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京都教育センター第36回夏季研究集会
               第三分散会 記録(要旨)


−−身近な地域で教育・子育ての協同を語る−−

 
 ここに掲載した記録は、2005年8月27・28日に開催された「京都教育センター第36回夏季研究集会」の中で行われた分科会・分散会の内容を当日の記録にもとづいて京都教育センター事務局の責任でその要旨を編集したものです。文責は、京都教育センター事務局にあります。


 事前に活動紹介・報告等の依頼・組織をしていなかったため、参加者は、地域教育懇談会の取り組み、人形劇団活動、学童保育・児童館活動などの関係者5名と少数であったが、それぞれの分野からみた、子どもの地域生活の実態、学校教育との関係、父母・住民の地域活動のつながりづくりなどについて、次に紹介するような問題提起を入り口に、中身の濃い交流・議論が交わされた。


問題提起

−−父母と教職員が手をとりあえるように、教職員の苦労・困難を理解してもらえるための特別の努力の必要性−−

 ・・・例えば、「地域の行事に出る」などと言うことは、教師の「ボランティア活動」が強制されているわけで、「明日、採用試験を受けなければならない」常勤講師までが「動員」されているわけだが、しかし、地域の人にとっては「出てきた先生が熱心な先生」と映るし、また交流を通して親しみも涌いてくる。当然それは「出てこない先生は不熱心」ということになるし、「組合の先生だから」と不当な攻撃を受ける可能性も生じてくる。しかし、だからと言って「地域の行事に出て、父母・住民とつながりを作ろう」としても、そこには「学校という組織の一員として行動を!」という縛りがかかっている。

 また、「小学校の部活動指導」への教員の動員が、結局、教師の放課後の打ち合わせや仕事に「しわ寄せ」を生みだし、「長時間サービス残業」の原因の一つとなっているのだが、父母や地域の側から言えば、「子どものためにスポーツの場を提供してくれる」熱心な学校、熱心な先生として映る。

 学校現場には、このような父母・地域住民との「すれちがい」が余りにも多い。こうした中で、教師の思い、苦難を理解してもらうには、「教育懇談会」などで、「じっくりと話し合う」ことが大切なのだが、教師にはその時間すらないという状況がある。この困難をどう突破して、「教職員と父母・地域が手をつないでいくのか」ここに大きな課題があり、「特別な工夫と努力」が求められているのではないかと思う。


地域での子どもたちへの取り組み

 人形劇団活動に取り組んでいる参加者からは、学校、幼稚園・保育園などでの上演活動が減っている実態、その背景に、学校五日制や2学期制の中での「学力向上」のための「授業時間確保」、学校予算のあり方などがあることが指摘された。また、地域での上演には、劇団として一公演あたりの費用と参加者の負担の関係、会場や規模の問題など悩ましい問題が多いことも紹介された。

 学童保育・児童館活動に長年関わってきた参加者からは、子どもの自主的な活動の場として、いわゆる居場所としての学童保育・児童館の役割がいままでにも増して大きくなっている客観的状況と、とくに子どもの発達、人格形成にとって異年齢集団での活動や、遊びを中心とした文化的取り組みの大切さを強調する発言があった。


放課後の子どもたちの生活

 子どもの放課後の生活に関連しては、次のような実態も紹介された。

 習い事の種類は多岐にわたるが、児童一人平均週約6回(6.04回)の「習い事」になっている。小学校4年生の段階から、もはや「習い事漬け」になっていて、子どもたちは「放課後の自由時間を持たない」という状況になっている。そして、その内容も「塾の宿題が余りにも多い」「スポーツクラブの練習がハード」というように「過激」「過重」「詰め込み」になっているのである。


文化的活動の場を広げていくことの必要性


 以上のような実態をみたとき、子どもたちに教科学習を通じた学力形成とともに、学校外、地域・家庭での多様で質的に豊かな生活を保障し、人間的発達を実現していくための、学校・家庭・地域、教職員と父母・住民の協同の取り組み、演劇、音楽、スポーツなど文化的活動の場を広げていくことの必要性が痛感される。そのなかでも、今日特に注意を払い、力を注ぐ必要があるのが、冒頭の引用にもあるように、教職員、父母・住民という異なる立場(位置)にあるものが、それぞれの固有の条件、困難を理解しつつ、目標、課題、願いといった共有できる基盤を広げていく努力が求められているという点である。

 文部科学省でも、生涯学習課が「地域子ども教室推進事業」として、「学校の校庭や教室等に安全・安心して活動できる子どもの居場所(活動拠点)を設け,地域の大人の協力を得て,小・中学生を対象とした,放課後や週末における様々な体験活動や地域住民との交流活動等を実施する」など、「子どもを核とした地域の様々な活動の機会と場の拡大」を掲げた「新子どもプラン」(2005年度新規事業)を実施するなど取り組みを強めている。

 子どもと教育をめぐる地域での活動を、子どもの参加、父母・住民の自主的・自発的活動として広げていくには、このような官製の取り組みを、「官」としての学校中心、父母・住民動員型の活動にしてしまうことなく、子どもの権利の視点を生かしながら、文字通り子どもと大人、教職員と父母・住民の協同の取り組みとしていくことが基本である。そのためには、できるだけ身近なところに、構えず、気軽に語り合う場をつくっていくこと、ささやかでも継続的に取り組みが進む工夫をしていくこと、小グループ相互の交流・情報交換の機会をつくっていくことなどが求められる。


引き続き議論を深め

 本分散会での議論は、集会二日目の第7分科会(子どもの発達と地域)の内容と密接なつながりを持っており、そこでの引き続く議論に期待して分散会を閉じた。(本年度隔月で開いている教育センター全体の企画、教育基本法学習会や地域教育懇談会の取り組みも、同じ流れの中に位置づけて取り組まれているものであることもあわせて確認した。)


 
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