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Y.自己形成(自己肯定感)の特徴 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(1)調査項目から見られる特徴
(質問番号8)「あなたには、何か友だちにじまんできるようなことがありますか?」の結果は、次の通りである。
全体の6割〜7割の子どもが「自慢できるこ
とはない」と答えており、自分に自信が 持てていないことが伺われる。この点は、学年に
よる差はあまり見られない。子ども が「自尊感情」を十分にはもてていないことの表れではないか。これはまた、「強い者」 や「同調圧力(ピア・プレッシャー)に弱い」という傾向につながっているのではない かと考えられる。
また、小学校・中学校を男女別に比較してみた場合、その結果は、ほとんど差がないことが示されている。
![]() (質問番号9)「あなたは「ぼく(わたし)はえらいなあ。がんばってるなあ。」と思うことがありますか。」の結果は、次の通りである。
全体の6割〜7割の子どもが「がんばれていない」と答えており、自分に自信が持てていないことが伺われる。この点は、前記(質問8)の調査結果と同じ様な傾向を示している。しかし、同時に1/3近くの子どもが「ある」と答えているのは、(学校等の)取り組みいかんでは、子どもたちに「ぼく(わたし)はえらいなあ。がんばってるなあ。」という思いを持たせることも可能ではないかと思う。
また、小学校・中学校を男女別に比較してみた場合、その結果は、ほとんど差がないことが示されている。わずかに女子の率が高いことがわかる。
また、この2つの質問についての、自由記述部分の内容は以下の通りである。(小中の調査を合わせたもの)
(2) クロス集計から見える特徴的な事柄
「自慢できることがありますか」と「がんばっている」との関係(質問番号8と9の関連について)の結果は、次の通りである。
子どもたち自身の気持ちとしては、「自慢できることがある」ことは、必ずしも直接的に「自己肯定感」に結びつくとは限らないが、しかし、「自慢できることはない」という子どもたちより、相対的に自己肯定感が高いと言える。「自慢できるもの」が、「自己肯定感」に結びつくためには、「他者の承認」が媒介として必要なわけであるが、そのことが以前よりも難しい時代に入っているのではないかと考えられる。
しかし、(質問番号9と8の関連について見れば)逆に「自分はがんばっている」と認識している子どもたちの中では、「自慢できるものがある」と回答している子どもは75%に達している。「自分の自慢できるもの」が、他者の承認と結びついたとき、「自分はがんばている」と認識できるのではないかと思われる。
同時に、ここで考えなければならないのは、「がんばらないと、『自己肯定感』が持てないのか、持ってはいけないのか。」という問題である。「自慢できるものがないから、がんばっていると思えない。」「がんばってもいないし、自慢できるものもない。」という意識の中で、多くの子どもたちが自己肯定感を持てないでいることこそ問題ではないか。「がんばらなくても、自慢できるものがなくても」自己肯定感を持てるような関係が重要なのである。
そこに至るには、何が重要になってくるのか?その点で示唆にとむのは、質問番号3と9との関係である。質問番号3の「動物の世話」「手伝い」「植物の世話」「外遊び」の中で、特に、「手伝い」(労働)を経験している子どもほど、「自分はがんばっている」と認識している子どもが多いという点である。しかも、「動植物への世話」「手伝い」が重複している子どもほど、その傾向が強いことが伺われる。
子どもたちの社会的な関係から「自己肯定感」をはぐくむことは、もちろん重要であるが、しかしそれは時として「関係性」の中で、不安定なものになりやすい。むしろ、「生活や労働に根ざした」能力の自覚が、自己肯定感に結びついていくのではないかと考えられる。
![]() 参考資料 1:上武正二編『児童心理学事典』協同出版 1974.
2:日本子どもを守る会編『子ども白書』草土文化社.1998.
3:東洋・繁多進・田島信元編『発達心理学ハンドブック』福村出版.1992.
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