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■「心のノート」の扱われ方■
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集められた「一万人アンケート」

           京都市  「心のノート」考える会


「二万人分が集まった」というけれど

 河合隼雄氏を名誉座長にして発足した道徳教育振興市民会議は、昨年七月十五日締め切りの 「一万人アンケー ト」を実施。九月十七日に行われた第八回市民会議で市教委生田指導部担当部長は 「二万人アンケートになった。 市民の関心、危機感の表れだ」と自賛しました。しかし、会議の中で「子どもの分で、学校で行ったものと、自主 的に提出されたものの内訳がわかるか」との質問に市教 委の係員は「子どものものは九九%が学校でやったもの。 大人のものも八割〜九割が各種団体でやってもらったも のだ」と回答。学校でも職員会議で提案されることはな く、担任に個別に依頼され他の教職員には知らされず児童・生徒に配られ実施したケースが目立つことから見て も、二万人分が「集まった」のではなく、無理に「集め た」のだという実態が浮き彫りになつています。にもか かわらず、十月発行の「人づくり21世紀委員会(代表= 河合隼雄)ニュース15」には「応募総数は二二、三二七通に達し、予想を上回る大きな反響があり、保護者・市民の皆様の道徳教育に対する関心の高さに驚かされました」と、事実と異なる意図的な記述がされています。

抗議と中止の申し入れ

 アンケートの内容は偏った価値観の押し付けと基本的人権の侵害につながる内容首含んでおり、アンケート結果の使われ方とともに重大な問題を持つものです。京都教職員組合は、市民会議座長の小寺正一氏(京都教育大学)宛に「抗議と中止の申し入れ」を行いました。「市民会議」は一月に十回目を行い、二月二十二日に予定され ている「道徳教育フォーラム」 (午後・永松教育センタ ー)ではアンケートに基づく「提言」が示され、河合隼雄氏・柴原弘志氏(元京都市教委指導主事・現文科省調査官)を含むパネルディスカッションが行われます。

『水からの伝言』を使った道徳教育

 八月七日に永松センターで初任者研修も兼ねて行われた「第七回京都市道徳教育研究大会」の午後の分科会で は「心に響く道徳の授業」のテーマで実践報告が行われ ました。学級の児童の言葉遣いの悪さに対して「言葉の たいせつさ」を主題にして行った授業実践で、「ねらい」 として 「言葉の持つエネルギーを知り…」とあります。 「資料について」で授業に使った『水からの伝言「世界初 の氷結晶写真集」 (江本勝・波動教育者)』について「本資料は水を凍らせて作った結晶の写真集である。プラスの言葉からはきれいな結晶ができ、マイナスの言葉から は結晶はできない。例えば『ありがとう』という言葉の上に一晩置いた水を凍らせて作った結晶はきれいな六角形を表し、『ばかやろう』という言葉の上に一晩置いた水 を凍らせて作った結晶はきれいな結晶ができないのである」と説明されています。さすがに報告後の協議では資料の非科学性についての指摘が相次ぎました。授業では 使われませんでしたが、この写真集では、熊本県のある 神社の水の結晶は、その神社のお札の形になったとか、 「天照大神」という名前を見せた水はきれいな結晶になったとかいうページも入っています。この写真集は、京都府下のスクールカウンセラーの一部も研修で使っていた り、他府県にも道徳の時間に使った実践例があることが わかっています。「道徳教育」をことさら強調する動きの危険性が次第に明らかになっています。
 「心のノート」使用の押し付けが強まっているとの報告 は二学期末段階ではありませんが、文科省は「使用状況調査」を予告しており、今後強まってくる可能性は十分 に予想されます。笑顔の「仮面」、優しさの「仮面」をつ けて現れる「道徳」の、本質を見極める目と市民的な運動が求められています。
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