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  ●京都教育センター通信 
復刊第137号
 (2020.6.10発行) 
 

   オンライン授業は無理すじ

     中妻雅彦(花園大学社会福祉学部)

コロナウイルス禍によって学校が休校となり、子ども・保護者・市民からは、「学習の遅れ」「受験が心配」「生活に締まりがない」などの声がある。文科省や教委からも、「学習の遅れ」「授業時数不足」などが言われている。その解決策として浮上してきているのが、オンライン授業や9月入学である。9月入学には、5月11日に日本教育学会が声明を出し(http://www.jera.jp/20200511-1/)、「コロナウイルス禍で生じている問題」の解決策として性急に実施するということについてです。仮に学年の始期をいま直ちに9月に変更するとすれば、学校や子どもたちにも、家庭や社会にも甚大な影響が及ぶとし、拙速な導入をしないように呼びかけた。

一方、オンライン授業は、なんとなく歓迎の雰囲気もあるし、休校措置への代替えとしてやらざるを得ないということもあり、多くの地域で開始され、広がってもいる。私の勤務校でも、前期はオンライン授業となることが決まっているし、後期もどうなるのかというところだ。「朝の会」「帰りの会」は、制服を着て参加という地域学校もある。このオンライン授業は、コロナウイルス禍で生じた問題ではない。2020年度予算では、「1人1台端末環境の整備」に加えて、来年度から始まる新学習指導要領を着実に実施していくとともに、現在行われている中央教育審議会における議論も踏まえ、教育課程や教員免許、教職員配置の一体的な制度の見直しや、研修等を通じた教員の ICT活用指導力の向上、情報モラル教育をはじめとする情報教育の充実など、ハード・ソフトの両面からの教育改革に取り組む(文科大臣、2019年1219日)というGIGAスクール構想政策の実施である。Society5.0 時代に生きる子どもへの教育方法として、一人一台のPCは必須だが、いくら日常の授業で教育力のある先生でも、それを活用することができないでしょうという教師への不信感を背景とした教育産業への支援政策であり、コロナウイルス禍を利用して急速に進行させている。

しかし、報道もされているように、子どもだけではオンラインで指示された学習を続けることができていないし、指示された学習課題をやりきるために保護者も子どももストレスを感じている。オンライン授業は、子どもと学習に関わる問題は何ら解決できないことがわかる。さらに、資料の提示も、ワークシートも、学習の進め方も画一化されるので、ますます酷くなることも予想される。また、教委などが教員の授業を配信することも行われているが、これは、オンライン授業によって教員に画一化した学習方法を強要し、それを検証するテストという結果論で縛るという旧来の学習方法と何ら変わらない状況である。

直接、顔を合わせることのできないという緊急時だから、画面でも目を見てつながり、話をし、様子を聞き、つながりを持つというメリットもある。しかし、学習を進める道具としてオンライン授業を活用するにはかなり無理がある。 

 

コロナ過の中「今伝えたいメッセージ」より

元気です!                   得丸 浩一 (京都市小学校) 

 
   

「学校あずかり」で教室に来ている 3年生に,今考えていることを書いてもらいました(私は6年生の担任ですが…) 。

ひまな生活  男子 

もうすぐゴールデンウィークだけど

コロナウィルスのせいで

そとであそべないのがいやや

ドッジボールやゆうぐであそびたい

もっと楽しくあそびたい  女子 

妹といっしょにあそんでるけど

つまらない

外でもあそんでいるけど

楽しくない

はやくコロナウィルスおわってほしい

楽しいこといっぱいしたい

おもしろいこといっぱいしたい

友だちとあそびたい  男子 

家で朝は宿題をやって

夜はゲームと

ほとんどおりがみ

運動場であそびたい

いっぱいあそびたい  女子 

家でトランプとかゲームをやって
いっさいおもしろくないし
海とかつりとか

友だちとあそびたくなる

早くコロナがおわってほしい

けんどうが早くしたい

学校がはじまったら

つりと海にいきたくなる

プールもやりたい

バーベキューもしたい

音楽がすきなので

いろんなきょくがひきたい

コロナ  男子 

レゴをしているけど
新がたコロナウィルスのせいで外に出られなくて   

ざんねん

早くくすりができるといいと思う

図工をはやくしたい

りかをやりたい

みんなであそびたい

はやくいろんなことをおぼえたい

友だちといっぱいあそびたい  女子 

わたしは外であそぶのがすきだけど

玄関でぐらいしか遊べません

コロナであそべなくなって

ざんねんだなと思っています
もし学校であそべるなら

タイヤとびばこ

ジャングルジム

一りん車

てつぼうがしたいです
とくにしたいのが一りん車です

できるようになってきたから

やりたいこと言います  男子 

つまんないから

お母さんが買ってきた魚(ツバス)をさばいてる

つまらないから

CDをきいたり歌ったりしている

学校始まったら

きゅう食を食べたい

運動場であそびたい

子どもたちは清く、正しく、元気です。彼らにおもいきり楽しい日々を(教室の勉強も含めて)用意して、再開を待ち構えています。

京都教育センターでは、フェースブックで、メッセージを発信しています。ぜひご覧ください。あなたのメッセージをお待ちしてます。

 

コロナ過の中「今伝えたいメッセージ」より

どんな学校生活を取り戻すのか?        高垣忠一郎  (京都教育センター代表)

 
 

安倍首相は、昨日の会見で「コロナの時代の新たな日常を一日も早く作り上げなければならない」と述べ、自らが突然要請した学校の休校措置についても「段階的であっても、子どもたちの学校生活を取り戻していく」と表明しました。安倍首相は「美しい日本を取り戻す」とか「ニッポンを取り戻す」などと、これまでにも、好んで「取り戻す」という言葉を使っています。ボクが何よりも気になるのは、「どんな学校生活を取り戻していくのか」という中身の問題です。

直接、学校に関わる子どもたちや親、教師は混乱のなかにあることでしょう。だから、とりあえずコロナ騒ぎ以前の日常を早く取り戻したいと思っておられることでしょう。でも、コロナ以前の学校に、そのまま戻すことが本当によいことなのか?それでは、せっかくのコロナ禍の経験が無駄になるのではないでしょうか?そのことも是非考慮していただきたいと思います。

ボクは苦悩する人たちとカウンセリングという関係をとおして向き合ってきました。たとえば、そのなかで、うつ病の患者さんのカウンセリングも経験しています。うつ病の患者さんのなかには、うつ病から治ることを「元気でバリバリ活躍していた元の自分」に戻ることだと思っておられる方がほとんどでした。

その方たちは、元気にバリバリ頑張る自分には価値を置き、それを失った自分には価値がないという思いが強く、鬱になった自分を受け容れ、肯定することができないのです。だから、早く元に戻らないといけないと焦り、余計にしんどくなられる方が少なくありません。

元気に頑張る自分の陰で押し殺されてきた自分、弱音を吐く自分、弱い自分をも受け容れ、もっと遊びやゆとりをもったより大きな自分に戻っていくこと、それが本当にうつ病から治ることなんだと ボクは言ってきました。

そういうことを経験してきたボクは思います。学校生活を取り戻しても、それが元の競争・競争のテスト漬け、勉強漬けの過重な授業に戻るばかりか、休校中の勉強の遅れを取り戻すために焦って、より頑張り、より過重な勉強生活に子どもを追い込むようなことには絶対にならないように、切に願います。

折角の大小のちがいはありながらも、誰もが死の「恐怖」や「不安」にさらされたことをも機会に、生死の問題、生命倫理の問題、自分とは誰か、生きるとはどういうことか、人間がその一部である自然・地球環境の破壊の問題、各種感染症の問題、核の問題などに、広げ、深めて、考える機会を提供することも、コロナ禍を経験した学校の大事な役割ではないかと思います。

いま人類は色んな問題を抱えています。そういう問題を「自分事」として受けとめ、その解決策を考えていくことが出来るような人間、色んな人と協力し、対等平等の立場で対話し、論議することができる人間を育てることこそ大事であって、ごく狭い企業の勝ち残りのために有能に働いたり、過労死したりすることも辞さずに奮闘することができるような人材を育てることが大切なのではありません。

頭だけを使うお勉強ならば、それぞれの子どもがオンラインのネットの端末につながり、それを通して、それぞれに教材や課題を与えられて、1人ひとりが個別にお勉強するような方法でも、良いかもしれません。だが、教育は本来、人間を育てる営みであり、その人間は肉体も含めた人格丸ごとの存在です。とりわけ、幼児教育や、義務教育の段階では、生身の人間との触れ合いが大切であることは言うまでもありません。

その人間は人間同士の密接な関りあいのなかでしか育ちません。子どもたちのなかには、コロナ 禍の密閉、密集、密接を避ける自粛のなかで、たとえ、スマホやパソコンなどを通じてやり取りすることはできても、オンラインのつながりだけではカバーしきれない生身の人間同士の密接な関りあいの大切さに気が付いた子どもたちも少なくないのではないでしょうか?

   
 

憲法改悪を許さず

子ども・教職員が人間らしく生きていける学校と教育を

―2020年度の京都教育センターの活動方向―

1.(1)基本方向

・憲法改悪を許さず、憲法と子どもの権利条約を学校・教育・社会にいかす取り組みを推進する。
・新自由主義と安倍の教育政策に抗して、子ども・教職員が人間らしく生きていける学校と教育はどうあるべきか探究する。

(2)活動の重点

・子どもの現状を把握し、子ども一人ひとりを主体として尊重し子どもの人格形成上の課題を探求する。
・新学習指導要領のねらいと問題点を学習し、自由で創造的な教育実践を普及する。
・高校教育のあり方について探究する。―「学びの基礎診断」・大学入試制度も含めて
・大学制度改革の問題点を明らかにし、大学のあり方、学問の自由を探究する。
・学校・教職員とはどうあるべきか、教職員の働き方も含めて課題を探る。
・地域における学校・教育のあり方を父母・教職員・住民とともに考え、課題を探る。                   ―学校統廃合・小中一貫校などの問題―
・原発再稼働・核兵器の危険性と教育のありようを検証し、平和教育を広める。

2.センター体制

・顧問:野中一也・代表:高垣忠一郎・研究委員長:高橋明裕・事務局長:本田久美子・事務局 下田正義
・運営委員(上記含めて16人)植田健男、川地亜弥子、倉本頼一、西條昭男、築山崇、富山仁貴、中西潔、
 原田久、深澤司、山岡雅博、松岡寛、得丸浩一、西田陽子

・「ひろば」編集委員:西條(編集長)、倉本、戸谷、本田、下田  
HP管理 下田
◎ 各研究会事務局 地方(我妻) 生指(横内) 学力(市川) 発達(浅井) 地域(姫野)
   高校(原田) カウンセリング(原木) 国語(西條) 障害児(木下) 

3.とりくみ

 ・第51回教育センター教育研究集会 京都教研と全体集会は合同開催 分科会は独自に

 20201219日(土)、20日(日)教文センター


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