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127号
【子ども・教育・文化の共同・京都ネットワークのページ】

子どもと教育・学校に新たな困難を強いる
教育改悪三法案、強行成立


子ども共同ネット事務局





 5月29日に衆議院で審議入りした教育改悪三法案(学校教育法・社会教育法・地方教育行政の組織及び運営に関する法律の各「一部改正」案)は、6月14日に衆議院で、また、6月29日には与党三党(自民・公明・保守)と民主党・社民党(一部)の賛成、日本共産党・自由党・無所属の会(一部)・社民党(一部)の反対により参議院で、それぞれ強行可決され成立しました。
 すでに昨年度末に成立をした三法案をふくむこれら「教育改革」関連六法案についての問題点については、本誌前号(126号)で、室井修氏が、鋭く指摘・批判されているところです。
 今回の「法改正」には、短期間の国会審議を通じても、重大な問題点のあることが明らかになっています。
 第一は、「法改正」にかかわる国民的論議も国会での審議もつくされておらず、国会審議は、衆議院でわずか8日間、参議院では7日間の実質審議で採決を強行したものです。
 第二は、「改正」の内容が教育改革の名に値しないばかりか、かえって今日の教育の困難をいっそう深刻にすることです。ところが、民主党は、法案の一部修正((1)「ボランティア活動など」を社会奉仕体験活動の前に挿入する、(2)「飛び入学」できる学校を大学院を設置する大学に限るなど)を与党が受け入れたことを評価しそれまでの反対から賛成へと態度を変えました。しかし、それは法案の問題点に対する歯止めとなるものではまったくなく、国会審議を通じて、法案のもつ問題点と矛盾はいっそう明らかになりました。

● 社会奉仕活動という本来強制にはなじまないものを法制化することによって義務づけ、さらに民主党修正案によって、「ボランティア活動」と「奉仕活動」は性格が違う(遠山文科省大臣)にもかかわらず、それらを同列視し、法制化されたことです。
● 大学への飛び入学や高校通学区を撤廃で、受験競争をいっそう激化させるもので、今日の激しい受験競争が子どもと教育に及ぼしている実態のなんらの検証もないまま、「ある程度の競争は必要」(遠山文科省大臣)として強行されました。
● 「指導力不足」の定義や基準すら明確にできず、教員の免職・転職の法制化は、教職員を萎縮させ、自主性や創造性を押しつぶすことになり、その恣意的運用への危惧とともにいっそうの管理強化をすすめます。
●問題を起こす子どもを出席停止にするもので、子どもの弁明や意見表明の機会も保障されておらず管理主義教育を助長するとともに、子どもの学習権保障の理念を空洞化させ、ゆきとどいた教育を保障すべき教育行政の責任を棚上げするものです。

 強行成立したこの悪法の具体化を許さない国民的運動がいよいよ求められます。子どもたちを人間として大切にする学校と教育の実現にむけた共同を、地域からおおいに発展させましょう。
 なお、「学校教育法」「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正に関する「附帯決議」を紹介しておきます。これだけ「特段の配慮」事項が多いことも、法改正の問題点を裏付けています。

《資料》

学校教育法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をするべきである。
一 学校教育におけるボランティア等の体験活動の実施に当たっては、教育的な意義と見地を踏まえ、知的な探求や社会参加、職業意識の醸成などに資するように配慮するとともに、児童生徒の発達段階や、活動内容に応じて、児童生徒・保護者等の意向にも十分に配慮しながら行うこと。また、体験活動の重要性を踏まえ、実施に必要な諸条件の整備、支援措置を講じること。
二 出席停止制度の運用に当たっては、これが児童生徒の教育を受ける権利の制限となることにかんがみ、可能な限り短い期間とするとともに、本人や保護者に対して十分な説明を行うように努め、多様な意見を反映した慎重な手続きを踏むこと。また、出席停止に係る児童生徒の弁明の聴取等、教育上の措置として本人の人権に十分配慮して行うこと。
三 出席停止期間中の児童生徒に対する教育的な支援措置が十分に行えるよう条件整備に努めること。
 また、その出席停止措置を受けた児童生徒の周辺環境の問題等の究明に努め、家庭、学校、地域等の連携のもとに、その問題等の解決に向けての必要な条件整備・支援措置を講ずること。
四 大学への「飛び入学」の拡大をもたらす本制度の実施に関しては、その趣旨を周知・徹底するとともに、高等学校と大学間の連携を一層推進すること。
 その実施に向けての全国的な協議の場を設置し、必要な指針等の策定を検討すること。
 また、本制度の実施状況に関する実証的な調査研究を継続して行い、時宣に応じてその調査研究の成果を公表すること。
五 高等学校と大学等の連携については、今後もその在り方についての検討を進めるとともに、高等学校教育の改革、高等学校と大学等の接続の改善に向けて、関係者による協議や調査研究のための条件整備に努めること。
六 今国会で成立した「行政機関が行う施策の評価に関する法律」が、政策評価の客観的かつ厳格な実施を推進し、その結果の政策への適切な反映を図ること等を趣旨としていることにかんがみ、今後の文部科学行政施策の推進に当たっては、可能な限り事前・事後評価を行うとともに、その結果を公表して国民への説明責任が果たせるように努めること。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一 教育の地方分権の精神及び教育委員会制度の理念に基づき、各教育委員会が自主性、主体性を確立し、教育委員会制度に期待されている役割と機能を正しく発揮できるよう、諸条件の整備に努めること。
二 指導が不適切な教員を免職し、引き続いて都道府県の教員以外の職に採用する措置に当たっては、校長や教育委員会による恣意的な運用が行われないように、要件、手続等に関し、都道府県教育員会に対して適切な指導、助言を行うこと。
三 教員の資質の向上を図るため、教員の養成、採用、研修の連携を一層深めるとともに、長期休業制度の設立に努めること。
四 メンタルヘルスケアの充実を含め教職員の勤務条件の一層の改善等に努めること。
五 公立高等学校の通学区域に係る規定の削除に関し、高等学校教育を適正に進めるため、受験競争の激化、学校間格差の拡大等を招かないよう、適切な措置を採ること。また、通学区域の設定に当たっては、地域社会と結び付いた高等学校教育が展開できるよう、住民の意向の反映に努めること。
六 今国会において成立した「行政機関が行う政策の評価に関する法律」が、政策評価の客観的かつ厳格な実施を推進し、その結果の政策への適切な反映を図ること等を趣旨としていることにかんがみ、今後の文部科学行政施策の推進に当たっては、可能な限り事前・事後評価を行うとともに、その結果を公表して国民への説明責任が果たせるように努めること。

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