条文ごとの理解を深める柱立てで、毎月の「連続(月例)学習会」を12回にわたって開催し、そのまとめとして一冊の本に著しました。2005年度も基本法を生かした教育実践と結んだ「基本法学習会2005」を6回にわたって続けました。

 そして今年度、戦後始めて教育基本法「改正案」なるものが国会に上程されるに及んで、センターとしての緊急の学習会を二回開催しました。「改悪待った!5・27緊急集会」(63人)では、野中一也代表が問題提起され、科学者会議京都支部と共催した「改悪反対9・23討論集会」(54人)では、石井拓児氏(名古屋大学)が講演されました。

  また、9月18日に鰺坂真氏ら20氏を呼びかけ人として『現行「教育基本法」の理念を否定し、教育の目的を覆す「教育基本法改正法案」の廃案を求めます』との緊急アピールを発信し、学者・大学人、教育研究者、文化人、宗教者、法曹界、元学校長、各種団体など京都の有識者1200余人に送付し、科学者会議京都支部などの協力も得て教育センターを事務局として、アピールへの賛同を求めるとりくみを一ヶ月半旺盛にすすめてきました。その結果、約半数の方々からの返信があり、回答者の98%を超える572名が廃案を求めるアピールに「賛同する」ことを表明されました。また、二百数十人の方々から多額のカンパも寄せられ、それらを基金として教職員組合とともに11月3付けの京都新聞に意見広告として表しました。

 「改正」議論の渦中にスタートした首相直属の「教育再生会議」では、すでに「改正」を前提とした教育施策の具体化検討に入っており、「改正」強行を受けて学校現場をはじめ各分野に「改革案」なるものが強制されることが懸念されます。来春4月に実施される全国一斉の学力テストをはじめ、習熟度別授業、「愛国心」授業と評価、学校・教職員評価と相まった学校選択制度の導入などが問答無用の形で強要される可能性があります。

 そうしたときあって、私たちは改めて教育基本法制定の理念に立ち返り「教育は何のために、誰のためにあるのか」を深く意識してとりくむことが求められます。すべての子どもたちの豊かな発達を教育の原点に据え、そのことを基軸にした教育活動や教育実践は子ども自身、父母、教職員の願いに合致することであり、不条理で非教育的な教育施策の押しつけをはね返す道理と力をもつものです。私たちはここに確信を持って、これまで以上に豊かで意識した活動や実践を旺盛に繰り広げようではありませんか。

 京都教育センターも現場のみなさん方とともにそうしたとりくみに学び、支える立場で奮闘し、憲法の改悪を絶対に許さないたたかいに決起していく決意を表明するものです。

                     2006年12月16日

                              京都教育センター
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